見出し画像

読書記録104 千早茜「男ともだち」

かなりご無沙汰です。失職しました。暇なので投稿してみます。

・男女の曖昧な繋がりを描く千早茜氏の「男ともだち」

千早茜氏の「男ともだち」は、一言で表現するならば「鮮烈」そのものです。物語全体を通して、登場人物たちの内面の揺れ動きや、男女間の微妙な関係性が見事に描かれています。これほどまでに緻密でリアルに人間関係を描いた作品には、なかなか出会えないと思います。

主人公の神名葵は29歳のイラストレーターで、関係が冷めた恋人彰人と同棲しながら、身勝手な愛人である医者の真司との逢瀬を重ねます。仕事面では順調な葵ですが、内心では自分が本当に描きたかったものを見失っていると感じています。 そんな葵のもとに、7年ぶりに再会する大学の先輩・ハセオから連絡が入ります。彼との再会をきっかけに、葵の生活には新たな変化が訪れ…それからの葵とハセオの関係は、友人以上恋人未満という微妙な状態で関係がリスタートします。


・感想


この「友人以上恋人未満」の曖昧な関係性が、僕には新鮮であり、一方で難解でもありました。恋愛関係にはっきりとした定義を持つ僕には、この曖昧な関係が理解しきれませんでした。しかし、その難解さがまた魅力的で、読者として物語に引き込まれる一因になっています。

また、神名葵の行動や感情については、正直に言って彼女がふしだらな女性という印象を受けました。彼女は自分の感情や欲望に従い、周囲の人々を混乱させています。しかし、それが物語を非常に生々しく、リアルにしています。 物語全体としては、その緻密な人間描写や、複雑な人間関係が描かれている点が非常に魅力的で、僕は大変面白く読むことができました。

そして千早茜氏の筆力には感服するばかりです。彼女は神名葵の複雑な心情や、曖昧な関係性を見事に表現しています。 千早茜氏の「男ともだち」は、単なる恋愛小説を超えた、人間関係の核心を描き出す作品です。読者に深い思索を促し、感情の揺れ動きや人間の複雑さを鮮やかに描き出しています。一読者として、感動と共に多くの考えを巡らせることができました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?