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1話公開!『キミのお尻にカビを生やしちゃって、ごめんなさい。』収録のズッコケ日記

今朝ワイフと「男性の子育てエッセイ」について話した。女性の子育てエッセイはたくさんあるし、子育てノウハウ本は世に溢れている。でも、確かに男性の子育てエッセイはそんなにない気がする……

パッと思いついたのは、辻仁成さんの『パリの空の下で、息子とぼくの3000日』。ほかにどんな本があるのかなあと思ってググってみたら、けっこうあった。でも、「子育て日記」は少なそうだ。

そもそも、どんなことが書いてあるのか想像がつかなければ手に取りづらいよなあ……と『キミのお尻にカビを生やしちゃって、ごめんなさい。』を11月4日にお披露目して、1カ月以上経ってから気づいた。

これまで75冊が旅立ったけど(手元集計)、ナゾの本を手に取ってくれたみなさん、ありがとう!!!皆さんはチャレンジャーです!笑

改めて、「ズッコケ子育て日記」の内容を知ってほしい! ということで、『キミ尻』に収録している日記の1話を公開します!

取材先で凍りついた「子育てナシナシ」事案

「子育てあるあるネタ」というのは巷に溢れているが、僕には「子育てなしなしネタ」が蓄積されている。「子育てしていても、普通はそんなこと起きなくね?」という事案がまた発生したのだ。

昨日は、雑誌の仕事で某省庁へ。ビジネス誌の編集部時代に何度も訪問しているから、特に緊張もない。担当者の苗字しか知らなかったから、いつものように30代から40代のビシッとスーツの男性が出てくると思っていた。

ところが! 現れたのは美女! しかも官僚っぽさを感じさせない柔らかな雰囲気で、笑顔がチャーミング! 予想外の展開に、ピュアハートの僕はついつい赤面し、汗をかいてしまった。

そこで汗を拭こうとカバンのなかからハンドタオルを取り出し、額に当てていると見慣れない柄が目に入ってきた。色鮮やかな水玉模様が僕の眼前で揺れている。

ん? ムム? どわーっ!!!

取材中じゃなければ、マジか!? と叫んでいたかもしれない。僕が手に持っているのはハンドタオルではなく、マイベイベーのよだれかけであった。

思い起こせば、家を出るときに時間がなく、バタバタしながら「外は雨だからタオルを」と思って、よく見もせずにテーブルの上にあった白い布をカバンに放り込んだ。

言い訳をするなら、その位置にタオルを置いた記憶があったんだけど、実際はよだれかけの白い裏地が表になっていて、勘違いしたのである。

一瞬、よだれかけの柄を眺めながらフリーズした僕は、ふと我に返って目の前の美女に視線を戻した。すると、先ほどとは明らかに異なる、感情の見えない微笑を浮かべていた。きっと、この氷の微笑で数々の難局を見て見ぬふ……いやいや、乗り越えてきたのだろう。

気まずくなった僕は、アタフタしながらもとっさの判断で「赤ちゃん用のよだれかけを日常的にタオルとして使っているライター37歳」だと思われたくないと強く思い、「娘のよだれかけでした」と笑顔で現状報告。何事もなかったかのように、流れるような優雅な仕草でよだれかけをカバンに戻した。

結婚指輪をしている(挨拶した瞬間に確認済)美女官僚にも、子どもがいるのかもしれない。心なしかホッとした様子で「……よくありますよね」と優しくフォローしてくれたが、その優しさが逆に僕の心を締め付けた。
断言しよう。滅多にないよ!
                    (終/2016年06月14日の日記)

キミのお尻にカビを生やしちゃって、ごめんなさい。』はこんな調子で、僕があちこちでアタフタ、失敗してクヨクヨしながら子育てに体当たりして壁に跳ね返されて後頭部を打ち付けているような日記です。もしよかったら、手に取ってみてください!

今は、西荻窪の今野書店で取り扱ってくれています。もし「うちに置いてもいいよ」という書店さんがあったら、ぜひお声がけください!
僕のオンラインショップ「稀人商店」でも販売中です。


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