《詩》-木漏れ日の君-vol.59
僕らの戯れの言葉を
風が攫う
音をのせて舞う新緑は
もうすぐ
手折る薔薇が君の指先を血に染める
尖った棘のその先に光る真紅
その熱い傷口に口づけをして
待ち侘びた君からの言葉
そっと呑み込んで
途切れ途切れの波長にのせる
いつも間にか迷い込んだラビリンス
その危険な境界線で
アンバランスな君の瞳が揺れるのを見た
それすらも心地良く
甘い香りが僕の鼻先を擽ぐる
際どい危うげな君の爪先が
砂浜に濡れる小石を揺らす
ここへおいで
差し伸べた僕の手を
ぎゅっと握り返す君は
もう僕のものだ
やっと手に入れた
その境界線を飛び越えて
白光に包まれた君は
もう怖いものはないだろう
懐かしい日々
走馬灯
朝露の輝る緑
あの木漏れ日の朝は
今
僕の隣にある
-木漏れ日の君-
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?