見出し画像

縦串と横串 序列と部門間の融和

会社の組織の問題というものを考えたときに、私なりにひとつ感じることがあります。それは人の階層によって生じる縦串の問題と、部門間の対立によって生じる横串の問題です。
振り返ってみて思うことですが、概ねこのふたつの観点から起こっていると思っています。逆に言えば、組織の問題を解決するにあたっては、このふたつの観点に手を着けることで解決の道筋が見えるのではないか、とも思うのです。今日はこのあたりについて振り返ってみたいと思います。

ある架空の事例から考えたこと

改めてこの問題について考えたことには、ひとつのきっかけがありました。
組織変革に関する研修を受ける機会があり、そこで行なうワークショップで出された、とある事例について取り組んだ時のことでした。

そこでの課題とは、ある会社の組織変革に取り組むため、何を問題と認識し、どのような施策をどのような手順で行なっていくか。またその際にどのような点に留意していくか、というようなことをチームで話し合って考えていくといったワークです。

この事例にあがった会社というのは、私の解釈では非常に部門間の連携が取れていない、ということでした。営業系、製造系、事務系、経営企画とそれぞれの部署があるわけですが、会社が抱える課題について、それぞれが自分の部署のことばかり考えている。問題が生じているのはすべて他部署がちゃんとしないからである、と認識しているからです。

そしてその解決についても、他部署が考えるべきことで自分たちには非はないというスタンスでもあります。さらに言うと、経営トップもその点について言及していないのです。

ケーススタディのための架空の会社の話しなので、ある程度分かりやすい構図にするといった理由もあったとは思います。

「ずいぶんと仲の悪い会社ですね。部署間でもっと情報共有るするとか、歩み寄るとかできないのかなあ」

私の口からはそんな感想が漏れていきます。

他のメンバーもその点については同意してくれたのですが、ひとつ異なる認識がありました。

「でも、普通はこんなもんですよね」
「他部署のことを考えて仕事をするなんて、ほぼないですよね」

といった反応です。

やっぱりそれが現実なのか…というのが、私の感じたことでした。

他のメンバーは大きな会社に属する人たちというのもあったかもしれません。組織が大きければ、それだけ他部署のことに関与することはなくなるものです。一方で私は総勢数十人の中小、いや、零細企業ですから見ている世界が違っていたのだなあと、改めて再認識した次第です。また社長をやっていたこともあり、現場の本音の感覚ということにも鈍くなっていたという側面もあるかもしれません。

なるほど。私はやはり「お花畑経営者」だったのか、なんて自覚させられた場面でした。
※お花畑経営についての記事はこちらから

部門間連携について思うこと

部門間の格差についてはこのnoteでも何度か書いてきました。

私はこの部門間格差の問題に私が強く着目していました。
なぜ、そこを気にしていたのか?

それは私にとって、会社の空気が悪くなるのが嫌だから、という思いが強いからなのです。
ではなぜ嫌なのか?と問われたら、
第一には私自身の居心地が悪くなるからという理由です。
言い換えれば私の個人的な性質に起因するものです。

もうひとつあります。
それは「仕事は楽しんでしている人が最強」という考え方によるものです。
これは私の個人的な好みに起因するものですが、仕事で上手く行く人を見ていると概ねその傾向が強そうだという経験則にも基づいています。

そこで社員が楽しんで仕事ができる環境づくりとして、人と人との対立、特に感情的な対立が起こりにくい空気にしようと考えました。
何かの失敗やトラブルを他人のせいにしている言葉は、あまり聞きたくないものです。仮に事実としてその通りだったとしても、私はやはりいい気持ちはしません。それはそれとして、次にどうしたらいいかを前向きに考える言葉を聞きたいし、自分もそうありたいと思っています。

そんなわけで、部門間の連携、ひいては人と人との連携をどのようにしたら良くできるか、について特に力を入れてきたのです。

階層、または縦串について

一般的には組織には上下の階層があります。もっとも最近では階層や序列をなくした組織開発論も増えてきたので、一概には言えなくなっているのも確かではあります。とは言え、そうした組織が一般的という段階にはまだ至ってないというのが私の認識です。また階層の有無については、それぞれにメリットデメリットがあるので、一概にどちらが正しいという認識は持っていません。その会社、そこの人たちにとって働きやすい、成果が上がりやすい方を選択すればよいというのが私の基本的な考え方です。

私が行なってきた経営においては階層は存在しました。いわゆるピラミッド型のよくある仕組みです。ただし一方的な上意下達ではなく、ボトムアップとトップダウンのハイブリッド的な感じでした。アイデアはボトムアップ、議論はフラットに、そして決定はトップダウンという感じでしょうか。決定はトップダウンですが、その内容は多くのボトムアップから上がったものから皆で選択したり、時に組み合わせて皆で決定し、その最終判断をトップの責任で行なうという感じです。ですから私が出したアイデアや意見も、フラットな議論の過程で皆から却下されることも普通にありました(と私は感じていました)。

私の意見が社員たちから採用されないことに、私自身の複雑な思いがあったことは否定はしませんが、他にもっといい意見があればシンプルにそちらを採用するだけの話です。たまにわざと「いじける」ような素振りをすることもありましたが、それはご愛嬌です(のつもりでした)。

もちろん大事な決定や、時にザ・トップダウンを行なうこともあるにはありましたが、それは経営判断として必要なことでもあるわけです。その分、出来る限り丁寧な説明を行なうことで、理解を得られるような努力はしたつもりです。

なぜそうしているのかの意図を幹部には話していました。組織の編成上はピラミッド型にしても、議論はフラットに、誰が提案したかよりも、何を提案したかを大事にして、会社の風通し、部署内の風通しを良くしていこうという狙いは幹部には共有しておく必要があるからです。

実際に私の意見が幹部社員に覆されることも普通にあるわけです。それを普通にする以上は、幹部もまた部下たちからのよい意見に対して、幹部自身の意見が覆されることも良しとしなくては筋が通りません。そして同様の構図はさらにまた現場の先輩後輩間の議論にも引き継がれて、最終的には社風として定着させていくことを狙っていました。
この何年にも亘っての日々の地味で地道な取組みの継続が、ポジティブな縦串となって部署ごとの強みを活かしつつ、風通しのよさにも繋がっていったのではないかと思っています。

部門間、または横串について

組織の縦割りが行き過ぎると部門間の連携に悪影響を与えます。冷静且つポジティブな緊張関係は時には必要ではありますが、小さい会社にとっては横の連携は非常に大事な組織作りとなります。
組織論としてはマトリクス型組織というのもありますが、数十人の会社でそこまでかっちりとやるのも難しい。縦の権限と横の権限が両立するということは、逆に言えば対立要素が増えますので、私としては居心地が実に悪くなりそうというのもありました。

そこで行なったのが、対話(ダイアログ)でした。
対話についてはこちらの記事に詳しくあります。

この対話の時間のメンバー割が横串になるように構成したのです。
その際に行なったのは、メンバーの年次構成を同世代になるようにしたことです。部署毎の代表者という建付けではなく、近い2〜3世代で集まってもらうことで、その場の話しやすさを大事にすることでした。
世代、或いは職位が異なると対話が上手く進まないことは多々あります。いわゆる心理的安全性が得られない場になることが予想されます。

同一性の高い年次同士でざっくばらんに話せることで、仕事をしていて嬉しかったこと、楽しかったこと、逆に辛かったこと、悲しかったことなどを対話で話し合えるといい関係性が作れていきます。また、実はごめんなさいと思っていたことや、良かれと思ってやったことだったんだけど、なんて話も出来ると、他部署の仕事の大変さや腕の見せ所などが共有されて、後々の部署間の連携に繋がっていきます。

しかし横串だけで完結してしまうと、そこで得られたことが世代間内で小さく収まってしまうだけの可能性もあり得る。それを解消するために、一定期間が過ぎたら今度は部署ごとの縦串で対話を行ない、それぞれの職位の横串で集まった連携に関する情報を部署内で共有して、今度は部署全体として他部署とどのような連携を取っていくかを考えてみると、組織全体の連携に繋がっていくのではないかと考え、実行していました。

これも一回りで終わらせることなく、何度も繰り返し行なうことが大事だと思っています。

組織の変革とは、シンボリックな取組みも必要ですが、実際にはこうした地味で地道な対話を時間をかけて繰り返していくことこそが本当に大切なのだと、私は考えています。

そしてこのような地道で地道な取組みだからこそ、トップが陰に日向に率先して進めていくことが大事だと思うわけです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?