誰かの「死」や「病」は物語になる。

誰かの「死」や「病」は物語になる。
誤解を生みそうな一文です。

だけど、私はマイナスな意味で使っている
わけではないです。
何というかとても当たり前のことだと
思うのです。

自分や自分の身近な人が病気になること、
死んでしまう事、
これ以上の出来事は、人生においてないと思う。

2020年3月、私は看護学校2年生でした。
この当時のNHK朝ドラ「スカーレット」を
見ていて自然とそう思えたのでした。
この時、夫が亡くなってから8年が
たっていました。
いつも見ていたわけではなく、
ストーリー全てを
知っていたわけではないのですが、
母が見ていたので私も看護学校が休みの日だけ
見ていたと記憶しています。

戸田恵梨香演じる主人公の陶芸家の息子が
白血病になりました。
実在の人物がモデルのドラマですが、
事実かどうかはわかりません。
息子が一日一日を大切にしている様子が
描かれていました。

それを見て彼が亡くなった当時のことを思い出しました。

彼が亡くなって気が付いたこと。
世の中の映画、小説、ドラマ、漫画、CM
人気歌手がうたう歌にさえ
ありとあらゆる物語、フィクションの中に

誰かの死が描かれていました。

それを見るたびに彼が思い出されて
涙が出てきました。

わかったこと。
いつだって誰かの大切な人が亡くなっている。
それは世の常だ。当たり前の事。
そうやって歴史が積み重なってきて今がある事。
自分の大切な人が
自分より先に亡くなる。
それは誰もが共通して体験する事。

だから人の死は、物語になって
あちらこちらにあるのだ。

それは何千年前から同じ。
人生の中で一番大事で物語になるのは、
人の生き死に
なんだなと気づいたことを
思い出した朝でした。

当時は、映画のCMや小説、漫画、
ドラマひとつひとつに
少しだけ添えられた「誰かの死」が
辛くて辛くて、
それに気が付いてしまう自分も
嫌で仕方がなかった。

だけど、今は、一番大事で、
身近なことだから
ドラマの中に描かれるんだなと
わかりました。

「人生は、山と谷があるから
味わい深いんだよ。」
彼ととても関係の深かった人が
私にかけてくれた言葉です。
彼が亡くなった当時、私は彼女に泣きながら
頻繁に電話をかけていました。

「人生は幸せな時ばかりじゃわからない。
彼が亡くなって辛い。
それがあるから
人生がきらめくことが
わかるんじゃないかな。」

彼はその方にとっても親友のような
弟のような関係だったと思います。
その時はその当たり前のような言葉の意味は
わかりませんでした。
わかりたくもなかった。
彼の死が私の人生に濃淡を加えて、
色をつけているなんて
考えたくもない。

でも今、その言葉の意味がわかります。

「平坦で辛いことも何もなければ、
幸せなこともわからない。」

それでも、
今病気の当事者の方や
大切な方が病気の方、
大切な方を亡くされたばかりの方は
「病気」や「死」が描かれた
映画、ドラマ、小説、漫画、
CMを見れば辛いと思う。
音楽を聞けば涙が出るかもしれない。

それでもいつか、
それが誰にでも訪れる人生の出来事だから
こんなにも物語に描かれるんだってことに
気が付いて

亡くなった時の事や
自分の後悔ばかりではなく
楽しかったことや嬉しかったこと
出会えて幸せだったことを
たくさん思い出してほしい。

それが私の人生に彩りを与え
支えることになるんだなと
この朝ドラを見て思いました。


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