「光る君へ」13話感想

さて昨日放送された第13回は、兼家が摂政についてから4年後と時が飛びました。
道長・倫子夫妻にも姫(のち一条天皇妃、彰子)が生まれました。

麗しき定子さま


道長の兄・道隆の長女、定子が本役・高畑充希さんに!
「兄上の恋文を見つけてしまいました」とクスッと微笑む様が解釈一致!!
この定子こそ、筆者の平安時代随一の推しです!!
その定子が、3歳年下の一条天皇に入内しました(定子13歳、一条天皇10歳)。

美しく賢く、茶目っ気があって優しい…。
すごいのは、これが自称でも男性目線でもなく、同じ女性である清少納言が褒めちぎっていること。本物です。公式。
あなたは何を持ち得ないんですか?(なお史実)。

ドキドキしている一条天皇を和ませるべく、扇から変顔をしておどけたり、「主上の好きなもの、私も好きになります」と寄り添ったり。

一条天皇が、好きなものとして「母上、椿餅、松虫…」と挙げるものの、定子は「私、虫だけはどうしても苦手なのです」と微笑む。
私の目に映るのは女神でしょうか?花の妖精?

定子の歩み寄りによって一気に打ち解けた二人。
女官とかくれんぼをするときも、定子の着物の内側に隠れます。
平安好き筆者は、一条天皇は定子の着物に焚かれた香の香りを感じてより好きになってしまうだろうなと妄想しました(妄言)。

手習いの時間ですよと言われ、「いやだ、まだ遊びたい」とごねる一条天皇。現代の感覚でいえばまだ小学生。そりゃそうなります。
それを見た定子は、「手習が終わったらまた遊びましょう。今は手習をなされませ」と送り出します。
できた人ですね。きちんと帝としてしなければいけないことに対しては一線引いている。

平安オタクが考える「定子さまのここが好き!」を150%の完成度でお出しされて、定子推しの筆者は……寿命が伸びる心地がしました。

兼家どの!


兼家の様子がおかしい。虚な眼差しで、会議でも会話が成立しない。

道隆、道兼らは父を心配しつつも、
「後継はどうするのか」という腹黒い思惑を隠しきれない。
儒教の教えは、孝の心はどうなってるんだ!と言いたいところですが、まだまだその辺りの道徳心は薄いようですね。

まぁでも…後継を決めて引き継ぎをしっかりするのはとても大事なことです(頼朝→頼家の惨劇を見守ってきた鎌倉殿オタクより)

そして筆者の推し2、藤原公任も切ない。最初は自分の才や容姿に対する絶対の自信に満ち溢れていた。それが、今は父頼忠の「道兼につけ」という遺言のせいで曇ってしまっているような気がします。
お立場は、人を変えますね。

笑わない女・明子

道長の二人目の妻、明子はとても美しいですが、一切笑いません。子供ができたと告げても。
しかしそんな彼女が一度だけ笑いました。

兼家が持つ扇を手に入れた時です。
おそらく、「共鳴り」方式(前記事参照)で兼家を呪うべく、色々試してきたのでしょう。

ついに愛用の品を手に入れた。体の一部ではありませんが、普段持っているものなら確かに指紋や手の汗がついていそうですよね。

これで父の敵(政治的に)を呪える、息の根を止められるという凄絶な微笑みが恐ろしい。この明子を「褒姒のようだ」と書いている方がいて、確かにその通りだと思いました。

褒姒とは、周という古代中国に存在した国の王に愛された傾国の美女です。
蛇の泡から生まれたとも言われ、その出自はミステリアス。
だから、なのでしょうか。褒姒はとても美しかったのですが、一切笑いませんでした。

あるとき、王が間違えて狼煙を上げました。
それを見た兵士たちは、慌てて王の元に駆け付けます。しかし、それは空回りになってしまうわけです。

その様を見た褒姒は、初めて笑顔を見せます。
褒姒の笑顔に魅了された王は、その後何度も狼煙を上げます。しかし何事も起こらない。それを繰り返した挙句、本当に危険が迫った時に狼煙を上げても誰も駆け付けなかった、という話。

話を明子に戻しましょう。
兼家は、明子がかつての政敵であり、自分が追い落とした源高明の娘だとは気付いていないのでしょう。
「お父上はどうなされた?」と聞きます。
視聴者全員が、「あなたが追い落としたんですが?!」と思ったことでしょう。

しかし明子は眉ひとつ動かさず、
「父は太宰府から帰った後、身罷りました」
と穏やかに言いました。
兼家はそれに対して「それは気の毒に」と同情します。

不穏だ…不穏すぎる!しかしそれがまた良い。
合戦シーンがなくてもゾクゾクして目が離せない時代劇を作ることはできるのです!

あの…道兼がまひろに母のことを聞いた時といい、この親子は何なんですかね…。

まひろと倫子

父が無官になったことで食べるのにも困るようになったまひろたち。その困窮ぶりを聞いた倫子は、自分たちが雇うと提案してくれ、まひろも心から感謝するものの…まあ、無理ですよね。心情的に。
「他に雇い先が決まってしまって」と丁重に辞退します。
優しい倫子は、「働くのは無理でも、たまに顔を見せに来てね」と声をかけてくれます。
うぅ…この人には幸せになってほしい。

そんなまひろに、倫子は2枚の紙を見せます。
そこには漢詩が記されていました。そう、道長が送ってきた和歌に対してまひろが返したものです。

おい道長…どうして正妻の居るお家にそれを持ってくるんだい。まひろは道長からの和歌を燃やしてしまったというのに。

「漢詩だから殿御かと思ったのですが…女の字ですよね」と不安になる倫子。鋭い。視聴者はヒヤヒヤしましたよ。修羅場は先送りでした。
しかし倫子は、別の人ではないかと疑っています。道長の二人めの妻、明子女王です。親王の血を引く彼女なら、漢詩を解するだろうと。

「私は殿(道長)から文をもらったことがない。いきなり庚申待の夜に訪ねてきたの」と不安に駆られる倫子。

これを聞いたまひろの表情が絶妙ですね。
倫子が知らない過去の道長をまひろは知っているし、道長からの文ももらっている。
彼女は密かに勝利していた。悟られまいとしながらも、喜びを完全には隠せないまひろ。
人間の心の複雑さというか、割り切れなさを見事に表現したシーンでしたね。

そして筆者が思ったことその2。
倫子さまが、紫の上ルート!!
誰よりも愛され、正妻として認められているはずなのに、結婚に至る過程にヒビがあってのちのち響いてくる…。

もし倫子のこの立場が紫の上のモデルだとしたら、
いつかこの漢詩の書き手がまひろだと分かってしまう日が来るのではないかと筆者は戦々恐々としています。こわい。

しかしおおらかな倫子は、「殿御からということにしましょう」と言ってこの話をやめにします。
帰ろうとするまひろ。
そしてよりによってこの場所で、このタイミングで、道長と再会します。

どうなるんですか?!
来週は兼家が退場しそうですね。あくどいけれど、憎みきれない良いキャラでした。
兼家亡き後も、きっと面白いこと間違いなしでしょう。
期待しております!


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