見出し画像

浮いてるおばあちゃんに“やすらぎの郷”はあるのか?

 いろんなところで、浮いていました。

 まず職場。プロパーと中途、という分け方をされれば、笑っちゃうくらい転職してきた私にプロパーという立場はあり得ません。同期(入社)というネットワークがない訳です。同期というのは仕事の進め方にも影なり日向なり左右するものなのですね。特に大企業では同期がミドル以上の役職についている場合など”こんな件があって後ほどウチの上司から正式に依頼がきますんでよろしく”みたいな動き方をしてくれて(いわゆる根回し?)プロパーの部下に助けてもらったこともありました。

 そしてママ友。息子が2歳8ヵ月の時、どっぷりの専業主婦からフルタイムで社会復帰しました。それまでは公園に行くのが日課でしたが、同じ公園に行くのに飽きてしまうので公園ジプシーとなり、決まった時間に決まった場所で何となく集まってできるママ友ネットワークには入りませんでした。公立小学校のPTAでも、職場からスーツ姿で直行し議事録取るのにノートPC広げたら刺さるような視線を感じた事もありました。振り返れば、その頃私は余裕なくて肩ひじ張ってるシングルマザーオーラ全開で感じ悪かっただろう、と赤面します。そんな調子なので思いついた時、駅前の居酒屋で落ち合ってちょっと一杯、とかできるご近所友だちが、皆無ではないけど少ないです。

 大型連休に入る前の4月3週目に、クライアントさんにご理解いただいてフランス観光に行ってきました。安心のジャルパック、チェックインの羽田から荷物受取の羽田まで、日本人添乗員さんがお世話してくれる団体ツアー。平日1週間日本を離れることができる人たちなので、旦那様が60歳定年したばかり、とか、70歳前後でゆったり自営業の方、とか、世代や働き方が似ている団体でした。

 似ている、と私は思っていたのですが、やっぱり浮いてたみたいです。ツアー中は昼食・夕食を団体さん同じテーブルで摂りました。参加された旦那衆もお好きなようで、毎回アルコールをご注文する、という、酒呑みの私には居心地よか~。それは永年会社勤めで見てきた光景でした。企業戦士のおじさま達がビール(ワインの国に行っても一杯目はやっぱりビールなのね)で饒舌になるのを合いの手挿みながらご機嫌になっていただく。

 帰国して相方から指摘されました。「ツアーの奥様方の、言葉少なながら、わきまえた気配り、なかなかだったね」そうだったのか。。。様々なバックグラウンドをお持ちの元・企業戦士たちのほろ酔いの戯言を聞くのは、セカンドキャリアの実例としてキャリアコンサルタントとしても興味深く、申し訳ないけど奥様方の動き方は視界になかったです。私は会社員時代に慣れ親しんだ心地よさから、勝手に旦那衆の会話を「こっち側」と決めてひょっこり参加していた、という図式だったみたいです。

 ツアー中の食事風景から、旦那衆をCG加工で消したら、それって私が高齢者施設に入っている光景なのか?と、想像が一気に25年後に飛びました。あの奥様方と、施設で世間話をし、散歩をし、余生の大方の時間を一緒に過ごすんだろうなぁ、と。

 「やすらぎの郷」という連続ドラマが話題になっています。倉本聰さん描く高齢者施設の日々を大御所俳優さんが虚実取り交ぜて演じています。「やすらぎの郷」は永年テレビ業界に貢献した人(俳優・女優・歌手の表現者も、脚本家・大道具などの裏方も)が入居審査を通過すれば亡くなるまで無料で暮らせる、という理想郷。

 男女雇用均等法施行後にキャリアをスタートした女性は50代後半、女性企業戦士たちがそろそろ定年を迎え老境に入っていきます。そんな私の属性は、企業内の論理思考が強い、ご近所に茶(酒)飲み友だちがいない、専業主婦のみなさんが心得ているお付き合いや世渡りを学んでいない。。。

 私が勤務していた某企業のアラムナイには「60歳定年までに部長以上の職位で10年以上勤めた者」という入会条件があります。「企業および団体で管理職経験のある元・勤労女性限定」という高齢者施設を作ったら、それは滑稽そのものでしょう。同じ属性で集団生活しても平穏にやすらげるか?いやいや、成功体験や自己肯定感の強いおばあちゃんが集まったら、別のエネルギーが生まれそうです。

 そもそも女性の生き方をカテゴリー分けしているところが問題だとわかっています。でも、息子が小学校1年の4月、会社を抜け出し初めて出席した保護者会で役員を決める時「会社勤めしていないからって、ヒマな訳じゃないんです」との発言があって場が炎上したのがトラウマになっているもので。。。

 多様性の時代、と言われながら、おばあちゃんになったら、その多様性はどう取り扱われるのだろう?相方に先立たれた後の10年15年、浮いて生きてきたおばあちゃんに、やすらぎの刻は来るでしょうか?



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?