2023年の読書をPowerPointのスライドにまとめてみる
早いものでもう12月。
年末の慌しさが感じられる時期になったこともあり、今年の読書振り返りをしたい。
2023年は読書の記録をきちんとつけ、整理していくことを目指していたこともあり、今年読んだ本の棚卸しをしてみる。
手当たり次第に本を読んでいくのではなく、たまには本との向き合い方を振り返ってみるのも大事だろう。
スライドつくってみた
私は、『読書メーター』というアプリのほかに、Excel上で書籍名・作者名・出版社名・ジャンル・読了日・感想の記録をしている。
2023年の読了本は以下のとおり。
このままでは、読了日順に並んだ記録でしかないので、ジャンルも傾向も何もわからない生データとなっている。
これらの読書記録を、PowerPointのスライド1枚にまとめてみたら、整理もできるし、振り返りもしやすいのではないかと思ったことから、やってみようというのが今回の記事の目的である。
【工程1】アナログでの整理
基本的にアナログ人間なので、まずは紙を使って整理することとした。
Excelで整理した一覧表をプリントアウトし、行ごとにはさみで切り分ける。
年間で100冊近く読んでいるため、紙片は100枚近く発生する。無くさないように気をつける。
そして、台紙の上に書籍名を記載した紙片を置いて、この1年間の読書を振り返るように整理していく。
著者別に整理するものもあれば、ジャンル(SF、ファンタジー等)別に分類できるものもあり、いろんな区分けができる。
最終的な分類が定まったところで、分類や相関関係を台紙に書き込んでいく。
これで完成系となるが、この整理でいいか一晩置いてからもう一度考えることとし、PowerPointでの清書作業に移っていく。
【工程2】PowerPointでの作業
やることは簡単。
台紙で整理した情報をPowerPointに転記していくだけ。
ただし、このまま転記するにしても、スライド1枚に収めるには文字が小さくなりすぎてしまったり、相関関係がとっちらかってしまったりすることから、配置を少しずつ工夫していくこととした。
その結果できたのがこちら。
なんとか1枚に収めることができたが、これ以上読了本が増えたとしたら1枚での整理は難しかったかもしれない。
振り返ってみた
スライドをつくるのは手段であって目的ではない。
主目的である読書振り返りをしていこう。
【傾向1】ファンタジー系作品の沼に足を踏み入れた!
昨年末から上橋菜穂子さんの『守り人シリーズ』を読み始めた。
きっかけは、新しいジャンルを開拓していきたいと思ったことと、民俗学って面白そうとふと思ったことから。
結果として、文化人類学者である上橋さんが書く世界にハマった。
ファンタジーだから現実の世界ではないのだが、宗教と政治のつながりや、民族間の争いや同化といったテーマに、どこか遠くないものを感じてしまう。
『虚空の旅人』のあとがきに書かれているとおり、上橋さんの描く世界が小説内に具現化されており、それを一読者として楽しむことができた。
そして、同じファンタジーの枠組みとして小野不由美さんの『十二国記シリーズ』、上橋菜穂子さんの『鹿の王』にも手を出した。
特に『十二国記シリーズ』は、『守り人シリーズ』を読破して「ファンタジーも楽しめる」という自信がついたからこそ、手に取ることができた。
十二の国は、成り立ちも風土も人も違う。それを描き分ける作者すごい。
【傾向2】名作といわれる作品を開拓!
夏頃に手に取った駒井稔さんの新書『編集者の読書論 面白い本の見つけ方、教えます』が契機となった。
光文社古典新訳文庫を創刊した作者が、短編小説、児童文学、各国ごとの作品といった様々な切り口でおすすめの名作を紹介していくスタイル。
私も名作を読んでいきたいと思ってはいたものの、何から読めば良いかわからなかったり、とっつきづらかったりしたこともあり、そこまで手を伸ばせていなかった。
しかし、まずは有名作家の短編集を!という本書の言葉に後押しされて、光文社古典新訳文庫を読み始めるようになった。
メルヴィル『書記バートルビー・漂流船』、チェーホフ『桜の園・プロポーズ・熊』、ゴーゴリ『鼻・外套・査察官』、バーナード・ジョー『ピグマリオン』といった作品は、抵抗なく読み進めることができた。
いずれも、難解に感じることもなく、作品が生まれた社会的背景を知りながら、楽しむことができたように思う。
来年は長編文学や別の作者にもトライしていきたい。
【傾向3】アウトドアに関わりある作品を手当たり次第!
元々、登山やキャンプが好きなこともあり、ヤマケイ文庫やアウトドアにまつわる作品はそれなりの数触れてきたと自負している。
そんな中、春先にいわた書店の一万円選書に当選したこともあり、これまで自分では選ばないような本を読むこととなった。
中でも、アウトドアに焦点を当てた諸作品ーー久保俊治『羆撃ち』、宮下奈都『神さまたちの遊ぶ庭』が自分の好みに刺さった。
とりわけ、自然に囲まれた環境の中で自分自身と向き合いながら生活する姿を描く作品に影響を受けやすいのかもしれない。
自然の中での生活は、娯楽に興じる時間的余裕もあまりなく、常に自分の内面であったり、先が読めない自然との対話が必要になる。
その状態に向き合う人が何を考え、どのような考えにいたるのか。
そこを読み解き、浸るのが好きなのかもしれない。
山小屋での生活に焦点をあてた樋口明雄『北岳山小屋物語』、原田マハ『生きるぼくら』にも共通する部分がある。
アウトドアとは厳密に違うかもしれないが、大好きなハヤカワの新書からチョイスした原瑠璃彦『日本庭園をめぐる』から、日本庭園に関心を持つことになった。
自然のあらゆるものに神が宿るアニミズム的思考は結構興味がある分野でもあり、日本のおもてなしの心や、細かな気遣いといったところに通ずるものがあると思っている。
そして、時代や季節に応じて様々な顔を見せる庭園というものをもっと追求したいと思えるようになった。
【傾向4】「食」について考えるきっかけに
ふと書店で手に取った平松洋子さんの『食べる私』。
元々、平松さんが食に関するエッセイストというのは知っていたが、これまで手に取ったことはなかった。
この作品は、食にゆかりのある著名人にインタビューを行い、そこでの対談を一冊の本にまとめたもの。
著名人も料理人、作家、俳優、スポーツ選手と多岐にわたる。
それだけ幅広い業界の方であれば、食への向き合い方も様々である。
食は人間の欲求につながるものでもあり、人とは切っても切り離せない関係にある。
何を作るか。何を食べるか。その人の考え方や向き合い方があらわれる。食べることを自らの血肉にする人もいれば、味わうことに楽しみを感じる人もいる。
どちらのスタンスも好きではあるが、個人的には楽しむことをメインにしつつ、食から感じる気づきにも敏感でありたいと思う。
この本をきっかけに、小泉武夫さんや服部文祥さんの本を芋づる式に購入した。まだ読めていないが、今年の残りの期間を使って読み進めたいと思う。
また、くどうれいんさんの『桃を煮るひと』、『わたしを空腹にしないほうがいい』は定期的に読み返したくなる作品だった。
食べることを楽しく、そして、自分の言葉に落とし込んだ表現となっており、非常に読みやすかった。
↑今年書いた『桃を煮るひと』のnote記事
【傾向5】やっぱりSFが好き!
昔から好きなのがSF作品。
特に「管理社会」を描いた作品が好きなので、本屋に行って「これぞ!!」といった作品は次から次に買っている。
村田沙耶香さんの『殺人出産』『消滅世界』は、ありえない世界でありながら、その世界に生きる人の描写がとても真に迫っており、読後感がなんとも言えなかった。
胸にザラザラとした感情が波立つ感じだろうか。
でも、そのザラザラ感が嫌な感じもせずに受け入れられるのは、村田さんの描く登場人物の内面描写が繊細だから。
そしてレイ・ブラッドベリの『華氏451度』。
この表題は紙が自然発火する温度にあやかってつけられている。
世界観としては、紙の本を持つことが悪とされている社会。
必要な情報はスクリーンからしか与えられず、人から思考する力を削いでしまうような社会。
じわじわと溢れ出すディストピア感。
管理社会を描いた作品は読み始めた当初はありえない設定だと思いつつも、現実世界もいつかこんな社会になる可能性を孕んでいると考えさせられてしまう。
そんな背筋の凍るような思いを感じながら味わう作品がとても好きだ。
おわりに
ただむやみに乱読するのではなく、読み終わった後に「なぜこの本を手に取ったのか」「なぜ自分に刺さったのか」を振り返る機会は大事にした方がよいと改めて思い知った。
読書機会は有限でもあるため、じっくり噛み締めながら2024年も楽しんでいきたい。
作品リンク
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