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ビバリウム感想

ずっと気になっていたビバリウムを観た。
LAMBも観たし、なんでも来いと思っていた。


はじめに

この映画は人間社会に溶け込んでいる多種多様な生き物を描いているんだと思った。

「自然はそういうものだから」というセリフがあったと思うけど、自分がそのルールに放り込まれた時素直に受け入れられる人はあまり居ないのではないだろうか。






トムの仕事

頭のおかしくなりそうな空間で、トムは唯一没頭できる穴掘りを始める。毎日朝から晩まで穴を掘り、帰って飯を食って寝て朝にはまた出かける。
それが原因で夫婦が疎遠になったりもする。
仕事じゃんこれ。

単なる趣味というよりは仕事に近い部分のあるトムの穴掘り。
最終的には自分の墓を掘っていたというオチ。
まぁまぁ、よくあるかも。
よくあっていいのだろうか。

仕事ってほんとつらい。
仕事をしているから摩耗していくのか、時間の経過で老いていくのか、すごく考えさせられた。人はどんなものの積み重ねで歳をとるのだろうか。

現実は人工的なものを吸い過ぎたことによる呼吸器の異常で、上記の様なこねくり回した哲学は意味を成さない。
なんと残酷な。





ジェマの失敗

ジェマ、何故車からあの化け物を救出してしまったのか。
まぁ不思議パワーで荷物を置いたり回収したりできるから、音もなく車を破壊して出てこられた可能性はあるけども。
それでも情が湧くには状況が特殊過ぎるし、生活の大部分が子どもとの時間に置き換わっていくのはそうかもしれんが、でも突然段ボールに入って届いた子ですよ?

実家の猫も似たような経緯で飼っているので少しわかってしまうのも悔しいポイント。




恐るべき鳥人間の生態

カッコウって産んだらもう子どものもとには戻って来ないのだろうか。
だとすると産んだら産みっぱなしということに。
しかしこの化け物はそんなことも無い様だ。
定期的に会いに来て、本を渡したり生活用品を置いていく。お世話だけはヒトにお任せ。つまり共働きのご家庭でお手伝いさんを雇っている様な状態。育てるという面では合理的だが、如何なものかとヒトなら言われるかもしれない。
しかし鳥人間にそんな道徳は不要。



テレビから流れる不思議な映像や音。
鳥人間からすれば、あれは教育テレビやバラエティ番組みたいなものなのかもしれない。
別種のお手伝いさん達からすれば、何をそんなに夢中になっているのか不思議だろう。
子どもが夢中になっているものを大人が見ても面白さがさっぱりわからないということを極端に表しているとも思えた。
まぁそんなことは無い。
鳥人間の生態とは残酷であり人間の道徳が入り込める余地などないのだ。





結局鳥人間とは何なのか

もう、そういうものと言い切ってしまえばLAMBと同じ様な作品とも考えられる。
しかしここは前回の反省も活かし、もう少し考察してみたい。

最初のシーンはカッコウが卵やヒナを地面に落とす映像から始まるが、必ずしもそれが保育園の側に生えている木で起こったとは限らない。
つまり落ちていたヒナ2羽と最初の映像は無関係の可能性だってある。
トムは何やら梯子を木にかけて登っていたが、そばにはなかなかのサイズの枝が落ちていた。
トムが切った?あるいは前の日の嵐が原因?
トムが枝を切ったことでヒナが犠牲になったと考えるとどうだろうか。
童話や昔話の様に、鳥のお化けがトムに仕返しをするという物語にもみえてくる。
よくあるし、そういう話。
知らぬ間に犯していた罪によって、トムは裁かれてしまったのかもしれない。


うーん。





ヒトにとっての家

誰にとってもそうというわけではないけど、君がいるから僕の家だったという様な表現にはグッとくるものがあった。
自分の人生を肯定できる瞬間て、なんでもないことを大切に思えた時なのかもしれない。

鳥人間はそういうことを教えたかったんだね。







人類の叛逆

ノコノコやって来た獲物に、自分の子どもを育てさせる鳥の化け物。

時空さえも操る彼らに人類はなす術なく利用され続けるのかもしれない。

しかし、本当にやられっぱなしで終わりなのか?

時空を操る鳥の化け物とはいえ、死なないわけではない。
事実、外で何年経ったかは不明だが前任者のマーティンは死んでしまい、次世代のマーティンの手によって丸められてしまっていた。
トムやジェマを丸めたりしなかったことや、重そうに運んでいたことから、歳をとった彼らの骨は人間より軽く脆いことがわかる。

それなら赤ん坊の頃はどうだろうか。


鳥人間は丁寧に説明付きで赤ん坊を送って来るが、ここが最も無防備で付け入る隙だと思う。

上記のことからおそらく非力な赤ん坊を、人間の惰性やその場の罪悪感を利用して育てさせるというのは賭けであって、まさか赤ん坊を手にかける様なことはしないだろうという思い込みがあると窺える。
そこを利用してこの怪物達に一矢報いたい。




用意された家にはオーブンがあり、届いた食材を簡単に調理できる様になっていた。

ということは、段ボールで届いたあの鳥の化け物の赤ん坊をオーブンで丸焼きにすれば、毎日丸鶏のローストチキンを食べることができるのだ。
1日1回配送されて来るのかはわからないが。


とにかく味の無い食事ともこれでおさらば。
さよなら無機質な食事生活。

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