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カカオの実から酵母を集める話

砂糖水の中に果実を漬け込む。

環境を作り、その中に植物片を漬けておくと、
植物片に付いた常在菌が繁殖する。

数日経つと、
砂糖水に適応しない微生物は淘汰され、
砂糖水に適応する微生物は増殖する。

そんな仮説の下で設定した実験。
パンの発酵種を採って集めた。


カカオから酵母(発酵種)を採ったのは2017年9月のこと。
かれこれ6年半が経つ。
「カカオ」といっても、
チョコレートの元、カカオ豆から採ったのではなくて、
カカオポッド(カカオ豆の詰まった果実の外殻)から採った。

この時は、インドネシア旅行で栽培農家から手に入れたカカオの実。
硬いカカオポッドを丁寧に切り刻んで、砂糖水に漬けた。
発酵種を採って、それを種にしてパンを膨らませてパンを焼いた。


「カカオ酵母」は希少性があるけれど、調達が容易でない。
つまり、日本では素材が持続可能ではない。

カカオポッド(カカオの殻)なんて、
栽培地では大量に発生する廃棄物で、ブタのエサにすることはあるかもしれないが、燃料や堆肥以外には利用価値が無い。
栽培地で活用方法があれば、それは持続可能になるだろう。
いま流行りの「持続可能性」

でも日本はカカオの栽培地ではない。
カカオの殻でパンを焼き続けようとするなら、
発酵種が死んでしまわないように、種に合った栄養分を与えながら丁寧に育てる必要があった。そしてそれを続けるには困難が伴った。

カカオのパンを焼けるようになってから、
3年経った或る日(2020年12月20日頃)、突然パンが膨らまなくなった。
発酵液種を調べると、発酵を止めたわけではないことが確認できた。
糖度計で糖度を測り、pHメーターで酸度を測った。

糖度は下がり酸度は上がっていたので、「発酵」はしている。
ただし、パンの膨らみに必要な動き(二酸化炭素とアルコールの発生)を示してくれなくなった。恐らくは発酵種の培養環境が、酵母菌ではなくて乳酸菌主体に適してしまったのだろうと疑われた。
(つづく)

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