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【俳句】雛の間 古雛 雛の段〜碧 萃生

小暗きをみな足早にひいなの間

歳月を一身に受け古雛ふるびいな

空箱をいくつ重ねて雛の段

母の実家(と言っても、祖母の再婚相手で母の実父ではない)は、福岡県田川市であった。
炭鉱で羽ぶりがよかったのであろう、大きな家で広い庭に池もあった。
幼い頃には、母に連れられて何度が訪れていたが、その中に雛祭りの時期もあったのだろう。
五段か七段の立派な雛人形が飾られていた。
しかし、何故か、飾られるのはいくつもある部屋の中の、人気のない薄暗い部屋。
薄暗い部屋に人形は、ホラーの黄金コンビだ。
当時、泊まりに来ていた子供はいとこも含めて何人かいたが、その部屋に行くことは、子供にとって立派な肝試しだった。
親からも、あの部屋怖いという話が漏れ聞こえてきた。

その雛人形は、その後我が家にやって来た。
妹が小学生の間くらいは、毎年飾っていだのだけれども、どこかでその段が壊れたか失われたのだろう。
母は箱を積み重ねたり、本や雑誌を重ねたりしながら苦労して段を作っていた。

その雛人形、多分妹は結婚の時に持って行ってはいないだろうから、実家の納戸にもう何十年も眠ったままのはずだ。
手入れもされず、歳月を一身に帯びて。

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