読書ノート 『列』
その列は長く、いつまでも動かなかった。
先が見えず、最後尾も見えなかった。
第1部
気がつくと列に並んでいた。なんのために、いつから並んでいるのか分からない。
第2部
チンパンジーの野生群観察調査を行なう、大学の非常勤講師である男へと話は変わる。
第3部
列の謎がみえてくるが、それは無限のはじまりを意味していた。
◇◇◇
その列は長く、いつまでも動かなかった。
先が見えず、最後尾も見えなかった。
人はなにかの競争や比較に晒されつづける。
人生のように凝縮された列でおこなわれる行為に、哲学的社会風刺な、刺激的な魅力がある。
あとがきに、2年以上この作品を書いていたとあった。物語の結末と合わさって、すぐさま再読をしてしまう中毒性がある。
再び出会う冒頭の1文「—この世には列が多過ぎる」の意味は、大きく異なってみえた。
◇◇◇
この社会を列に例え、深い意味をもたせている。例えかたの秀逸がすごい。狭い世界線で無限の広がりを想像させる物語には驚嘆とさせられました。
巷にはいたるところに列ができている。スーパーのレジ、新発売の商品、話題の映画の公開日、役職のポスト、SNSのいいね、パンダの赤ちゃん、求愛、予定、ほかにも無数に存在しています。
世の中をみる目がすこし変わる。それこそ、なんのためにここに並んでいるのだろう。別にこの列じゃなくても他にもあるのに、なぜこの列なのか。
思いきって他の列に移ったとしても、列には変わりなく、だったら以前のままでもよかったのではないかと思いはじめる。
人生とおなじく、無限の不安と消極的な安心が心を乱します。
世の中を列に例えてみると、無数の列にみえてくるから面白い。新たな視点を得られたことに満足しています。
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