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Mein Erster Schultag

もう7年半も前の話。

「娘の小学校初登校日に参列して」と誘われたときには少し驚いた。ロンドンで知り合って、彼女がドイツへ帰国してからもずっと親しくしているUによると、ドイツでは小学校へ入学する日は子どもにとって大切な大切な記念日で、「godmotherのあなたがいないと始まらない」と、いつもは物腰も言葉も優しく柔らかい彼女が、少しだけ強く押し付けるようにいった。

学校を始める子どもたちはたくさんの贈り物で祝福される。有名なのは両腕にやっと抱えられるほど大きな円錐形の筒(ジャイアントコーンのまさに「ジャイアント」なものを想像してもらうといいと思う)で、中には文房具やお菓子やおもちゃなどが入っている。このSchultüteを抱えて、真新しい靴を履いて真新しい鞄を背負って、多くの親類縁者を引き連れて、子どもたちが得意げに、或いはやや緊張の面持ちで、学校へと集まってきた。

校舎の入り口には Mein Erster Schultag 「私の初めての登校日」と書かれたボードが置かれていた。そう、今日の主役は子どもたちで、私たち大人は彼らの大切な日を飾る添え物、壁の花のようなものなのだと理解する。歓迎の挨拶や歌が終わると、子どもたちは上級生に連れられて講堂を出ていった。少しだけ不安そうに何度も振り返る子どもたちを、いってらっしゃいと手を振って送り出す。教室へ案内されたり担任の先生に紹介されるのだろうか。もうここからは、親の元から一歩離れて、子どもたちが中心の社会が作られるのだ。始まるのだ。大人たちはどこか所在なさげに、笑顔の子どもたちが走り出てくるまで、中庭でじっと待っていた。

入学式が終わると、ベルリン中心部の大きな公園Tiergartenの中にあるレストランで皆でランチをとった。木陰の予約席に着いて見回すと、あたりも入学式を祝う人々ばかりだった。笑顔と笑い声と、花と緑の香りと鳥の声と、アイスクリームでいっぱいの午後だった。盛夏のベルリンは、ますますもって美しかった。

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今日は4月1日。どこかで入園式があったのだろう、正装の小さな子どもたちと若いお母さんたちを見かけて、ベルリンで参列した入学式のことを思い出した。

今日の大阪もよく晴れて暖かく、散り初めの桜が、子どもたちを祝福するように白い花弁を降らせていた。おめでとう、おめでとう。心からおめでとう。あなたたちの未来が明るく輝けるものであるように、この私にできることはなんだろうと、改めて考えてみたりもしています。

*このとき訪れたベルリン、Hansaviertel にある小学校の写真などはこちらから 

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