見出し画像

子あり・子なしの分断について思うこと

もうかれこれ10年ぐらい前の話。

当時のメディア業界あるあるで、連日てっぺん近くまで働く毎日。
残業組は、私と上司(女性、10代の子あり)と後輩(女性独身)が固定メンバーで、小さい子がいる人たちはもちろん定時帰宅。
私たちは今日こそは早く帰る!と思ってるから夕食をあえて用意せず、結果、夕食抜きの毎日だった。

ある夜、いつものように3人で残業していると、オフィスのドアが開いて、定時帰宅したはずの同僚(女性子あり)が、両手に持ち帰りの丸亀うどんの袋を持って現れた。

「これ、夕ご飯にどうぞ!」。

エレベーターが止まっていて、8階まで階段を上ってきた彼女は赤い顔でフーフー言いながら、うどんの袋を渡してくれた。

私、上司、後輩の3人はもう号泣で、本当に、文字通り涙を流しながらうどんを食べた。
私たち3人は、社内でも「あの人たちは仕事が好きだから」という見られ方で、残業して当然と思われているフシがあったので、気遣ってもらえたことが何よりうれしかった。

今、自分も子育てをする立場になり、当時の同僚の彼女がうどんを差し入れしてくれたこと、小さいお子さんがいる中、夜に家を出てうどん買ってオフィスまで来ることの大変さが身にしみて理解できる。

私だったら同じことができるだろうかと考えると、できない気がする。夜なんて、どうやって子どもに食べさせて風呂入れて寝かすかで精一杯だよ。無理にきまっている。

だけど彼女は、夜のオフィスで働いている私たちを思い、温かいうどんを届けてくれた。
好きなだけ時間を使えて、思い切り仕事に打ち込むことができた当時の私を、「自分とは立場が違うから」と切り捨てずに。

彼女は同じチームだけど職種が違うので、彼女の業務をカバーするために残業していたわけでもない。
純粋な、思いやりの差し入れだった。


子ありの人と子なしの人の働き方で、摩擦が起きやすいのもよくわかる。

だけど、私は、うどんを泣きながらすすったあの夜を思い出す。


互いにどちらもつらく孤独で、されど楽しくもある愛すべき日々、ともすれば分断しがちな私たちをつなげてくれるのは、温かい食べ物と思いやりだと、思うんだよ。


同僚の彼女が帰った後、私と上司、後輩の3人で泣きながらうどんを食べていたら、たまたま社長(おじいちゃん)が通りかかり、なんで泣いてるの!?「うどんがあ〜美味しくてえ〜涙」と泣く私たちを見て、それ以来、社長がほぼ毎晩、夜食を差し入れしてくれたのも良い思い出。みんな優しかったなあ。


このnoteは、Xに書いたものを再掲したものです。


お読みいただき(ラジオの場合はお聴きいただき)どうもありがとうございます!それだけでも十分うれしいのですが、サポートいただけると大変励みになります。オレゴンで小躍りして喜びます。