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おはなしを、いくつか。

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フィクションだったりノンフィクションだったり。 ぽつぽつと、呟くように。
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高校2年生の夏。

海のそばに住む男の子と恋をしていた。
よく、海岸まで自転車の二人乗りで出かけた。

制服の背中越しに撮った空の写真が
まだ、どこかにある。

図書館で勉強しながら筆談したこと。
駅までの道、少し遠回りして
手を繋いで帰ったこと。
胸がきゅっとする、青い思い出。

一年後、
また、同じ場所で待ち合わせよう。

泣きながら出て行った彼のことば

その一年後
奇しくもわたしは
あの場所の目の前で働いていた

約束の17時
職場の有線が変わった
涙を、おさえられなかった

♪Kiss Me
Sixpence None the Richer


店員さんはにこにこして、
そうだったんですか!時々、お子さん連れていらっしゃいますよ。
と。

ーそうなんですね。お元気そうで何よりです。

次いらしたらお伝えしておきますね。
そう言いながら袋を手渡す。


お店を出た。
夏の日差しがまぶしかった。

serendipity.

咄嗟にレジに向かった。
お会計をしてもらいながら、
店員さんに聞いた。

ーこのポストカードを描いた方、◯◯さんですか?
店員さんは、一瞬驚いた顔をして
あぁ、そうですそうです、ご存知ですか?
と聞いてくれた。

ーはい。◯◯さんと、あとご主人が高校の先輩なんです。

続く。

だいすきだったひとの、
奥さんになったひとは
音楽をやっていて
私と別れる少し前から、
彼とユニットを組んでいた。

背が高くて綺麗で、印象的な歌声のひと。
そして、絵を描いていた。


見つけたポストカードの絵のタッチは
明らかに彼女のものだった。
片隅のサインも。

続く。

別れる前、最後に会った時のことも
まるで昨日のことのように、
ぶわっと思い出されて。
あぁ、すごくすきだったな、と噛み締めた。

さらに数年後の夏。
とある高原の街へ旅行した。
雑貨店で、お土産を見ていると。

一枚のポストカードが目にとまった。
隅に、製作者のサイン。

続く。

おもいでを。

すんごいだいすきだったひとがいた。
高校三年生から大学一年までお付き合いして。
部活のOBで、バイクが趣味。
よく後ろに乗せてもらってた。

別れたのは彼が他に好きなひとができたから。
数年後、人づてに
彼がその彼女と結婚したことを知った。

続く。