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知らずにトラウマをおっていた話


とある小さな集落で起きた事件の目撃者である私には「あまり気にしている訳ではが、どうしても思い出せない顔」があったのです。



(トラウマって本当にあるんだね。っていう話)


事件が起きたのはまだ私が中学生の頃。
二階の自室で本を読んでいた私は何となく外をみた。

一人のメガネの男が自転車でキョロキョロしながら、うちを通り過ぎた。

(誰やろ?知らんおっちゃんやな。)
あまりにも小さな集落なのでみんな顔見知り。
でも、見たことない男だった。

すると、その男はUターンしてうちの前に自転車を停め
伺うようにキョロキョロしていた。
私は直感で『怪しい』と思い、カーテンに隠れて
男の動向を見ていると、うちの洗濯物に近づき、 あろうことか外に干していた洗濯物から私のお気に入りの水玉模様のブラジャーを掴み ひったくると懐に入れたのだった。


わっ!下着泥棒やん!
見てしもぅた!


隠れながら後退りし、
一階にかけ下りて居間でパンツ一丁で涼んでいた父に

『お~…おとーさん!下着ドロボー!外!』
血相変えて報告するや否や、父は
『ぬぁ~にぃ~~~~~~!!』

パンイチのままで外に駆け出した。
しかし、犯人は既に逃げていた。
その翌日、近所で親友のM美もチェックのブラジャーが盗まれていた。


隣組では注意報が発令され、用心をしていた。
犯人の顔を見た私は、近所のおばちゃんたちに
『どげんか人やったね?!』などとイロイロ聞かれるのだが、メガネのお男としか思い出せなかった。

その数日後、めったに騒ぎのない集落に一台のパトカーがサイレンを鳴らしてきた。
そしてうちのうちの斜め前でサイレンが鳴り止んだ。


何があったのか?
赤いピカピカの光につられて村人が集まった。


私の家の二軒隣が空き家だったのだけど、その空き家の裏口に納屋があって、そこに万国旗さながら色とりどりの下着がぶら下がっていたのだ。

無論、私の水玉ブラジャーと親友のチェックブラジャーも仲良く並んでいた…


その事件前後の事はあんまり覚えてなくて、
でもふと何かのきっかけで下着ドロボー事件を思い出しても、メガネの男の顔には不思議な事にモヤみたいなんがある。
(まぁ、実害ないし)と気にはしていなかった。



つづく


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