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【クルスタSS】膝の上のマム【マハムート誕生日記念】

※今回はクロト視点です


とある日の生徒会室での出来事。
「あの…マム…」
「会長、仕事に集中できてないわよ? 私の事は気にせず続けなさい」
今、何故かマムが膝の上に座っている。そしてそのまま生徒会室で作業をしている最中なのである。
「どうしてこうなったんだ…」




それは、つい数十分前の事…。
「誕生日おめでとうございます、マム」
「ありがとう、会長」
今日はマム、改め妃竜院マハムートの誕生日だ。生徒会室に向おうとしていた所で偶然出会ったため、俺は挨拶も兼ねて誕生日のお祝いをした。
「今日の夜って誕生日パーティーがあるって聞いてますけど…」
「そうね。別に学園側で決めているわけではないんだけど、皆が勝手に祝いたいって言ってるのよ」
マムはこの新星学園の学生寮『ラ・ルーナ』の寮長。威厳と寛大さに溢れる彼女に尊敬の念を抱くものは多く、いつの間にか盛大なパーティが催される計画がなされていたらしい。どのような場になるのか、俺も今から楽しみにしていた。
「日頃の感謝の気持ちを形にしたいそうだわ。断る理由もないし、私も快く受け入れたわ」
やれやれと言った態度とは裏腹に、嬉しそうな表情を浮かべるマム。
「マムのおかげで、寮内の治安は維持されていうようなものですからね」
生徒会室を目前にして、俺はふと思った。
「あ、そうだ。俺から何かしてあげられることないですか?」
マムには学園内でもモンスターとの戦いでも、幾度となくお世話になっている。パーティでも会長として日頃の努力を称えるつもりだが、独自で彼女を労ってあげたいと感じたのだ。
「会長に?そうねぇ…」
少し考えた後に、不敵な笑みをこぼした。まさか誕生日だから、とことん訓練に付き合えだなんて言わないよな…?
「どんなことでもしてくれるっていうのなら、提案はあるのだけど」
にこやかな顔の裏に何を考えているのか分からなくて
「無茶なお願いだけはしないでくださいね…」
「少なくとも、訓練の類じゃないから安心しなさい」




そのマムのお願いというのが『生徒会長の膝の上に乗せてほしい』というものだった。
「マムったら、まるで子供になったみたいね。可愛い~♪」
「サーシャ、今は生徒会の職務中よ。言葉を慎みなさい」
「は~い♪」
鋭い指摘にも笑顔で返すサーシャさん。俺から見れば2人とも先輩だけど、同じ3年だから同期なんだよな。互いの距離の近さを感じた。
(会長の膝の上…ちょっと羨ましいかも…)
ふとマトイを見ると、俺の方に視線を合わせていた。マムが座っているとはいっても、彼女の体型が小さいため視界は特にさえぎられていない。流石に手元は、顔をずらさないと見づらいのだが。
「マトイ?どうしたの?」
「な、何でもないです!あはは…」
普段はない状況下に、皆の様子もどこか固い。普段は好き勝手やっているヴィーナスも、今は真面目にデスクに向かっている程だ。サーシャさんだけは、いつも通りといった感じだけど。
(もしかして、俺より会長に適任なんじゃ…)
気落ちしながらも、俺は届けられた資料に目を通していく。
「マムがいると思うと、何だかいつもより身が閉まる気がするわ」
「そうですね。得意の重力操作は、案外心身にも影響を与えるのかも…」
思わず本音を漏らすヴィーナス。
そしてアナ、その発言はまずいと思うぞ。
「私はね、過去にサーシャから会長にならないかと言われたのよ」
「結果的に寮長を選択したけど、会長になる事も頭の中にはあったわ。未練なんてないし、今の立場が私に似合ってると思ってる」
以前サーシャさんが会長だったというのは聞いたことあったが、そうした経緯を聞いたのは初めてだった。先程の思案も間違ってはいなかったようだ。
学園全体を支える会長と、学園の留学生達を束ねる寮長。彼女の性格・風格を考えると、寮長を選択した事も納得がいく。
「だからこそ、一時的でも会長のようなポジションに立ってみたかったのよ。疑似的ではあるけどね」




ふと必要なものが足りないことに気がつき、俺はマムに声を掛けた。
「マム、すみません。ちょっと資料を取りたいので、一旦どいてもらっていいですか?」
「問題ないわ」
マムは指をクイッと動かすと、生き物のように資料がこちらへ向かっていった。そして俺の丁度右手の隣辺りに、束の様に丁寧に資料が重なっていく。
「はい。私がいる限り、ここを移動する必要ないわよ。必要なら私に言いなさい」
「か、感謝します…マム」
これを見て、俺は今日この場から動けないんだなという事を悟った。悟ってしまった。
「それと、会長」
「定期的に私の頭を撫でなさい」
全員が一斉にマムの方を見る。俺もあまりに唐突だったので、頭が混乱し必死に自分を静止させる。
「ええっ!?あの、皆見てますけど…」
「寮長命令よ、撫でなさい」
「はい…」
寮長命令…そう、これは寮長命令なんだ。俺は決してやましい事はしていない。やれと言われたからやっている、ただそれだけなんだ。
ただただ言い聞かせるように、俺は彼女の頭を撫でつつ作業を続けた。
(完全に尻に敷かれてるね…)
(案外、あの場所がお気に入りなのかしら)
(そうねぇ。それに、撫でられてまんざらでもない顔してるわよ?)
(これも引力操作…会長が手のひらで転がされてるようにも感じます)
そんな様子を伺っていた他の4人。もう自分の作業には手が付かず、じーっと俺とマムの様子を伺っている。やめてくれ皆、その視線は俺に効く。
皆の様子に気づいたのか、マムがポロっと言葉を漏らす。
「貴方たちね…一つ言っておくけど」
俺の膝の上で足と腕を組んで、ふんぞり返るような態度を示す。
「どんなことでもしてあげると言ったのは、紛れもない会長なのよ?」
「俺そんなこと言ってませんけど!?」
何となくだが、生徒会全体の空気が冷えていくのを感じる。あらあらと笑顔で見つめるサーシャさんを除いて。
「うわ…会長、裏でそんなこと言ってたの…?」
「いくら何でも、マムに対してそんなこと言うなんて…クロトってそういう人だったのね」
「ち、違うって!俺はただ…」
擁護しようとする俺に、更にアナがたたみかけるように言葉を投げる。
「じゃあ、マムがキスしてと言われていたら…していたという事ですか。なるほど…よくわかりました」
「何が分かったんだ!?というか、分からないでくれ!」
「くすくす、会長クンも男の子なのね~♡」
「いや、だからこれは…何でこんな目に…トホホ」
その後の俺は、皆から絶妙に冷ややかな視線と態度のまま星徒会での作業を行った。最初は厳粛な雰囲気だった室内も、いつの間にか普段通りの賑やかさを取り戻していた。
「ふふっ。この私を膝に乗せられること、畏怖を持って私に感謝しなさい」
弄られている事に露知らずなマムだったが、心なしか話す声は喜びに満ちていたかのように感じていた。




マムの誕生日!という事で、普段の半分ほどの量のSSを書いてみました。

元ネタは、アナのキャラストーリー4話『膝の上のアナ』です。マムも小さいからなんとなく載せたくなったんですよね。

長さ的にはキャラストーリーの1話分位なのかな?

毎回は厳しいけど、キャラの誕生日にはSSがあげられたらいいですね~

というわけで、見ていただきありがとうございました!


最後に…


マム!誕生日おめでとう!なでなでしてくださ(グラビトンプレッシャー!!

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