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人事評価制度の作り方と予想外の成果について その1

会社員をしていれば誰でも気になるのが評価制度です。自分の評価がどのような仕組みで上がったり下がったりするのか?その評価結果が給料や昇進、人事にも使われるとなると、関心がないと言う人はいないと思います。今回は評価制度そのものというよりも、どうやって作るといいのか?ということを考えてみたいと思います。

社員が評価制度作りに参加するのはレア?

あるセミナーに参加した時、
私の会社では評価制度の作成、改定には社員が参加している事を話したら、
大手企業に勤務される方が大変驚かれました。
評価制度は人事部門と役員で作るもので、社員が関わることはあり得ないからだそうです。
ご自身も「一度くらいは参加してみたかった」なんてお話もされていました。

それを聞いた私は逆に驚きましたが、
「そりゃそうか。その為の専門部署や専門の人材もいるわけだしなあ」
なんて感想を持ちました。

なぜ社員と一緒に作ることにしたのか?

私の会社で社員に参加してもらったのは、
専門の人がいなかったからです。
社労士さんやコンサルタント会社に丸投げという手もあったのですが、
結構費用が掛かります。
だがしかし、
そんな予算はない!

となると私一人で作らなきゃなりません。
しかし評価制度に完璧なものはありません。
どう作ったって文句や不満はでるだろうことは予測できます。
そんな制度を私一人で作ったら、
文句や不満はすべて私に向けられるわけで、
そんな状況に耐えられる強い心を持っていない私が考えた手が、
社員と一緒にプロジェクトを立ち上げて作るという事だったわけです。

長期的なビジョンに立ったものではなく、
私自身の目先のメンタル優先の選択でした。

メンバー集めはどうしたか?

まずはメンバー集めです。
仮にすべてを私が指名した場合、
社員が感じるのは、
「なぜ常務はあの人を指名したのか?何か裏があるのでは?」
となるかなと考えました。
まずは立候補による公募制にしよう。
もし立候補者がいなければ仕方ないので私が選ぶという流れです。
私が選ぶにしても、
部署や勤続年数、年齢層などのバランスを考慮するとしました。
これなら勘ぐられたとしてもそれほどの影響はないだろうとの判断です。

一貫して面倒を避けたがる思考パターンです。

で公募を実施したところ
立候補者はゼロでした。
社員にしても面倒くさそうな仕事が増えるだけですから、
ある意味予想通りでしたが。

じゃあ、私が指名するかとなったわけですが、
特段当てがあったわけでもありません。
社内を見渡してみても、評価制度を作った経験のある人はいません。
前職で店長をしていたことから、評価した経験のある人とか、
何か文句じゃなくて意見があると私に直接意見を言ってくる人を多めに選んだところはありました。
出来た後に意見を言われるなら、
作っている時に意見を言ってもらった方がいいかな、という理由です。

プロジェクトスタート!

そんなこんなで私を含めた5名のメンバーが集まりました。
ちなみに当時の社員は常務の私を含めれば16人。
ほぼ1/3の人員によるビッグプロジェクトです(笑)

さていよいよスタートです。
プロジェクトを進めて行く上で事前に私の方で決めごとを作りました。

会議は過半数の参加者が出席できなければ不成立とする。
議事録は持ち回りで作成し、社員全員に公開する(社労士さんにも共有)。
当年末の完成を目指す(スタートは1月でした)。

通常業務に加えての業務となると、どうしても通常の営業業務が優先となります。
かといって
出席を強制するという言い方はあまりしたくない。
そこで欠席者が多い場合、
一部のメンバーで決まっていくのはよろしくないからとしました。
実際には欠席者が出ることはありませんでしたが。

最初のキックオフの時は薦めてくれた社労士さんにも参加してもらいました。
作る心得や一般的な注意点などを話してもらいました。
その後も参加可能な時は同席いただき助言をいただきました。
これは、何か意見や疑問が生じた際に、
社労士さんにホットラインの制度を設けていたことから、
制度の内容と決定の経緯を共有しておいた方がよいだろうという理由です。

何とかして運用後の不満が私にぶつからないようにしていたかが伺えますね。

ここでひとつ注釈をつけておくと
このプロジェクトで作るのは評価制度であって賃金制度とは別でした。
評価制度は社員の評価方法と評価の基準となる目標設定が主となります。
その評価に基づいて賃金をどれくらい払うか、昇給額は?
といった話は賃金制度としていたので、
賃金体系や賃上げとかベースアップとかの議論は行っていません。
これは社労士さんの薦めによって、社労士さんからメンバーに話してもらいました。
ここを一緒に社員としてしまうと、議論が難しくなり何も決まらなくなってしまうからです。
賃金テーブルといった賃金制度については、役員会の決定事項としてあります。

プロジェクト進め方は?

当時の社員はほぼ中途採用でしたので、社員の年齢や経験値、スキルはバラバラでした。
また新卒採用をスタートした年でもあり、
今後も新卒採用を継続していこうと考えていた時期でもありました。

スキルや経験値によって求めるレベルも変わりますし、
目指す目標や評価する基準の難易度も変わらざるを得ません。

経験値やスキルは定量的な判断基準を持っていなかったので、
勤続年数を軸にした等級制度を策定し
等級によって発揮して欲しい能力、その能力に基づいた目標設定を軸にした
評価制度のテンプレートを社労士さんにタタキ台としてご用意いただきました。
それを元に自社の業務に合わせて議論を重ねることとしました。

今でいう積極性や持続性、企画力や業務推進力といったコンピテンシーを設計し、
各コンピテンシーに自社で行う業務で発揮して欲しい具体的な業務内容を記した知識技能を
「要件定義」のようにあてはめて行く流れです。

「要件定義」を進めるために、各部門の業務内容を洗い出してリスト化をメンバーに宿題にして、
メンバーはそれを各部門に持ち帰り、自身の業務で再確認しながら、
他の社員の観察やヒアリングを行ってリスト化して次の会議に持ち寄り皆で議論し確認し合う。
そんな流れを繰り返しながら、
同時に勤続年数や経験値も踏まえて等級のレベル感も煮詰めていきました。

この過程で私や社員の間に評価制度とは違った観点も見え始めてきました。

この話は長くなりそうなので、次回に続きます。


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