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歌舞伎を知る

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歌舞伎観劇30年ほど。見れば見るほど、知れば知るほど楽しい。勉強ノート、備忘録。
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伊勢音頭恋寝刃

2024年3月 三月大歌舞伎 夜の部@歌舞伎座 2時間もののサスペンスドラマ風タイトルをつけるなら、 「伊勢音頭殺人テロ事件〜消えた刀の行方〜」 物語の背景 寛政8年5月4日に起きた、実際の殺人事件を元にしたお話。 しかも最初に芝居になったのは、事件後わずか10日。歌舞伎になるまで2ヶ月かからず。先月かかった新版歌祭文 野崎村とかもそうだけど、歌舞伎には実際に起きた事件を題材にしているものが結構ある。 劇中で、主人公の祖父母と父親の命日がたまたま同日、それが5月4日だ

菅原伝授手習鑑 寺子屋

2013年のイヤホンガイド オーディションに出した解説原稿を、ここでお焚き上げ。 一次審査で原稿合格、二次(=最終)審査のアナウンスで落ちたのでした。 ⚫︎原稿加筆について 配役は2024年三月大歌舞伎に沿うように、また、何に対して解説を入れているかわかるよう、場面補足、実際には役者が言う台詞などを加筆ました。ただ、感情移入してほしい場面、いい台詞、胸に迫る台詞の場面は、イヤホンガイドではなく舞台に集中してほしいと思ったので、省略気味です。 (原稿は「寺入りの場面」が済ん

義経千本桜 すし屋

2024年2月「十八世中村勘三郎十三回忌追善猿若祭二月大歌舞伎」夜の部 歌舞伎には、忠義のために自分の子を犠牲にする話がいくつかある。菅原伝授手習鑑の寺子屋、熊谷陣屋、そしてこの「すし屋」。 (こうした「自己犠牲」の物語について語る、勘三郎のインタビュー記事を見つけた。あなたの芝居をもっともっと見たかったです。) わたしは歌舞伎を見るとき、「江戸時代の観客たちは、この話をどう受け止めたんだろう」と考える。七五三の祝いが慣習として残っているほど、昔は子どもが無事に成長するこ

猿若江戸の初櫓

2024年2月「十八世中村勘三郎十三回忌追善猿若祭二月大歌舞伎」夜の部 「江戸の歌舞伎ってこうやって始まったんだよ!」 「芝居小屋も作っちゃうよ!見てて!」 という感じの、賑やかで明るい演目。 猿若って? 「猿若」は、人の名前でもあり、芝居小屋の名前でもあり、狂言のタイトルでもあり、役どころの呼び名でもある。それほど特別・大切なもの、ということかな。 ⚫︎人の名前  江戸歌舞伎役者の初世「猿若勘三郎」つまり、中村勘三郎のこと。 ⚫︎芝居小屋の名前  寛永元年(162