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イノベーションは危険なことば

本日は、慶應義塾大学の小幡績教授の書かれたコラムから考えてみます。

イノベーションとは、経済を破壊することだ。

という記事の冒頭の一文に興味を惹かれ、シュンペーターの創造的破壊の記述のあたりまでを大変面白く読ませて貰いました。

猫も杓子もイノベーション

ビジネス界隈の人達が大好きで、もう何年も流行語になっている横文字に、『イノベーションinnovation』があります。技術革新、創造的革新という訳語を充てると概念にズレが生じるので、そのまま定着し、ビジネスシーンのみならず、あらゆる場面で多様されるワードとなっています。

そしてこの語の源流が、ケインズと並んで20世紀を代表する大経済学者である、ヨーゼフ・アロイス・シュンペーター(Joseph Alois Schumpeter、1883/2/8-1950/1/8)の経済理論に由来することは、私も漠然と知っていました。

世の中は、イノベーションを非常に好意的に受け入れていて、イノベーション(もどきを含めて)は常に礼賛の対象です。新進気鋭のスタートアップ企業の経営者で、イノベーションをイメージしていない人は皆無でしょう。

ただ、このコラムでの小幡氏の明快な解説を読むと、何やら巷で乱発されているイノベーションということばとシュンペーターが定義したそれ(創造的革新)には乖離があることがわかり、歪んで誤用されている思いを強くしました。

持続的発展とは量的膨張の継続

注意しなければいけないのは、現在、多くの人が、イノベーションとは創造的破壊である、といったときに、破壊が軽くとらえられ、既存の概念を壊す新しいモノ、創造的で新奇性のあるもの、というイメージでとらえられているが、シュンペーターのいう創造的破壊とは、そんな生易しいものではないし、1つの新しい商品やアイデアのことを指すのではなく、経済全体の新しい段階への進展を意味している。

記事より抜粋

この部分を読んだ時、妙にストンと腹落ちする感覚がありました。イノベーション、イノベーションと連呼する人々に胡散臭さを感じてきた私には、小幡氏が代わりに鉄槌を加えてくれたように感じ、清々しさを感じました。

そしてさらに現在考えられている経済発展とか成長とかは、単なる量的膨張であり、長期の持続的成長も膨張の持続ということになる、という解説も納得でした。そして、

現代のイノベーションが経済成長を生み出す、というのは間違っている。持続的な成長というのは、イノベーションではなく、ただの膨張なのである。

記事より抜粋

その後もわかりやすい解説が続きました。私はこのように、シュンペーター理論を教わったことがなかったので、非常に新鮮に感じました。

シュンペーターの理論のエッセンスを、われわれ現代人は、都合よく、個別のイノベーション論に矮小化しているが、シュンペーター理論とは、「資本論」であり、「資本主義システム論」なのである。

記事の抜粋

に辿り着いて、妙に納得しました。

なお、小幡氏がこなコラムで論じたかったのは、後半の資本主義が崩壊する、社会が崩壊する運命にある、という部分であったと思われますが、今回は敢えてノーコメントとさせていただきます。

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