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ラスト授業

昨日で1人の生徒を見送った。
2018年に国語講師として遅いスタートを切り2019年4月から受け持って昨日まで、
彼女と過ごした時間は私にとってもかけがえのないもの。

小学五年生で入塾してきた頃は幼くて素直で扱う教材も易しかった。
目から鼻に抜けるとはよく言ったもので一度こちらで言ったことはすぐさま理解。スポンジのごとく漢字でも文法でも吸収していくのがわかる。

見開き2ページの宿題もいつしか決めなくても自分のペースでしてくるようになり全く手がかからない生徒で、記事にしても何の参考にもならないほど優秀。学校での課外活動も音楽も運動も美術も参加して楽しんでいた。

時を経て中学生になり特に古典を教えるのは予習が必要で、数十年ぶりに接する古文漢文は基礎的な面白い題材が多く毎週楽しく勉強した。

未然連用終止仮定命令
だろだつでにだななら

意外と若かりし頃に覚えた文法が出てくる不思議。錆びついた頭の体操にはもってこいの時間。

そして現代文が学年と共に急速に難度が上がり内容も深くなり手応えを感じるようになる。この仕事をしていなければ巡り会うこともなかった数々の文章を読むことができた。さすが厳選された教材。

ご家庭からは問題集にとどまらず読書や作文の指導もするよう要望があって、論説文や小説など読み終わると要約してもらうなど、集団授業では叶わない豊かな時間を持つことができたと思う。

そろそろもっと力のある先生に交代してもらわないといけないと半年ほど前から感じていて、教室長に申し入れてそれが昨日だった。

渡された可愛い手書きのカードには手描きの花束の絵と共に別れを悲しむ文言が。胸にグッとくる。私も今後たくさんの本を読んで欲しいと願いそのきっかけになるように冬休みに読める小説を1冊プレゼントに用意しておいた。

個別指導に通う子たちは彼女のように優秀な生徒か、集団では着いていけないゆっくりした生徒に分かれるように感じていて、そのどちらも私にとってやりがいのある成長を見守ることのできる仕事。どんなに忙しくて疲れていても授業を休みたがらなかったと保護者からもメッセージがあり、過ぎ去った日々を振り返っては感慨に浸る。

国語はめきめき成績が伸びるような科目ではない。また、精神年齢のようなものも大きく影響する。主人公の気持ちなど全く理解できないという生徒もいて手強い教科。漢字や文法で点を稼ぐしかないのかと思ってもなかなかびっくりな書き順だったり。

他のブースでは淡々と授業を進める先生や、方言丸出しで熱血に指導する先生など様子が伝わってくるけれど私は私の持ち味で縁あって受け持つことになった小さな人との時間を大切に向き合っている。この仕事、素晴らしい。

個別指導に通える生徒は恵まれている。そうでない大勢の子どもたちにも何らかの形でお勉強のサポートができるといいなと最近は考えている。
一歩踏み出すことがなかなか難しいんだけれど。

年内も指折り数えるくらいとなりました。
1日1日を大切に過ごせたらと思います。
皆様もどうぞ良い一日を!

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