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川上未映子『夏物語』

主人公夏子は大阪の下町生まれ。
小さい頃の夜逃げに始まり、早くに母を亡くしてからは、歳をごまかして工場で働いたり、知り合いのスナックの厨房で働かせてもらったり、姉とふたり肩寄せ合って活きてきた。
苦労てんこもりのはずなのに、姉や姪とのこてこての(?)大阪弁でのやりとりには、苦労を感じるどころか、小気味良いパワーを感じてしまった。
実に逞しい。
そして、小さな描写や台詞まわしの巧みさに、筆者のウデを感じた。


小説家目指して上京した夏子だが、短編集を一発当てたものの、それ以来先が見えない。
そしてそんな彼女は、38歳頃から、自分の子供に会いたいと思うようになった。
好きな人に甘えたいとは思うものの、男女の関係は望まない。そんな彼女が母になるには、精子提供を受けるAIDで出産するしか術がない。
そうやって生まれる子供が、どのように感じ、どのように生きていくのか。
考えて悩んで彼女が選んだその道は、
一筋のあたたかい光。

紆余曲折あったけれど、幸せを予感させるエンディングにホッとする一冊である。

どうやら、世界が絶賛する最高傑作といわれているらしい。

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