【ショートショート】黒い本棚の行方
わたしの本棚が、なくなった。
シックな黒い木目が味わい深い、お気に入りの本棚。それに、どうしてか絵柄が思い出せないけれど、お気に入りの印象派のポスターカードが入っていたのに。その本棚が、ある日帰ったらなくなっていた。
誰かが「あなた本棚も本も、たくさん持ってるんだからいいんじゃない?」という。そんなわけない。大事にしてきた本棚で、あれじゃなきゃだめなのだ。
本は、最悪仕方がない。好きな本は覚えているし、また買えばいい。
あげられるけど、本棚はダメだ、ゆずれない。
走っ