見出し画像

片棒担ぎは誰だ〜ジャニーズ事務所の記者会見に思う

最初にお断りしておくが、ジャニーズ事務所に所属する個々のタレントを貶める意図はまったくない。

昨日、ジャニーズ事務所の記者会見が行われた。
東山紀之新社長のもと、当面は社名をそのままに、再出発をはかるという。

僕は、この事件は、単なる失敗や不始末ではなく、ジャニー喜多川という稀代の性犯罪者をジャニーズ事務所が匿い続けた組織的犯罪だと思っている。
そして、その片棒を担ぎ続けたのがマスコミであると。 

ハーヴェイ・ワインスタイン事件

数日前に、Amazonプライムで配信されている「SHE SAID その名を暴け」という映画を見た。
これは、#MeToo運動のきっかけとなった、ハーヴェイ・ワインスタイン事件を扱った映画である。
2017年、ニューヨーク・タイムズの記者、ジョディ・カンターとミーガン・トゥーイーは、性的虐待疑惑のあった映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインによる数十年に及ぶセクシャルハラスメントを告発する記事を発表した。
この記事をきっかけに、世界的な#MeToo運動が起こる。
映画では、2人の記者のそれまで取材における戦い、また被害者の実名での掲載を受け入れるまでの苦悩が描かれている。
この告発により、ワインスタインは、ニューヨークとロサンゼルスで、合計39年の禁固刑を言い渡された。
現在71歳のワインスタインは、生涯を刑務所で終えることになるだろう。

ハーヴェイ・ワインスタインは、数々の名作映画を世に送り出した名プロデューサーだ。
その作品の半数以上は僕も見ている。
しかし、だからと言って、犯罪が許されるわけではない。

当時、この報道を、日本のマスコミはどのような思いで見ていたのだろうか。
僕は、ジャニー事件の被害者の救済には、マスコミも一緒に取り組むべきだと思っている。

性犯罪よりも不倫に厳しい日本と、アメリカのミーガン法、ジェシカ法

この国は、犯罪でもない、一家庭内の問題に過ぎない不倫には、あんなに厳しいのに、性犯罪に対しては、こんなにもおおらか?なのだ。
アメリカでは、性犯罪者が社会復帰した時に、その居住地の近隣住民や学校などに、その人物に関する情報を公開できる、ミーガン法がある。
また、12歳未満の子どもに対して性犯罪を犯した人物に対し、強制終身刑や生涯にわたってGPS装置による監視などを課せられる、ジェシカ法も存在する。
性犯罪に対する彼我の意識の違いは明らかだ。

ジミー・サビル事件

また、今回の事件に関して、加害者はもう亡くなっているので、と言う意見も聞く。
かつて、イギリスに、ジミー・サビルという人気司会者がいた。
彼が亡くなってから、彼の性加害についての告発が相次いだ。
このあたりは、ジャニー事件と同じだ。
BBCはこの事件に関するドキュメンタリーを放送。
200件以上の児童に対する性犯罪が明らかになった。
これに対し、ロンドン警視庁は素早く捜査を開始した。
そして、「イギリスで最も多くの罪を犯した性犯罪者のうちの1人である」と結論づけた。
もちろん、加害者が亡くなっているために、起訴という手段を取ることはできないが、「被害者への社会正義」という信念の元に行われた捜査は、被害者にとっては大きな救いになったのではないだろうか。
同じことを我が国でもと期待はしたいが、性犯罪に時効のないイギリスとは違い、日本では時効の壁が立ちはだかる。

マスコミの情報操作

「報道の自由」とよく言われる。
僕は、これを取材対象からの指図を受けないことの自由だと思っていた。
どうやら、違ったようだ。
これは、マスコミが報道をするかどうかの自由であったようだ。
そして、その自由を主張する相手は、取材対象ではなく、国民であった。
つまり、日本のマスコミは、国民に知らせるかどうかの自由を持っていると言う意味であったらしい。

中国での情報操作を僕たちは批判するが、僕たちだって、既に情報操作されていたわけだ。
ジャニー喜多川は、素晴らしい人間である。
彼が率いるジャニーズ事務所は、素晴らしい芸能事務所である。
そう、信じさせられてきたのだ。
つまり、日本のマスコミは、あの大本営発表を、自ら行なってきた。
僕たちが情報操作されているのは、このことだけなのだろうか。

吉本闇営業スキャンダル

かつて、吉本興業の闇営業スキャンダルがあった。
いく人かのタレントが、会社を通さずに営業しただけでなく、その営業先が反社組織や詐欺グループであった。
中には、営業先がそのような組織であるとは知らなかった者もいたようだが、それには関係なく、タレントは解雇、もしくは謹慎の処分を受けた。
今回のジャニー事件は、マスコミは、ジャニーズ事務所がジャニー喜多川と言う性犯罪者が率いる組織であることを認識していながら、取引を続け、そこに多額のお金を落としていたのだ。
闇営業のタレントよりも、よほど悪質だと僕は思うのだが、どこからも、そのような意味での反省は聞こえてこない。

タレントに罪はない

今回の事件を受けて、各テレビ局は今のところジャニーズ事務所との契約を打ち切る予定は無さそうだ。
常識的には、たとえ生まれ変わるとは言え、これまで犯罪者の組織だった事務所との契約を継続するという選択肢があるのが不思議だ。
もちろん、個々のタレントに罪はない。
だから、彼らとは、必ずこれからも起用するけども、事務所だけは変わってねと、話を進めるのがいちばんいいのではと思っている。
まあ、その辺の契約がどうなっているのか、間に何かいろいろ絡んでいるのかは知らないけれど。

法改正までを

今回の事件は、いち性犯罪者と組織の事件で終わらせては意味がない。
日本全体で今後、性犯罪に対してどのように取り組んでいくのかを考えなくてはならないと思う。
国民の意識、マスコミの報道、法改正などを含めて。
でなければ、申し訳ないが、女性に対するセクハラ事件も無くなることはないだろう。

僕も片棒担ぎ

今日、職場でこの事件が話題になった時に、
「あんなん、こっちも男なんやから、逃げられへんかったんかなあ。結局、売れへんかったやつが言うてるだけやろ」
こんなことを言う人がいた。
僕は、
「いえ、それは違いますよ。逃げられる逃げられないの問題ではなく、ジャニー喜多川がそのような行為に及んだことが問題なんです。今売れている人の中にも被害者はいるかもしれません。ただ、彼らはその立場から声をあげられないことも理解するべきです」
こう、答えるべきだった。
しかし、僕は、
「うーん、どうでしょう」
と長嶋茂雄のモノマネみたいな返事しかできなかった。
僕も、結局は犯罪の片棒担ぎなのだろうか。







この記事が参加している募集

最近の学び

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?