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アニメ『鬼滅の刃』の風景美:絵描きの視点で見た背景の魅力

アニメ『鬼滅の刃』の視聴者としてはめずらしい視点かもしれませんが、私は風景画をひんぱんに描いている身として、その背景のにしばしば目を奪われました。正直、話しているキャラクター以上に、その背景画像に引き込まれたシーンが数多くありました笑

とくに印象的だったのは先日最終話が放送された「刀鍛冶の里編」で、これまでの1期や2期の映像と比較しても、単一なパターンで配置された草などが少なく、細部まで丹念に描かれていました。

アニメの映像は載せられないので公式ツイッターの動画を載せておきます。たとえば、開始から2秒あたりの炭治郎が座っているところの背景の木の枝や草はすごいきれいですね。(本編はすごいシーンがもっとあります)

どのように制作されているのかは詳細は明らかではありませんが、このような繊細な画面を作り出せるということは、絵を描く者と思わずやばい!かっこよすぎる!となってしまうほどでした。

こちらのツイートの動画からも草や岩、山のよさが少しわかるかと思います。

このように草や岩、山の配置はもちろん、木の枝の1本1本がちゃんと描かれており、各シーンはまるで絵のように感じられました。また、単なる自然というより日本の自然や文化が精緻に表現されているように感じました。

絵のテイストはだいぶ違いますが、自分もいい感じの風景を作りたくて、あれこれ試しています。たとえば、ちょっとわかりにくいですが、この絵の奥の方の淡い色の山は、国土交通省の地形データを活用しています。

具体的には、地形データから山を抽出し、それを縮小して3Dプリントしています。そして、アクリル絵の具をつけてスタンプのように使っています。以下の写真は、その3Dプリントした山をTシャツに試しにスタンプしたものです。

3Dプリント山とTシャツに試しにスタンプした様子

そんなわけで、鬼滅の刃でどうして風景をこんなきれいに作れるのか気になり、調べてみました。その結果、いい感じのインタビュー記事があったので引用しながらそれを紹介したいと思います。

なぜこんなに美しい映像?

やっぱりガチでやっていたufotable

アニメ鬼滅の刃の作画を作っているのはufotableです。作画に定評があるufotableですが、やはりこだわり方が普通ではありませんでした。

以下のインタビューからは実際に「見た目や、レイアウトが良い山」を探しに行っていることがわかります。CGだけで架空の自然を作っているわけではないようです。

寺尾:作品に合ったシュチュエーションを探していろんな山を撮ってるんですよ。「もっと見た目や、レイアウトが良い山があるかもしれない」って言われて「また!?」って言いながら、いろいろな所に行ってました。

世界を虜にしたアニメ『鬼滅の刃』はどう作られたのか ufotableにしかできない作画とCGの融合後編

以下のコメントからも「幹の周りに雪が積もらず少し空洞があく表現」などめちゃくちゃ細かいところまで気にしていることがわかります。観察することで、「それらしさ」の重要なところを発見できるということかもしません。

西脇:細かい所でも、木々のバランスや下生えの配置、土の見え方など、想像では補えない部分に森らしさを感じるものでして、森を描くといっても、ただ樹木を並べて描いただけでは本物っぽい森にはならないんです。たとえば幹の周りに雪が積もらず少し空洞があく表現を本編でやりましたが、その辺りの細かい部分などすごく参考になりました。

世界を虜にしたアニメ『鬼滅の刃』はどう作られたのか ufotableにしかできない作画とCGの融合後編

実際どれくらいがCGなのかはわかりませんが、以下のように背景を手書きすることが多かったのかもしれません。

「普段は雲をCGで描くことが多い制作スタジオ・ufotableが、『鬼滅の刃』に関しては、背景美術で雲を描くことで風景に合うようにしている」という裏話も明かされた。

「鬼滅の刃」第1話の美麗作画の舞台裏 スタッフが雪の中でロケハン&演技

ちなみにufotableは東京だけでなく徳島にも制作スタジオを持っているようなので、そのあたりの自然が参考にされている可能性があります。

自分も旅行や出張先では絵の題材となるいい感じの風景がないか探して撮っていますが、探すためにわざわざ出かけるのもいいかもしれませんね。

原作者のテーマ選び

そもそも鬼滅の刃は日本の自然がよく描かれている作品です。作者はもともと『日本昔話』を参考にしていたようなので、日本文化と関係のある自然なども研究していると思われます。

『日本昔話』を参考にしたことはこの本のインタビューに書かれていました。

おわりに

以前、AIとの共同制作をがんばっていく話をしましたが、かっこいい山などの風景探しもしていきたいと思います。また、3D CGの活用についてもすごかったので今度それについても書きたいです。


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