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したがいますか

「年齢確認ボタンを押してください」

コンビニやスーパーでアルコール類を買おうとすると、レジの人が年齢確認します。

このシステムが始まった当初は「自分って大人に見えないか?」とか「若く見られるのかな?」とか一喜一憂、心の中で「どう見えてんの?」とツッコミを入れることもありました。

今となっては、いちいち押さなければならない面倒な動作です。

店側もマニュアル通りにやっているだけで、相手が本当に未成年の疑いあれば生年月日を訊くことになっています。

怠ると大変なことに、というか、怠らなかったのに大変なことになった事例もあります。

アルコールを買おうとしたグループの代表に年齢確認したところ、成人だったので販売。

その後、グループのメンバーが急性アルコール中毒になったことから、代表以外が未成だったことが発覚。責任を問われたのは店側で、結果不起訴になったものの、警察から厳しく詰められたそうです。

店側はマニュアル通りにやっていたのに責任を問われるって、防ぎようないですよね。

テレビの世界でも、情報の「裏取り」って必須でして、徹底的にやるように躾けられています。たとえば、実店舗にいたお客さんが「ここの商品、オススメですよ」とコメントした際、そのお客さんが「店の関係者」だったら放送できません。なので、「店とは無関係」という「裏取り」が必要です。

テレビでよく「行列」のシーンを見るかと思います。アレも実は裏取りが必要です。

並んでいる人が店側の仕込んだ「サクラ」だったらアウトです。なので、行列を撮って使おうとしたら、並んでいる人、ひとりひとりに「あなたサクラじゃないですよね?」って確認しなければならないのです。

相当面倒くさいです。なので、番組を作る側としては「行列」って、人気度合いを表現するアイコンとしてわかりやすいのですが、裏取りの面倒を考えると、使うのやめよう、って判断になるのです。

ただ、この「行列」問題への意識も、現場の担当者によりけりでして、報道系の番組ではコンプライアンスがうるさく、バラエティでは意識が緩かったり… マニュアルはあるけど、現場判断ってことが多かったりします。

サービスの現場で、運営側にとっても、お客にとってもマニュアルがあるって、大事だと思いますが、先日「おいおい」な出来事がありました。

とあるユニクロの店舗で下着を三枚手にしたまま、試着室脇にあるベルトコーナーでベルトを見ていました。すると近寄って来た若い店員さんが「ご試着は三枚でよろしかったでしょうか?」と訊ねてきたのです。

「ご試着は三枚でよろしかったでしょうか?」

何気ない一言。本人は、きっといつも通り、マニュアル通りに声掛けしたんだと思います。

しかし、このフレーズには思考停止にさせる要素が潜んでいます。

まずは「よろしかったでしょうか?」

これはビジネスシーンでも指摘される「あるある」フレーズです。

「よろしかった」って、過去形です。過去形で問われると、「え?いつだったっけ?」と考えてしまいます😅

正確には「よろしいでしょうか?」 また「よろしいですか」でもいいのですが、相手によっては圧を感じるケースもあるので、「よろしいでしょうか」が平和です。

「ご試着は三枚でよろしかったでしょうか?」

一瞬、思考停止して、ふつふつと疑問が湧いてきました。

「下着、試着する人、いるの?」
「ユニクロでは、下着の試着OKなの?」
「三枚とも同じ色同じサイズなんだけど」

もちろん、これらの疑問を口にせず、「あ、大丈夫です」と、めったにしない愛想笑いを返しました。

若い店員さんの背中を見つめながら、思いました。

「マニュアル通りに生きるってさぁ…」


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