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8年前のあの日 坂道が凍ったせいでリマインド型思い出botになった話

「スギウラが凍った坂で転んで頭打って、病院に運ばれたよ。」 雪深い東北の12月。 大学3年の冬休みの夕方、同じ学科の男子から入った突然の連絡に 私はすぐさま着替えて出かける準備をはじめた。 スギウラの親友であるその人から私に連絡が来たのはほかでもない スギウラと私はそのとき、付き合いそうだった、というか実質付き合っていた、というか 大学生特有のなんかこう 告白はしてないけどなんかずっと一緒にいる、みたいなそういう関係だったからだ。 「なんか電話で話した感じ全然ピンピンし

    • 真景累ヶ淵「豊志賀の死」~お久が”私がオバさんになっても”を唄う日~

      やきもちは 遠火に焼けよ焼く人の 胸も焦がさず味わいもよし 女の嫉妬、悋(りん)気というのは今も昔も西も東も共通の感情のようで さまざまな物語のテーマになってきた。 頬をふくらますようなかわいいものから身を狂わすような根深いものまで、六条の御息所からaikoまで。 広辞苑によると嫉妬とは、以下の感情である。 しっ‐と【嫉妬】 ① 自分よりすぐれた者をねたみそねむこと。「弟の才能に―する」「出世した友人を―する」 ② 自分の愛する者の愛情が他に向くのをうらみ憎むこと。ま

      • 髪を切った私に、違う人みたいと

        偽名を使ったことはありますか。 私は、あります。 ・・・・・・・・・・・・ ・・ ここ10年ほど、どうにも髪を切れない。 正確に言うと鎖骨より短くすることができない。 美容院に向かう前、ファッション誌のなかバツっと切った短い髪にハツラツとした笑顔の太陽みたいな女性たちをみて「かっこいいなぁ」と思い、こういうのもいいよねと参考用に画像を保存しておくものの いざ鏡の前に座り自分の姿を見据えると、それらの気持ちはふっとんで「痛んでるところ3cmくらい切っ

        • 山内マリコ「あのこは貴族」を読んで・おのぼりにとっての東京―後編―

          「東京は、お金がないと楽しくないよ。 東京で貧乏するって言うことは、5000円の定期が買えなくて 毎日200円の交通費を払いながら、ぐるぐるぐるぐる働いて払って働いてを繰り返すことだから。」 すでに東京で暮らしていた姉のいやに実感がこもったアドバイス(?)を胸に2012年、就職と同時に上京した。 出歩くようになってすぐ、 自分がいかに世間知らずかということを思い知らされた。 すっぴんで電車に乗っているひとがあんまりいないこと、 女性はストッキングがマストであること

        8年前のあの日 坂道が凍ったせいでリマインド型思い出botになった話

          山内マリコ「あのこは貴族」を読んで―おのぼりにとっての”東京”―

          「“東京うまれ”は、それ自体が才能だよ。」 いつかネットでみたこの言葉を、ずっと眼の前にぶら下げられているような そんな物語だった。 『あのこは貴族』山内マリコ著 ▼あらすじ▼ 地方生まれの美紀と東京生まれの華子。 アラサー女子たちの葛藤と成長を描く、山内マリコの最新長編! 「苦労してないって、人としてダメですよね」――東京生まれの箱入り娘、華子。 「自分はお話にもならない辺鄙な場所に生まれ、ただわけもわからず上京してきた、まったくの部外者なのだ」――地方生ま

          山内マリコ「あのこは貴族」を読んで―おのぼりにとっての”東京”―