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【通信販売・私論】通販は手紙のビジネスである

通信販売とは何ぞや?そんな大それたことを書くわけではありませんが、社会人となって30年以上通信販売会社に勤務し、商品開発をし、広告制作を行い、フルフィルメントを構築し、通販会社の経営者としても経営戦略、人材育成、組織開発を行ってきた経験はありますので、私なりの私論を少し認めてみようと思います。

通信販売は手紙のビジネスである

まず初めに、私個人の見解を述べると、
通信販売とは手紙のビジネスである。
ということになります。

通信販売(以下通販と書きます)は、言葉で伝えることで消費者に興味をもっていただき
そして購入したいと思っていただくことで成り立っています。

もちろんどんな商売でも言葉使っていますし、
確かにその通りではあります。

しかし通販では、
買い手の思いや悩み、希望、夢は何かという想像を働かせて、
その思いに寄り添い、商品の機能だけでなく買い手の心理や情緒にも思いをはせながら、
言葉を紡いで文字で伝えます。
私の中では、これはまさに手紙を書くという事と、とても近しい思考にあると思っているのです。

そして、本当は言葉だけでもよいのですが、
それだけではどうしても伝えきれないかもしれない、
そう思って、写真や図画もいれてみる。
本当は全部読んで欲しいけど、忙しくて時間がないかもしれない。
だから、どうしても読んで欲しいところは大きく書いて見出しにしてみる。
こうした工夫がいわゆる通販広告となっていきます。

テレビ通販は文字ではなく映像となりますが、
それでも作っていく思考は手紙を書くことと同じで、
それは文字ではなく、敢えて言えばビデオレターのような感覚で作っていきます。
私の私論ではありますが、
こうした考えから、
私は通販を手紙のビジネスと考えているのです。

ラブレターは自分自身を売り込むセールスレター

ちょっと視点を変えてみます。
今時ラブレターというものが現実に存在しているのかは分かりませんが、
その意味合いはご理解いただけるものとして綴っていきます。

ラブレターは、思いを寄せる人に自分の思いを伝える方法のひとつです。
ラブレターを書くことの最終的なゴールとしては、
やはり自分を相手に理解してもらって、自分という人間の良いところをアピールし、
相手にとっても自分という人間が価値あるものとして存在していることを認めてもらい、
他の誰でもなく、自分という人を特別な人として選んでもらうというところにあると私は思っています。
(違うという人もいるかもしれませんが、私はそう考えているということで)

私を選んでもらうために、自分の思いの強さをアピールすることになりますが、
相手の好みや価値観とどこか一致しないと選ばれることは難しくなります。
相手(読み手)が全く興味が持てず、なんら関心がないこと、下手したら嫌いなこと、嫌なことばかりをアピールしたのでは通じることは相当難しい。

自分の思いの強さ、自分視点での自分のよさばかりを一方的に書いても、
フラれるのがオチです。
強い情熱に心打たれるというケースもあるかと思いますが、
時に情熱は重さや煩わしさにもなり得ますから、やはり注意が必要。

そういう意味で、相手の視点からもわかる自分の良さを上手く選択して、相手の好みに響くような言葉や表現を駆使するほうがよいと思われます。

これって通販を経験したことのある人なら思い当たりませんか?
この商品はこんなに素晴らしい、こんなに便利だということを、
情熱いっぱいに広告で書き表して、
さあ、どうだ!と意気込んで販売してみると、
ちっともレスポンスが来ないという経験ととても似ていると思いませんか?

心で情熱を燃やしながらも、
一歩引いて冷静になって、読み進む相手の心理を想像して押し引きしながら商品の良さが伝わるように制作した広告の方が成功率が上がる。
私自身や同業さんの話からも、通販あるある話として盛り上がるので、
首肯いただける方も結構多いはずだと思います。

手紙の筆力を高めるには?

実際に、何かの商品の広告を作る際に
まず手紙から書き始めるという流れで作ることが何度もありました。
ダイレクトメールで販売する場合は、必ず手紙(業界ではレターということが多い)を入れるので、そのまま使うことができるということもあります。
一方、新聞広告やチラシなどはレターをいれることはありませんが、
それでもまずレターから書いてみるということもありました。
レターを書くことで、何をどう伝えるとよいかが整理できますし、
手紙として書いてみると結果としてよい言葉、表現が出てくることが多い気がしていたからです。

この手法は、原稿づくりに悩む社員にも推奨していました。
毎回でなくとも、悩んだら一度立ち戻って、まずレターから書いてみる。
書かないにしても、頭で想像するだけでも構成するだけでもいいのです。
ターゲットとなるお客様像が浮かばなければ、それに近しい親戚や知人を想定してみるだけでも、書き始めることはできます。
そこから企画のヒントが生まれるきっかけになればいいのです。

そんな経験から、手紙を書く筆力を高めることで、
通販広告の企画力、通販広告の制作力を高めるトレーニングにも繋げることができる、というのが私の持論となりました。

研修で手紙を書く

私の在籍した通販会社では、毎年新入社員に手紙研修を実施していました。
そしてこの研修は社長である私が自ら講師をつとめて実施していました。
週に1度、2ヶ月間で計7〜8回程、毎回手紙を書いてもらうのです。
実はこの研修でアイスブレイク代わりに最初にする話が、先のラブレターの話だったりします。

プログラムと指導方法についてはノウハウのあるので、ここでは詳しくは触れませんが、
一通り終わる頃には、そこそこのセールスレターが書けるようになります。
「文章書くの苦手なんだよなあ」とか
「私にセールスレターなんて書けるのかしら」
最初はなんとなしに不安を漏らしていた新入社員であっても、
順を追って説明を聞き、実際に何度も書くことでトレーニングが積めます。
文章で誰かに何かを伝えるという経験を積むことは、
セールスレターだけでなく、ビジネス文書だったり、
会話で先輩や上司に何かを伝えるというスキルを磨くことにも活かせます。

正直に言えば、私自身も実際の私生活で手紙を書くことはほぼありません。
もはやメールですらなく、SNS世代の新卒入社の若い方は尚更です。
最近手紙を書いた人は?という質問もしますが、
書いたという人はほぼいません。(でも稀にいます)

そんなこともあり始めた手紙研修ですが、
通販の根本と基礎を学ぶよい研修になっているのではないか、と思っております。
手紙研修を始めた初代新卒入社組からすでに10年以上経ちました。
プログラムは修正を加えつつではありますが、長く続けることで古参組を除く社員全員の共通体験とすることもできました。
これもまた企業文化の熟成に一役立てたのではとも考えております。

通販会社の方はもちろん、
誰かに何かを買っていただく、という商売をしている方も含めて
手紙を書くということの意義と効果を考えてみてはいかがでしょうか?

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