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【クルスタSS】メルエル、星徒会体験をする【後編】

前編はこちら ⇒ 【クルスタSS】メルエル、星徒会体験ををする【前編】


「よし、これで終わり!」
クロトが最後の1枚の書類確認を行い、日が落ちるまでに何とか全ての作業を終えることが出来た。話している時間も多かったけど、途中から要領に慣れてきて5人で効率よく進めることが出来たのだ。
「うん、お疲れ様~♪ 思ったよりも早く終わったわね」
「正直、4人でやってたら夜までかかってたかも。助かったわメルエル、ありがとね」
「いえいえ!今日は本当に貴重な体験が出来て、私嬉しかったです」
ヴィーナスからの感謝の言葉に喜ぶ私。星徒会に入りたいとは思ってはいたけど、今回どんな感じの雰囲気なのかを知ることが出来たのはとても素晴らしいことだと思った。
「星騎士としても優秀なのに、こういう仕事も早いなんて…私より凄いかも…」
やや落ち込み気味のマトイさんを擁護しようとする、
「そ、そんなことないですよ!だって私は…」
(クロトの力になりたかった…だなんて、流石にここでは言えないし…)
「?」
「あ、やっぱり何でもないです」
少し間をおいて返事を返す。首をかしげるマトイさんに、サーシャさんとヴィーナスは分かっていたかのような顔でうんうんと頷いている。
「さしづめ、クロトの為になりたかったんでしょ?」
「ヴィ、ヴィーナス…そう、だけど…」
「最後の最後までお熱い二人ね。お姉ちゃん、ちょっと嫉妬しちゃうかも~」
言おうかどうか迷っていた事を言われてしまい、机の上にある紙で思わず顔を隠す。これまで色々話してきたせいで、皆は手に取るかのように私の思考を読めていたみたい。
「クロトも、こんなに思ってくれる好きな子が出来てよかったね」
「あはは、ありがとう。俺もメルエルと恋人になれて幸せだよ」
クロトの一言で、更に顔を見せられなくなる。でも内心凄く嬉しかった。
「それじゃあ、今日の星徒会は解散ね!みんな、お疲れ様!」
「お疲れ様でした~!」




皆は既に帰って、室内はクロトと私の2人だけになった。クロトは最後に一通り、室内全体を見回してチェックをしていた。
「今日はありがとう、メルエル。本当に助かったよ」
「ううん。私もいい経験させてもらっちゃった。ありがとう!」
皆がいた時は恥ずかしいから控えていたけど、思わず笑みが零れる。やっと2人きりになれた。しかも、星徒会室っていう普段は入れない特別な場所で。
「書類、かなり多かっただろ?苦じゃなかったか?」
「最初はちょっとげんなりしてたけど…毎日星徒会の皆がこうして頑張ってるって思うと、私も!って気持ちになったよ」
話しているだけで心がうきうきしてくる。心臓の高鳴りが徐々に大きくなるのを感じ、少しずつ気持ちが抑えられなくなっていく。
「何より…その…クロトと一緒にいられるっていうのが、一番大きかった…かな、えへへ」
「俺もだ。アナには悪いけど、全然苦じゃない時間を過ごせた」
クロトのまっすぐな視線に吸い込まれそうになる。
ここでようやく、ずっと抱えていた思いを明かした。
「…作業中ね、ずっとクロトの事ばっかり見てたよ。一度指摘された時はドキッてしたけど、真剣な顔のクロトがかっこよくて」
私の言葉に照れたのか、あははと笑いながらはにかむクロト。真剣な表情も素敵だけど、たまに見せる無邪気な笑顔はとても愛おしく感じる。
「ちょっと恥ずかしいな…いや、実は俺もメルエルの事頻繁に見てたんだ」
「え、そうなの?」
「うん、ほんとチラ見程度だけど。皆に気づかれない程度にね」
クロトも私の事、見ててくれたんだ。
「えへへ…嬉しいな」
思わずクロトに抱き着く。ドクン、ドクンとクロトの心臓の鼓動が聞こえ、少しずつその速さは高まっていくのを感じる。
「メ、メルエル…ここ、星徒会室だよ。誰か来たら…」
「皆はもう帰っちゃったでしょ?もう今日は誰も来ないよ、うん」
「確かにそうだけど…もし誰か来ちゃったら?」
場所が場所なだけに慌てているクロト。そんな彼に対して、すっかり"スイッチ"が入ってしまった私は思わず強気な言葉ばかりが出てくる。
「その時は、私達のラブラブぶりを見せつけちゃいましょ♪」
「メルエル、君ってそんなキャラだったっけ…」
正直、私も雰囲気に身を任せていたから何を言ってるのか分からなくなってたけど、せっかく生まれたこの機会を逃すまいとアピールに打って出る。
「いいの!私…本当はずっとくっついていたいのに、我慢してたんだよ?クロトは違うの?」
「違うと言われれば、そうじゃないけど…場所ってものが…」
「もーお堅いなー。そんな子には…ちゅ♪」
普段なら恥ずかしくて自分から出来ないキス。でもこの時は、勢いで自分から口づけを交わした。我慢しすぎて、いつも以上に激しく積極的な行動に出る私。普段ならこんなこと、絶対にないんだけどね…。
「キスのお仕置き。私が満足するまで、星徒会室から返さないぞ♪」
「ちょ、メルエル、待っ….」


ガチャ!
「!?」
突然星徒会室の扉が開く。そこに立って居たのは…
「…………」
「ア、アナ…どうしてここに!?」
アナは外から聞いていましたと言わんばかりの視線を浴びせてくる。
そのまま何も言わずに部屋の中に入り、自分の席の方へと向かった。
「今日1日休んでいたらだいぶ良くなったので、星徒会室に置きっぱなしだった荷物を取りに来たんです。それよりも…」
アナは軽蔑するかのように、何故かじっとクロトの方を見つめる。
「星徒会長さんは、こんな所でも好きな人とえっちな事するような人だったんですね」
そう、最初に切り出したのは私の方だ。でもアナは「そんなことあるわけない」といった視線を、クロトずっと向けていた。
「俺のせい!?しかも、別にそんなことしてないよ!?」
「純粋なメルエルさんが、そんなことするわけないじゃないですか。メルエルさん、会長から同意を求められたのでしょう?」
「え!?い、いや…それは…あはは」
(私が言い出しっぺだなんて、流石にこの状況じゃ言えない..ごめん、クロト…)
ちょっと罪悪感を覚えながらも、本当の事を言えずに黙ってしまう。
アナさんは一息ついて、荷物の確認をする。
「…私も治りがけなので、あまり大きな声は出したくないです。今のは見なかったことにしておきます」
「ほっ、よかった…」
クロトがほっとしたのもつかの間だった。
「暫くの間、会長には私の仕事の半分を肩代わりしてもらいますね」
「やっぱり何か根に持ってないか!?」
「治りがけ、ですから。無理しないという意味を加味しても、これぐらいはお願いできますよね?」
「うぅ…分かったよ、仕方ないな…」
こうなってしまったのも私のせいなのに。申し訳ないなと思う傍らで、アナさんは私の隣まで寄って来た。
「それから、メルエルさん。私がいない間、星徒会のお仕事を手伝ってくれたそうですね。ありがとうございました」
小さな体で、ぺこりと丁寧にお辞儀をするアナさんに、思わず私もお辞儀をする。あまり話したことはなかったけど、とてもしっかりしている。ヴィーナスが彼女に頼っていたというのも頷けた。
「あ、いえいえ。星徒会に入ってみたかったので、今回のお仕事は勉強になりました。嬉しかったです!」
「今後もし何かあった際は、またお願いするかもしれません。その時は宜しくお願いします」
これって…また星徒会に携われるチャンス!?クロトとまた一緒にいられる機会がある、そう思うと私の心は一瞬にしてぱーっと明るくなった。
「こちらこそ…その時はよろしくお願いします!」
落ち込むクロトとは対照的に、喜びを隠せない私は終始上機嫌のまま、寮内の自分の部屋へと帰るのだった。




「今日の出来事は..星徒会のお仕事、っと」
いい事があった時に付けて置くメモ帳。今日の出来事を思い出しながら、私はペンを走らせていく。
「はぁ~、今日も楽しかったなぁ…」
普段とは違う経験なだけに、すいすい進む。これもクロトのおかげ。そして私が彼の恋人になったから周ってきた、とっても稀有な星回り。
「また、クロトと一緒に…ふふっ」
アナさんが来たから中断しちゃったけど、出来ればあの後もう少しだけ続きがしたかったなって…ちょっと残念だった。
でも、そのおかげで今後も呼んでもらえるかもしれない。そして今度こそ…2人だけの時間を…
「…明日もいい1日になりますように」
クロトとの時間を考えている内に、私は自然と夢の中に落ちていた。


というわけで、メルエルSS第2弾でした。

いちゃらぶ要素が少なくなってしまいましたが、星徒会メンバーとの絡みが見たかったので書いてみましたが…どうだったでしょうか?

いつもワンパターンになりがちなので、もう少しひねりを加えられるように努力していきたい…メルエルの良さを引き出せるよう頑張ります。

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