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ゼロから築く

この記事は、こちら☟のマガジンの続きです。


あの日の朝(上記の記事参照)に声をかけてもらって何人かの日本人と知り合うことができたのをキッカケに、少しずつ少しずつ不安は溶けてゆき、それまで現実逃避したくなっていた意識は「やらなければいけないこと(事務手続きや生活用品の調達)」「やりたいこと(過ごしやすい部屋にすること、人間関係の構築)」へとシフトしていった。

寮に住む様々な国籍の人たちとも知り合って、お互いに片言なフランス語で会話をする。みんな色々な理由や目的があってここにいることがわかる。今までの人生で出会ったことがないような、ここに来なければ話すことはなかっただろう、本当に様々な人たちがいて、フランス語以外にたくさんのことを学ぶ予感がした。


フランス語ゼロ、知り合いゼロ

人との関係に対して価値観が変わったのも、この留学初期だった。

自分にとっては人生で本当に大きな変化になったと思うし、今でもこの頃のことを感情と共にたくさん思い出せるのは、そういう精神的な衝撃があったからだと思う。

渡仏前と渡仏後で、明らかに人との関り方が変わったから。

日本にいたら、環境が変わっても一人で何とかやっていたかもしれない。事務手続きだって一人で行けるし、スーパーの場所を調べるのも簡単だったかもしれない。食べ物のことも知っているから何を買ったらいいか迷うこともない。

私がフランスに来た頃はほとんどフランス語が話せなくて、それはフランス語を学びに来たのだから当たり前と言えば当たり前なのだけど、自分で思っていたよりもさらに話せないものだと思った。あいさつ程度しか話せなかったのに、来ればどうにかなると思っていた自分が恥ずかしい...

さらには、ほぼ会話力が皆無にもかかわらず、留学当初というのは「フランス語がある程度できないと難しい」ことをしなければいけなかったりする。


フランス語ができないのに、フランス語ができないと厳しい試練のオンパレード

留学当初はとにかく事務的な手続きが多い。学校や滞在許可証関連、銀行、ケータイの契約...日本にいたとしても厄介な手続きを、外国人としての書類が加わる上に、まだきちんと話せない言葉を必死に使ってこなしていかなければならない。幼稚園生が社会人としてコミュニケーションをとらなければいけないようなもの。

寮の部屋には最低限のものしかないので、新しい生活に必要な必需品を揃えないといけない。スーパーで商品を眺めつつも時には勘で買ったりして、そして間違えたりもする。

そうやって、日々を冒険しながら生きていたのが今となっては懐かしい。今でもハプニングや試練が全くないとは言えないけれど、その頃のハプニング耐性は子猫並みだったから常にビクビクしていた。


人間関係の軸

私がその頃なんとかサバイバルできたのは、寮で知り合った人たちのおかげが大きい。事務的な手続きも一緒に来てくれたことがあったし、買い物に一緒に行って、重い荷物があったときは持ち合いっこしたり、一緒にご飯を作って誰かの部屋で食べ、夜な夜な語り合うこともあった。

いろんな環境で育ってきた人たちの話は面白い。共通点がなければないほど興味深いものだ。日本から離れて、たまたま選んだ町の寮で同じ時期に住み、こうして出会って留学生活を共有するということに運命すら感じる。

寮の設備(シャワーやトイレなど)が壊れたりして不便なこともあったけれど、友達がいたから楽しかった。最終的に寮には1年ほど住んだのだけど、彼らのおかげで楽しい思い出がたくさんできた。私の人生の中で一番大きなチャレンジだったのと同時に、色々な意味で一番大きく成長できた1年だったと思う。

日本にいたとしても、新しい環境で働いて成長していたかもしれない。どこにいても新しい環境でチャレンジすることは成長につながる。それぞれ、その環境でなければ得られないことがある。

知らない場所で言葉もままならない状態で生活を始めてみて、改めて人との関わりの大切さを知ることができた。お互いに助け合うこと、信頼関係を築くこと、感謝の気持ちを忘れないこと...あたりまえのことのようだけど、この時期は本当にそれを実感していた。今でもそのときに抱いた気持ちが強烈で、私の人間関係の軸になっている。


得られることは無限大

何でも一人でやろうとするのも強さかもしれない。でも、助けを求めるのは弱さじゃないし、お返しに助けることで信頼が生まれる。それの繰り返しで人とのつながりが増えて、人生が豊かになるのだと思う。

誰でもいいわけじゃない。知り合いが多ければいいものでもない。あまり気が合わないなと思う人や、むしろ迷惑をかけてくる人、利用しようとして来る人...いろいろな人がいる。そういうときの見極め方は、「少しおかしいなと思ったら、その直感を信じる」こと。そういうことも含めて人間関係の大切さを知ることができた時期だった。

ここまで書いたことは、これから留学する人たちにとっては、もしかしたら想定内のことかもしれない。コミュニケーションに自信があって、友達作りが得意な人には簡単なことかもしれない。逆になるべく人と関わりたくない人もいるかもしれない。

だけど、あらゆる思い込みは捨てて、たった一人で言葉もわからない国へ行って生活してみると、人から得るものが大きいことに必ず気がつく。

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