見出し画像

目的地を見失わずに断捨離する

ミニマルライフを発信している人たちの話を見聞きしていると、それぞれ現在のシンプルな生活に至るまでの道のりが異なり、断捨離をしようと思ったきっかけも様々であることに気づく。

最も多いパターンは、元マキシマリストだったこと。
実家に物が溢れている環境で育った人、買い物依存症だった人、いつも部屋が散らかっていた時代があった人など。

私も例に漏れず、確かに実家はもので溢れ、現在も母は物に埋もれながら生きている。
いいかげん不要な物は捨てて欲しいと母に提案したら「物がたくさんないと寂しいの」と涙声で言われ心底うんざりしたのをきっかけに母と物の話はしないようにしている。

しかしふと、改めて考えてみた。
私は本当はどうして物を持ちたくないと思い始めたのだろうか。

私がミニマルで在りたい本当の理由

そして気がついた。
私はいつでもすぐに脱出できるようにしておきたかったのだ。

ミニマルのきっかけ

遡ってみれば、きっかけは結婚である。
私は母との関係性が少し複雑で(複雑と感じているのは私だけで母は全くそう感じていない)、あらゆる行動を母に制限・制御されながら育ってきた。
反抗すれば腕力でねじ伏せられ、言葉の暴力は精神が崩壊して痙攣を引き起こすほど執拗で、次第に私は生き延びるために母をなるべく荒ぶらせないように、うまくやり過ごしながら生きることを選択し始めた。

そんな私も、唯一譲れなかったのが結婚である。
過去お付き合いした彼氏と何度も破談にしてくださった母親を、どうやって出し抜いて結婚まで至ればいいのか。私は本気で真剣に考えた。

実家脱出プロジェクト

その時、最初に行動したのが物理的な断捨離だったのだ。
持ち物が多ければ、実家を脱出する時に時間がかかる。
時間がかかるということは、それだけ邪魔が入るリスクが高まるのだ。
これは私にとっては本当に大きな問題だった。
なるべくスムーズに、素早く、気がついた時にはすでに手遅れというような状態が求められた。静かでかつスピーディーに。平常心で。

目につかないところから断捨離

私は母親に勘付かれないように、静々と作業を進めた。
開かなければわからないようなクローゼットの中を空にすることから始め、飽きた本やCDを処分してお金にしているかのように見せかけるが如く、母のいない隙を狙って少量ずつブックオフに持って行った。

昔話で山姥が気がついて追いかけてくるシーンさながら

しかしそこは長年娘を監視し続け自分の意のままにコントロールし続けた母親である。
ある日彼女は私の昨今の行動がなんだかいつもと違うと勘付き、私の留守中に部屋に勝手に侵入し、勝手にクローゼットを開けたのである。

即座に母から外出先にじゃんじゃんとメールが届いたが仕事中だった私は全て無視した。

私も生まれてからかれこれ長い長い年月の戦いの末の必死の行動であった。三度目どころか何度目なのか数える気にもならないくらいなのだが、何度目かの正直の脱出だったのである。ぬかりはなかった。彼女がクローゼットを開けてしまった時には、時すでに遅し。
私は当時の婚約者であり今の旦那さんと新居を借り終え(もちろん実家からは2時間くらいかかるような遠くにである)、荷物もこれを動かしたらバレるというギリギリのものだけを実家に残した状態で、ほとんど日々の仕事と生活に必要なものは実家から消え失せた後だったのだ。

こうして私は魔窟から逃れ、お陰様で今では平和な暮らしを送っている。

私にとってのこの脱出成功体験は、本当に強烈で、その後の生き方をも変えるような大きな事件だった。

今ではどこかに逃げたいと思っているわけではないのだが、旦那様が引っ越しがお好きなもので、いつでもスムーズに引っ越せるようにという考えから物を増やさないようにしている。
近隣に引っ越しているうちはまだ良いのだが、そのうち違う国に住み始めるかもしれないので、そうなった場合にも、増やしてしまったものを捨てやすいかどうかが、新たに物を導入する時の基準にもなっている。

処分しやすいかが基準

シンプルな生活を作るために収納グッズを増やす人もいると思うのだが、その家からずっと何十年も動かないつもりなら、それはそれでアリかもしれない。
私たちはそんな生き方は向いていないので、収納グッズもできる限り減らすようにしている。

収納グッズというのは、どうにも捨てづらいのだ。

何ごみに分別するの?
サイズがギリギリ粗大ゴミのサイズになっちゃったわ。
燃えるゴミに出せるけれど嵩張るから有料の袋が大量に必要。

などなど、とにかく収納グッズを処分しようとする時、実は結構な労力を要するのだ。
スムーズ移動をしたい場合は、収納グッズは足枷になる。

そんなわけで、昨今流行りの断捨離、ミニマリスト、シンプルライフブームだが、その生活スタイルを選択した理由は実は様々なのである。

最も大切なのは正直な動機

断捨離に挑戦したけれど、また物が増えてしまった人、
あっという間に汚部屋に戻ってやる気を喪失した人などは、
ぜひ整理整頓をする前に一度立ち止まって考えてほしい。

「なぜ私は断捨離したいのだろう。なんのために断捨離をするのだろう」

例えば人によっては「せっかく一戸建てを買ったのだから、素敵な家を作りたい」という人もいるだろうし、「家賃を抑えるために一回り狭い部屋にしたい」という人もいるだろう。「無駄遣いをやめてお金を貯めたい」という理由で断捨離を始める人もいるかもしれない。

それら全て、実は家の片付けかたの処方箋が違うのである。

結局断捨離に失敗してしまったという人は、処方箋が間違えていた可能性が高い。

自分がどうなりたいから断捨離をするのか。

私は、いつでも身軽に移動したいから断捨離をする。
思い立ったら吉日で、その翌月には荷物を全てまとめて別の国に住み始められるような、そんな軽やかさでいたいのだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?