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【俳句】青写真 # シロクマ文芸部

青写真父の機嫌の良き日には

歳時記では、「青写真」=「日光写真」で冬の季語となっている。

半透明の種紙を感光紙の上に置き、日光に当てて焼き付けたもの。種紙には、その時代のヒーローや芸能人などが描かれた。子どもの遊びである。◆寒い季節の太陽の光のありがたさゆえ、季語になったか。

「俳句歳時記 冬」角川書店編

日に当てておくと、鉄腕アトムや鉄人28号の姿が浮かび上がってくる。
今から思えば、他愛もない遊びだ。

日光写真もそうだが、蝋燭の火で動くブリキのポンポン船、竹ひごを蝋燭の火で曲げ紙を貼り付けて作るグライダー、マブチモーターのプラモデル、凧上げ、コマ回し、それらを最初に教えてくれたのは父であった。
だから、その頃、父という存在は子供に対して威厳があった。
僕の父も、決して厳格ではないが、休みの日には父が起きるまでは静かに遊ばされた。
友だちの家に行っても、
「今お父ちゃん寝てるから、外で遊ぼ」
そんなこともよくあった。

でも、今はどうだろうか。
僕の娘にも、プレイステーションなどのゲーム機を買い与えた。
しかし、それを覚えるのは娘の方が遥かに早い。
僕だってそんなものに疎いわけではなかったが、それでもかなわない。
いつも間にか、いっしょに遊ぼうとしても、
「お父さん下手やから面白くない」
どこに親の威厳がある。
僕が教えたのは、せいぜい自転車を補助輪なしで乗ることくらいだ。
もう三十を超えている娘の時でさえこれだ。
今は推して知るべし。

もっとも、父親の威厳など、多様性の渦の中に飲み込まれてしまったのかもしれないけど。


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