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カレー職人ルドク 第三話

 僕は早速、慣れない土地で働き始めた。
 この店は幸い、インド人のお客さんが多いからヒンディー語が通じる。でも、アメリカ人のお客さんもそれと同じくらい多い。僕の英語は、アメリカ人のお客さんには思うように通じなかった。だから、料理の説明をしても上手く伝わらなかった。それに、お客さんの要望すらも上手く聞き取ることができなかった。だから、段々辛くなってきて何度も辞めたくなった。
 それでも僕は、ここで働いているとお父さんが見てくれているような感じがして嬉しかった。
 僕が作るカレーは、他のアメリカ人シェフが持っていないスパイスを入れている。それは、インドで屋台をやっていた時から使っているスパイスで、アジア人のお客さん向けに使っている。
 ある日、インド人のお客さんに呼ばれた。
「このカレーを作ったのは、貴方ですか?」
「はい…。」
 僕は、一気に冷や汗をかいた。
「とても美味しいよ!故郷を思い出すなあ。前からこのレストランに来ていたけど、こんなに美味しい味付けはここでは初めて。アメリカでこの味には、なかなか出逢えない。また来るからね。ご馳走さま。」
「ありがとうございます!」
 クレームで呼ばれたかと思ったけど、褒めらて胸が高鳴った。これを励みに頑張っていこう。

 辛いことも多かったけど、ここで働いて3年が経った。でも、相変わらず僕の英語は訛っているようで、お客さんに上手く伝わらなかった。アメリカ人のお客さんからは、多くて月に10回程クレームが来た。そのせいで、僕はクビになってしまった。

「今まで頑張ってくれてありがとう。
 料理の才能だけじゃ、ここではやっていけないんだよ。なんせ5つ星のレストランだからね。俺の友達の息子とはいえ、もう…。これじゃだめんだ。でも、本当によく頑張ってくれたよ。お疲れ様。」
「こちらこそ、お世話になりました。
 ご迷惑を掛けてしまって、すみませんでした。」

 つづく…

 



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