お金より大切なもの

 ある村に、農民がいました。
 彼は親から継いだ畑を毎日耕していました。
 雨の日も、風の日も、日差しが強い日も。

 一生懸命、耕してもうまく実らない年もありました。
 それでも、来る日も来る日も畑を耕していました。

 ある日、彼が畑に行くと、実った作物が盗まれていました。

 犯人はその村では有名な富豪の一家でした。彼らはパーティーの余興で、畑の作物を盗ってくるゲームをしたのです。

 農民は富豪に、作物を返してほしいと頼みに行きました。
 しかし富豪は、笑って相手にしてくれませんでした。作物代も払ってくれませんでした。

 打ちひしがれて帰る農民を走って追いかけてくる者がいました。
「話を聞いていました。なにか力になれませんか」
 彼は富豪の家で働いていた召使でした。農民と富豪の話を聞いていて、富豪に意見をしたため、クビになってしまったと言いました。

 農民は、
「ならば荒れた畑を耕す手伝いをしてくれませんか。でも仕事代が払えないのです」
 と言いました。
「お金はいりません。毎日、食べるものさえあれば」
 と彼が言ったので、農民は畑仕事代として、作物を干して保管してあったものをあげることにしました。

 農民と彼は荒らされた畑を耕しました。力を合わせたので、思ったよりも早く元の畑に戻すことができました。
 そしてこれからも、一緒に畑を耕していくことにしました。農民には信じられる仕事仲間ができたのです。

 あるとき、隣村と争いが起こり、取引が停止になってしまったため、村が食料不足になりました。

 村民たちは農民の元を訪れ、作物を分けてほしいと言いました。
 農民は作物を少しずつ村民たちに分けました。彼らは「ありがとう」「ありがとう」と口々に言い、畑を耕す手伝いをしました。

 そこに富豪がやってきました。
「作物がほしい」
 と言うので、農民は、
「畑仕事を手伝ってくれますか」
 と聞きました。
 富豪は、
「畑仕事なんてやれるものか。お金はある。作物を買う」
 と言いました。

 農民は首を横に振りました。
「お金はいりません」

 お金は必要なものと交換するための単なる物質。
 この世にはお金より大切なものがある。
 忘れてはいけないことがある。

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mari

つきのむら

自作短編小説です
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