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清水真砂子さんオススメの『百まいのドレス』を読んで

 1944年に、エレナー・エスティスというアメリカ人作家が書いた子ども向けストーリーで、『ノンちゃん雲に乗る』シリーズの石井桃子さんが改訳しています。

この物語は、『百まいのドレス』を持っていると言い張る、ワンダという貧しいポーランド移民の女の子をめぐる実に奥の深いお話です。

ごく普通の優しい女の子たちが、その言葉をきっかけに、その子のことをからかい始め、それが毎日続くことによって、今度は、みんなでいじめているとわかっているのに、何も言えないでいる自分のことを責めて悩み始めるというお話です。

ストレートないじめは勿論いけないことですが、黙ってそれを見ないふりをする消極的ないじめの罪深さも、昨今とても問題視されてきています。

でもこのお話が書かれたのが、今から80年ぐらい前、第二次大戦中のことだというのですから、本当にビックリしてしまいます。

まだまだ人種差別や男女差別等がまかり通っていた時代です。

そんな時代に、作者のエレナーは、難しい言葉をひとつも使わず、どこにでも、誰にでも起こりうる、人々の間の差別や心の葛藤を、勇気を持って子どもたちに伝えようとしているのです。
なんて素晴らしいことなんでしょう!

そして、このお話が素敵なのは、子どもたち自身が、この問題を解決しようといろいろ知恵を絞るところまで、しっかり書かれているところです。

沢山の子ども達が小さなときから、こんなお話に出会ってくれたら、いじめはもっと減るのではないでしょうか!?

合間合間の優しい色調の挿し絵と穏やかで優しい口調の文章の奥に、作者の子ども達に対する愛情と強いメッセージが込められていて、私にとっては、とても新鮮で意味深い素敵なお話でした。


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