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【5月20日】米経済は絶好調➡好調

先週の市場の振り返り

13日からの週では、ドル売りが優勢となり、ドル円の変動性が高まった。特に米国の経済指標発表に対して市場は神経質な反応を示した。米生産者物価指数(PPI)や消費者物価指数(CPI)、小売売上高、さらには新規失業保険申請件数、輸入物価、鉱工業生産などの一連の米経済統計が発表された。

PPIとCPIは予想から大きく乖離することはなく、わずかな差異に留まりましたが、これにより市場では「インフレは完全には抑えられていないが、大局的には鈍化している」という見解と、「米国経済がやや減速している」という不安が共存。
これに伴い、米連邦公開市場委員会(FOMC)の9月利下げ観測が広がり、米国債利回りの低下とともにドルが下落した。ドル円は156円台から153円台まで下げたが、その後はドル売りは一服。

米長期金利の下落

週末の米経済統計では、輸入物価・輸出物価が予想を上回る結果となり、前回悪化していた新規失業保険申請件数もやや改善した。また、リッチモンド連銀のバーキン総裁やクリーブランド連銀のメスター総裁からは利下げに慎重な姿勢が示され、ドルの買い戻しが誘発された。週末の東京市場では、ドル円は156円目前の水準まで買い戻された。

現時点までに発表されている米国の経済指標や企業決算におけるCEOたちのコメントを考慮すると、米国経済に対して過度に悲観的になるのは行き過ぎであり、経済はその水準と方向性の両方から捉えるべきなので、現在は「絶好調から好調」にシフトしている状況であり、方向性がやや失速している可能性がある程度だと認識している。

米利下げ観測は年二回

しかし、現在の景気減速気味から悪化への転換は突然起こるかもしれないので注意はしておく。

ユーロドルなどのドルストレートでは、総じてドル売りに押される展開となり、ドル指数は4月10日以来の低水準にまで低下する場面も見られた。ユーロドルは1.08台後半、ポンドドルは1.26台後半まで水準を上げた。

これまでの指標結果

米国

CPI

全体のインフレ率:前年同月比で3.4%となり、前月の3.5%からやや減速

総合:前月比 +0.4% → 同 +0.3%
コア:同 +0.4% → 同 +0.3%

コア内訳

新車:同 -0.2% → 同 -0.4%
中古車:同 -1.1% → 同 -1.4%
財:同 -0.2% → 同 -0.1%
サービス:同 +0.5% → 同 +0.4%
帰属家賃:同 +0.4% → 同 +0.4%
自動車保険:同 +2.6% → 同 +1.8%

米連邦準備制度理事会が重視する「住居費を除くコアサービス」
同 +0.65% → 同 +0.42%

詳細【英語表記】

小売売上高

前月比横ばい:前回同 +0.6% から減速
GDP算出に用いられるコントロール・グループ:同 -0.3%(前回同 +1.0%)
ガソリンスタンド:同 +2.1% → 同 +3.1%
自動車:同 -0.3% → 同 -0.8%
家具:同 -2.3% → 同 -0.5%

アトランタ連銀のGDPNow(16日時点)

4-6月期実質GDP成長率:前期比年率 +3.6%(従前の同 +4.2%から下方修正)
2%物価目標への道筋は未だ不明
FRBは当面、経過観察を続ける見込み

日本

1-3月期実質GDP成長率(速報値):前期比年率 -2.0%(2四半期ぶりのマイナス、予想下回る)

自動車生産・出荷停止の影響

個人消費:前期比年率寄与度 -1.5%
純輸出:同 -1.4%
設備投資:同 -0.5%
住宅投資:同 -0.4%

春闘後の高い賃金決定と実質所得の改善が期待
自動車生産の正常化も回復に寄与する見込み

英国

1-3月期実質GDP成長率

前期比 +0.6%(23年10-12月期の同 -0.3%から3四半期ぶりのプラス成長、予想上回る)
サービス:前期比寄与度 -0.11% → 同 +0.58%
財生産:同 -0.14% → 同 +0.10%

雇用統計

1-3月期の失業率:4.3%(23年5-7月期の水準)
求人件数:89.8万件(コロナ禍前の19年10-12月期:81.0万件に近付く)
名目賃金(除く賞与):前年同期比 +6.0%で横ばい
実質賃金:同 +1.9% → 同 +2.0%(10ヵ月連続プラス)

来週の注目材料


米FOMC議事要旨およびFOMC関係者発言

来週の注目材料の一つとして、米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨の公表がある。これは、4月30日から5月1日にかけて行われたFOMC会合の議事要旨で、5月22日(日本時間23日午前3時)に公開。

今回の会合では、市場予想通り政策金利の据え置きが決定されたが、声明文ではインフレに対する警戒感が強調された。「インフレ率はここ1年で緩和したが、依然高止まりしている」という昨年12月からの文言に加え、「ここ数か月、委員会が目指す2%の目標に向けたさらなる進展は見られなかった」との表現が追加された。

FOMC後の記者会見で、パウエル議長は「今年はこれまでのところ目標に向けた確信を深められるようなデータは得られていない」「確信を強めるまでには従来の想定よりも時間がかかりそう」と発言しつつ、「次の動きが利上げとなる可能性は低い」とも述べ、市場の過度な期待を抑えた。

しかし、FOMC後のFRB関係者の発言を見ると、ややタカ派な意見が優勢に見えた。議事要旨では、どのような議論が交わされたのか、今後の金融政策動向を予測する上で重要な手がかりとなるとおもわれる。

また、来週はFOMCメンバーの発言が相次ぐので注目。特に注目されるのは以下の発言となる:

  • 20日(現地時間19日):パウエルFRB議長がジョージタウン大学の卒業式で講演

  • 20日:ボスティック・アトランタ連銀総裁、バーFRB副議長の発言

  • 21日:バーキン・リッチモンド連銀総裁、ウォラーFRB理事、ウィリアムズNY連銀総裁、ボスティック総裁、コリンズ・ボストン連銀総裁、メスター・クリーブランド連銀総裁によるパネルディスカッション

  • 22日:グールズビー・シカゴ連銀総裁の発言

  • 23日:ボスティック総裁の発言

  • 24日:ウォラー理事の発言

21日午後10時からのウォラー理事の講演と、22日午前8時(現地時間21日)のアトランタ連銀による金融カンファレンスでのパネルディスカッションは必ず押さえておきたい。ウォラー理事はタカ派で知られており、利下げに慎重な姿勢を示している。

イギリスの4月CPI発表

5月22日(水)にはイギリスの4月消費者物価指数(CPI)が発表される予定だ。これにより、6月の利下げ観測が現実味を帯びるかどうかが決まる。昨年4月には電気ガス代が55%値上げされたが、今年のCPI計算ではその影響が消えるため、CPIがインフレ目標である2%に近づく可能性がある。

ただし、最低賃金の引き上げなどの要因で、インフレが予想ほど下がらないリスクもある。ポンド取引においては、このCPI発表が重要な材料であり、6月利下げ観測が強まった分、予想以上になってしまうとポンド買いが進みそうだ。いずれにしろ、4月CPI次第で、6月利下げ観測が大きく盛り上がるのでポンドを取引する際には注意が必要。

5月PMI速報値発表

5月23日(木)には、フランス、ドイツ、ユーロ圏、イギリス、アメリカの購買担当者景気指数(PMI)速報値が発表される。特に、アメリカのPMI速報値は9月利下げの織り込み度を左右する重要な指標となる。

市場の見通し

先週の米CPIと小売売上高の発表を受け、ドルと長期金利が下がったが、ドル高トレンドの終焉については時間がかかりそうだと思われる。

円の弱さは継続しており、6月利下げ観測のユーロやポンド、経済指標から減速がみられる米国の指標発表から強い結果がみられると、クロス円で円ショートにぶつけてみたい。

※本記事は投資助言に関するものではございません。投資判断は自己責任の上お願いいたします。

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