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イレヴン、スタッド、ジャッジのこと ー 穏やか貴族の休暇のすすめ。[登場人物②]

『穏やか貴族の休暇のすすめ。』登場人物の整理2回目は筆者が勝手に「年下トリオ」と呼んでいる3人です。リゼルに甘やかされ、籠絡されたメンバーでもあります。

"魔性との契約"を交わした年少組

イレヴン

リゼルのパーティメンバーで、パルテダールを震撼させた盗賊「フォーキ団」の首領ボスだった青年。アスタルニアの"森族"出身で、滅多に見かけないと言われる蛇の獣人である。作中のエピソードから22歳前後と思われる。一人称は「俺」。
如何にもモテそうな遊び人風の容姿と、素人目には愛嬌ある笑顔、鮮やかな長い赤髪が目を引く。身長はリゼルと同じくらい。細身ながら底なしの大食漢で、ジルほどではないが酒も強い。パルテダの高級チョコレート店の常連。

イレヴンという名は誤名由来の偽名で、ギルド登録時に名前欄に年齢(11)を書いてしまい、文字が書けないと誤解した職員がElevenと綴り直したために生まれたものである。本名はネルヴという。「フォーキ団」という名も「Forked Tongue(二又の舌)」が誤って伝わったもの。

武器は短い双剣のほか、さまざまな刃物を操る。弓も上手い。蛇の獣人の特徴か、しなやかな身体能力とスピードを持つ。口腔分泌の毒を用いることもある。気配にも敏い。幼い頃から過激で、森の獣や魔物に立ち向かっては血みどろの怪我を負っていた。背中には"森の主みたいなやつ"に食いちぎられた大きな傷がある。家族仲は良いが、森の生活に早々に飽きて冒険者となった。
(ジルに「よく登録できたな」と驚かれるほど年若いが、ちょうど絡んできた冒険者をぶちのめしたことで登録できたらしい)

あるとき、依頼の魔物を探していた森で盗賊団を返り討ちにしたら新たな首領に祀り上げられた。盗賊など悪でしかないとわかってはいたものの刺激の誘惑に負け、ソロ冒険者と盗賊の首領という奇妙な二重生活に突入。以降、神出鬼没・最恐最悪の盗賊団としてパルテダール国内を荒らし回ったり、賭場や闇オークション会場で荒稼ぎしていた。
リゼルたちを襲撃したのも遊び感覚だったが、高貴さと末恐ろしさを全開にしたリゼルに牽制されて自身の弱点や畏怖すべき存在に気づくとともに、リゼルに惹かれいていた内面を認めてパーティ入りを志願。盗賊団は、折しもジャッジの店で発生していたトラブルを利用してリゼル経由で清算した。ただし現在も、イレヴンの下にいれば面白いこと(もちろん非常識な意味で)がまだあると踏んで従っている精鋭8名をパーティのためにこき使っている。
なおイレヴンは精鋭たちを「イカれてる連中」と言うが、イレヴン本人もレイ子爵や高位の冒険者には「とんでもなくヤバい奴」と看破されている。

非常に好戦的で乱暴な言動をし、ソロCながらSに匹敵する実力を持つゆえ(ノベル4巻あとがき情報)格下は雑魚呼ばわりだが、自分が認めた相手に限っては上下関係や"群れ"を大切にするようで、リゼルを「リーダー」、ジルを「ニィサン」と呼び、なけなしの丁寧語で話し、他者への尊大な物言いや手グセの悪さをジルに咎められれば頭をひっ叩かれても一応従っている。誰に対しても本心を悟られないように振る舞うなどのひねくれた性格はそのままだが、他人を守るなど欠片ほども考えなかった自分が望んでリゼルを守るようになった変貌ぶりには自ら驚き、リゼルとの日常を楽しんでいる。機嫌の良し悪しをスキンシップで示すことも多い。これも獣人の特徴である。

リゼルの存在がなければジルと組むことはなく互いに興味もないが、剣士として憧れはあるようで、手合わせやリゼル抜きの迷宮潜りで鍛えてもらっているらしい。また、ふたりで宿飲みすることもある。リゼルもわだかまりがある仲とは認識していない。
ただ、リゼルにとってのジルの立ち位置を目指しつつもその背中は遠く、自分は割って入れないことも自覚しており、時折複雑そうな様子も見せる。


スタッド

パルテダの冒険者ギルドの住み込み職員。ガラス玉のような藍色の瞳が印象的で、イレヴン配下の精鋭A曰く「観賞用」の美しさを持つ若者。氷属性の魔法の使い手であり、異常なまでに感情表現に乏しく他者に容赦ないため、ついた渾名は"絶対零度"。ただその冷たい雰囲気にハマって「蔑まれたい」と狙う町娘も一部に存在する。一人称は「私」。
酒は結構飲めるが、一定の基準を超えた瞬間に気絶したかのようにテーブルに突っ伏してしまう。

オールマイティに職務をこなし、貴族階級の依頼人の応対もできるが、冒険者に厳然とあたるうえ、イレヴンの向こうを張れる攻撃力を持つため荒事担当でもある。抑止力としては抜群で、スタッドを恐れるあまり「パルテダの冒険者は他所と比べておとなしい」と言われるほど。

自分の生まれや両親のことなど一切知らず、物心ついた時にはパルテダの裏社会で暗殺者をしていたという衝撃の出自を持つ。苦海から救い出したのは現在の冒険者ギルド長で、スタッドに「君に人殺しをさせていた連中は全員死んだ。自分のところで働くなら衣食住とおやつを保障しよう」と告げて裏社会から脱出させている。生命を維持するためだけに人を殺していたスタッドはその提案を受け入れ、幼くしてギルド職員となった。
ジャッジとは当時からの付き合いで、事実上は唯一の友人である。大人たちに同い年くらいに見えていたため、書類上はジャッジと同年となっている。

特殊な幼少期を過ごした影響か、喜怒哀楽の全てが抜け落ちていたが、リゼルと出会って"好意"を明確に示される体験をしてから、少しずつ人間らしさを獲得している。仕事以外に時間の使い方がわからず非番でも働いているような生活だったが、リゼルと交流するために休みを取って外に出るようになった。そのためリゼルは、スタッドを陰ながら案じていた年長の職員たちから感謝されている。

あからさまにリゼルに懐いており、彼を「あの方」と呼び、敬っている。ただし聡明ゆえに、リゼルの好意はギルド職員として有能だから与えられているものであると自覚している。突然失われる可能性がある理由なき好意のほうが恐ろしいとも考えており、リゼルにとって有益な存在であろうとしている。事実、マルケイドの魔物大侵攻を知って闇雲にリゼルを案じて騒ぐジャッジを尻目に「私は(あの方に)私を使っていただく機会を逃したことを嘆いているんです黙ってろ愚図」と怒りをあらわにしていた。

リゼル以外の知己に対しては変わらず冷淡で容赦ない罵詈雑言をぶつける。ジャッジのことは"愚図"呼ばわり、またイレブンとは水が合わないうえ実力も伯仲しているため、リゼルの目が届かないところで"馬鹿"と呼んで常にやり合っている。(なおイレヴンはスタッドを"能面"呼ばわりしている)

荒事担当とはいえ、ギルド職員になってからは殺生とは無縁だった。しかしリゼルを狙ったフォーキ団の雑魚を粛清したのを機に「衰えた腕でリゼルに必要とされるのは自分が嫌だ」と考えるようになる。腕試しにジルを襲ったが軽く躱されたため、イレヴン配下の精鋭を練習台と位置付けて背後を取る訓練をしているらしい。

ジルのことは嫌々ながらリゼルの盾として認めており、「研ぎ澄まされた空気が鳴りを潜め、余裕が出た。冒険者としての格を上げた気さえする」と、のちにマルケイドのギルド職員レイラたちが抱くのと同じ印象を持っている。
ただ、ある種の嫉妬を抱く。スタッドがやけにジルに噛み付くようになったのを不思議がるリゼルに、ジルが「同族嫌悪」と表現した際、スタッドは「似ているとかやめてもらえませんか戦闘狂バトルジャンキー」と牽制しつつも、「隣にいたいなら必死で守れ」と言って立ち去っている。
二人が殺し合えば確実にジルが勝つ。ライバル視できるイレヴンと違い、どれだけ羨望しても立ち位置も実力も取って代われない相手への精一杯の反抗であろう。


ジャッジ

パルテダにある冒険者向けの道具屋を営む20代前半の青年で、パルテダール有数の貿易商であるインサイの孫。瞳はエメラルド色。推定2mオーバーの高身長だが猫背で、栗色の癖毛の長髪と幼い顔立ちも相まって威圧感は皆無。一人称は「僕」。

迷宮品や魔物素材の鑑定に優れ、幼少期からインサイに連れられて冒険者ギルドに顔を出していた。ギルドに日々持ち込まれる素材の鑑定を手伝うことも少なくない。
また、料理上手でフライパン1つでコース料理を作ったり、魔鳥車の内装を突貫で改造したりと異次元の器用さを持つ。

リゼルがこの世界に転移して最初に接触した、つまり正真正銘貴族の状態だったリゼルを目撃した数少ない人物である。見たこともない素材や装飾を持つ剣を持ち込まれて金貨200枚で買い取ったが、そのときはリゼルを「なぜか剣を売りに来た貴族」と認識(間違っていない)。後日、ジルとともに迷宮品の鑑定を依頼しに来たリゼルに冒険者だと名乗られて卒倒した。

イレヴンの命令で見張りをしていた精鋭曰く「本当に普通の人」。御曹司で優れた鑑定眼を持ち、空間魔法つきの鞄や迷宮品といった貴重な品も手広く扱う道具屋を切り盛りしていて自信に溢れてもいいようなものだが、"商人として"以外の自分に自信がないのか誰に対してもオドオドしており、スタッドに"愚図"呼ばわりされている。その割には自分が気に入らないことに関して粘着質なまでに押しが強い。実はあまり人の話を聞いていないところもある。

高級なものや希少なものを評価し、その価値に相応しい扱いをすることを信条とするせいか、高貴で優しく大人な雰囲気を持つリゼルを盲目的に尊び、まるで美術品のように接する。ただしその感情や好意は"ジャッジが望む形"が維持されることが前提となっている。リゼルの望みであれば多少似合わないことでも好きにやらせるジルたちと異なり一方的なため、時には周囲が叱責するほど。リゼル絡みで喜怒哀楽が激しく表に出たり、リゼルの望みとは違うことを要求している自覚はあるようで、そのたびに自身を恥じて半泣きで赤面するが直る気配も直す気もなさそうである。リゼルはそのヤンデレぶりを受け入れているが、ジルもイレヴンもスタッドも理解し難く感じている(要はドン引きしている)。

ちなみに道具屋の建物は「王座」という魔木でできており、主が望まない相手を外に追い出したり、刀傷沙汰を無効化したり、扉を開けさせなかったりといった不思議な力を持つ。


はっきり言います。ジャッジのヤンデレはキモいです。(※個人の感想です)

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