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秋桜


車椅子父の目線の秋桜あきざくら


「なに甘えてんねん。しっかりせんかい!」

19歳。大学校舎の階段の踊り場で、同い年の同級生の男子から掛けられた言葉。あの頃はSNSなんかも無かったし、掛けられる言葉は面と向かってのものがほとんどだった。

面と向かって以外は陰口となって、時間差で耳に入ってきた。尾ひれもたくさん付いて、どれが元の言葉か分からない。悪意や同情、偽善、憐れみなどにまみれていた。

だから、直接、意見をしてくれる人の存在は宝ものだった。

でも、今ならSNSに投稿すると不特定多数、見知らぬ人からの意見や助言をもらうことができる。

たとえ意見や助言が無くても、自分の考えや思っていることを投稿することで、一瞬でも心の重荷を下ろすことができる。

どっちが幸せなんだろう。

当たり前だが、SNSを利用することで出会う人の数は格段に増えるし、多様な人に出会うことができるようになった。いや、実際には会ってはいないのだけど、SNSという媒体を介して接点を持つことができる。

生身の彼らを知らない。背格好もどんな顔をしているのか、どんな声で、どんな風に話すのかも知らない。でも、彼らの思考や意識に触れることができるし、刺激を受け、自身も変化や変容を遂げることができる。

実際、あたしも、毎日、見も知らぬ人に支えられている。何だか元気をもらって頑張れている。

だとしたら、今の子どもたちがあたしの歳になった時には、どうなっているのかしら。

多様な人の意見や思考に刺激されて、進化を遂げているのかしら。勇気をもらって日々を幸せに暮らしているのかしら。

なんて、早咲きの秋桜に聞いてみても、ただ揺れているだけ。

踏まれたら踏まれたまんま、花びらで地面を撫でている秋桜。頑張らなくてもいい。


秋桜こすもすを支える細いくきが好き」