【本】成熟スイッチ
林真理子 【成熟スイッチ】
日大の学長就任のニュースがまだ耳新しい林真理子さんのエッセイ。
コピーライターとして活躍後、本格的に作家の道に進み、今や日本を代表する作家のひとりというのはご存じの通り。
美食家で、オペラや歌舞伎にも精通し、交友関係もものすごく広い。
まさにハイソな生活を地で行っている印象。
そんな林さんが「成熟」とは何かの正体を、ご自身の経験からおすそ分けしてくれる。
上手に年を取る人と、老いの醜さを見せつける人の違いは何か。
それはちょっとした考え方、心の使い方、持ちよう、行動の仕方。
成熟は一日にしてならず。様々な経験を積んだ彼女だからこその視点が、時に共感したり、スカッとしたり、考えさせられたり、心を忙しく動かした。
自分もだんだん年長になっていろいろと見えてくるものがある。
例えば、食事をおごった次の日に会っても「昨日はごちそう様でした」と言えるか、言えないか。
私は言うようにしつけられたが、うちの若手の中にも言ってこないやつはいつも言ってこないし、言ってくる子は毎回言ってくる。
やっぱり後者は次も連れて行こうかな、となるのは人間の心情だ。
また、何かしていただいたり、高価ないただきものをしたりした場合、林さんはお礼状とともに地元のものを送るそう。
山梨出身の彼女は、桃や干し柿などを送る。お礼状に「地元のもので恐縮ですけど。。」と書けば温かみも感じられて好感が持てる。
有名なもの、高価なものはある意味誰でも送れるが、「独自のテリトリーで見つけて自分が良いと思ったもの」を送るのが重要。
なるほど。
う~ん、そうだよね、と思ったのが、「誰かを誰かに紹介した後、自分の知らないところでその人たちが何回もあって距離を縮めていることがあって、聞いていない!とモヤモヤする」。
これは私も時々あるので、すごく共感した。
林さんは、せめて3回程度までは紹介者にひと言いうべき、とマイルールを作っている。
これはスマートだなと思いました。
自分も人に紹介されることが多いので、気を付けよう。
このほか、面白い集まりに誘っても「うちの用事があるから、、、」と断る人の気持ちが全く理解できないとか、俯瞰力と自己愛の比率を考えながら人間観察をすると面白いとか、101歳で亡くなった母親の介護を振り返り、ああすればよかった、こうすればよかったと後悔するのも供養になるのではないか、とか、これからの人生を賢く心地よく過ごすヒントが満載でした。
私よりちょっと若い人や、同年代の人にとても勧めたい本。
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