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『あの日、選ばれなかった君へ』を読む

今日は、大雪予報を真に受け、一日中部屋に籠もって、のんびりと過ごしました。アクティブに活動しない時の私は、怠惰な世捨て人です。興味を惹かれた動画コンテンツやネット記事を拾っては、ひたすら観続けて一日が終わりました。好意的に言えば、知的エネルギー補給のために、インプット中心の時間を過ごしました。最近、生きる目的を体現する為に出せるアウトプットの源が瘦せ細っている気がしていたので、他人の鋭い意見に触れることで、自分の中の幹を太くする努力をしたよい時間になりました。

本日は、年末年始に読了した、阿部広太郎『あの日、選ばれなかった君へ 新しい自分に生まれ変わるための7枚のメモ』(ダイヤモンド社2023)の読書感想文です。

売れている本

この本は、私が愛聴しているVoicy『荒木博行のbook cafe』でその存在を知り、著者の阿部広太郎氏との対談内容(心をつかむ言葉塾①② 2023/11/17-18)も、なかなか興味深かったので、購入して読みました。

本書は、結構売れているようです。想像するに、『あの日、選ばれなかった君へ』というタイトルにインパクトがあり、必死に目指した目標に到達しなかった、頑張っているのに全く注目されなかった(≒選ばれなかった)という悔恨と無念の情を持っている人に、ぐっと刺さったのではないかと想像しています。

荒木さんもやんわりコメントしていましたが、本書を読み終えるまでは、阿部氏の、慶応大学(準体育会でアメフトに打ち込む)卒業、電通に入社してコピーライター、受賞経歴も著書もある、というキャリアだけを眺めると、「しっかり選ばれ、評価され、報われている」人じゃないか…… という印象を持っていました。読後は、人一倍努力と我慢をしているのだから、神様も手を差し伸べるよな、と印象が変わりました。

100%の共感はないものの…… 筆力はさすが

本書は、阿部氏が歩んできた半生が赤裸々に綴られています。「選ばれなかった」絶望の経験から、再び立ち上がる行程や、気持ちの持って行き方には参考になることが多かったです。コピーライターという、ことばを操るプロなので、余計な装飾は控え、極力シンプルなことばを丁寧に並べて読ませる文章へと昇華させています。この技術は凄いな、と感じました。一言一句に魂を込め、嘘のない内容にしようと意識されたのでは、と想像します。

率直に言うと、それぞれの「選ばれなかった」という内容に、100%共感できた訳ではありません。確かに、ご本人にはショックな経験だったと思うし、気持ちを切り替えてどん底から立ち上がるまでには、相当な葛藤と苦労があったことは、十分に伝わってくるのですが、後に別の分野で十分に報われ、現在の地位を築いていることを知ってしまっているので、意地悪にも「贅沢な悩み」と感じてしまったのは事実です。これは、私の年齢や人生観からくる「悪口」「妬み」という類の感情の表出かもしれません。

「選ばれない」ことが殆ど

実際、これまでの人生で「選ばれない」という経験が全く無い人は、かなりの少数派だと思います。誰しも、悔しい思い、寂しい思い、虚しい思い、をした経験を、昇華して乗り越えたり、忘却の彼方に葬り去ったり、現在も抱えて思い悩んだり、しているだろう、と想像します。

私にも、当然ながら「選ばれなかった」経験は無数にあります。素直に受け容れて糧にしたり、時に強引に論理を積み上げて無理矢理納得させたり、屈辱・恥辱を感じて立ち直るまでに数年を要したり、してきました。自分が最低限と考えていた自己承認欲求すら無視・否定された経験は、とうに振り切ったつもりでいても、時々苦い体験としてフラッシュバックしてきます。その負の感情は、振りほどこうとしても、しつこくまとわりついてきます。浮上した負の感情に囚われた状態から脱け出すには、今も時間がかかります。

本書は、私の感じていた負の感情を言語化してくれたような気がします。

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