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鬼が笑いまくる

来年のことを言うと鬼が笑う。
昔からある諺だ。

明日のこともわからない人間に、来年のことなどわかるはずもない。
そんな予測できない来年のことをあれこれ言っていると、普段は笑わない鬼でさえ、あまりにおかしくて笑ってしまう。

鬼が笑ってしまうのだから、あの笑わない男もきっと笑う。

翻って、そんな先のことをとやかく言うよりも、今日をしっかり生きよということなのかもしれない。

それでも、僕たちは来年のことを考える。
来年の手帳や日記を買った時点で、あれこれと考え始める。
予定を立てる。

しかし、来年のこと、先のことを考えるのは、多分、人間だけではないだろうか。
いかに我が子と同じように育てた犬や猫でも、来年のことを考えるとは思えない。
冬眠に入る前の熊が、目覚めた時には餌があるだろうかなどという心配は、恐らくしていないだろう。

我々が先のことを考えるようになったのは、農耕民族として定住を始めた頃からではないかと勝手に考えている。
先のことを考えるから、人類は自ら穀物を育て収穫できるようになったのだと思う。

であれば、大いに考えればいいじゃないか。
それこそ我々の本来の姿なのだ。
それに、来年のことを考えるからこそ、来年もあるのだ。
考えない犬や猫には、来年も存在しない。

いっぱい考えて、上手く行かなかったり、取り越し苦労だったりした時には、鬼と一緒に笑い飛ばせばいい。

ふと見ると、妻がカレンダーのコピーを持っている。
「それ何?」
「わたしの休みの予定、一年間の」
「来年の?」
「違う、再来年の」
鬼は笑いまくっているに違いない。

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