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この人がいる世界をいつまでも見ていたい「漁港の肉子ちゃん」西加奈子

読書の趣向が偏っている。

どこかザワザワする話、暗くてジメッとした話、後味悪い話、などに偏りがちだ。

だけど

そういった本を読みたい気分じゃない時も、もちろんある。

どういうのが読みたいだろう?
自分でもよく分からないけど、何か読みたい。

家は積読だらけ。

読み終わっていない本が山とあるのに、ついつい定期的に行くブックオフや、メルカリを覗くと本欲があふれてしまう。

買うつもりが無くても、かご一杯になっている事もザラ。
かご一杯って言うとセレブ感だが(そうでもない?)
ブックオフのしかも文庫は100円と決めているので、いっても2000円前後。
それでも結構な出費だけど。

一か月で読める本の数はせいぜい10冊前後。その時の気分、状態、本の種類、厚さ、等々にもよるけど。

母も本が好きで、私が積読している本を結構読んでいる。本の好みもまあ似ている。
なんなら母の方が先に読んでいて、私がもう読んだものと言う前提で本の話をし始め
普通にネタバレしそうになるから
「まだ読んでないから!」
とすかさず突っ込まなくてはならない場面が往々にしてある。危ない危ない。

そんな母がよく言うセリフが
「生きているうちに、ここにある本全部読めないと思うわ~」である。

はいはい。と何気なく聞き流していたが

ふと思う

私だって、もしかしたら、しなくても
生きているうちに家にある本全部読めないんじゃないの?

ひと月に読めて10冊。いや、そんなに読めてないか。

仮に10冊だとして

1年に120冊?
10年で1200冊???

そもそも1200冊もあるかな???
さすがに無いか?
しかし、この調子だと絶対にまだ増えるし。
あとそもそもが毎月10冊も読めてないし。。。

とにかく、話はだいぶ逸れたが

何年もため続けてきた積読の山から
日々「これ読もう」と選ぶ選書が、意識せずとも
ミステリー・ホラー・サスペンス・イヤミス関連になってしまう私。

そんな、色で例えると黒か紫(私の2大フェイバリットカラー:いらぬ情報)の私の読書色に

先日珍しく「暖色」が現れた。

西加奈子著の「漁港の肉子ちゃん」だ。

もちろん、自分で買ったし、読みたいと思って買っているのだから不意に現れた訳ではなく、身近にずっといたのだけれど、なぜだか読むきっかけが無かった(黒と紫に浸食され過ぎて)

ただ、なんか読みたいけどいつもの感じだと、ずっしりしちゃうしなあ(気持ちが)・・・

と思っていたら

「ちょ!これ読んでみいや!!!」

と声をかけられた。気がしたのだ。本にね。

・・・・・・・・・・・

題名の通り漁港で暮らし働く肉子ちゃんと娘のキクりんの母子と
取り巻く人々のお話。
キクりんは年頃の女の子。学校での自分の立ち位置。女子同士のイザコザ。もろもろありつつも、妙に大人びたしっかり者の女の子。
対照的に、母親の肉子ちゃんは、、、

肉子ちゃんと娘のキクりんの関係は、友だち同士のようでもあり、肉子ちゃんが、大人びてどこか冷めている娘のキクりんの妹のようでもある。
娘のキクりんが言うには、めんどくさい女(肉子ちゃん)と忙しい男(娘:キクりん)と言う謎の恋人関係のようでもある。

太ってるからと皆に「肉子ちゃん」と呼ばれている菊子こと肉子ちゃん。

娘にまで「肉子ちゃん」と呼ばれている肉子ちゃん。

トム・クルーズと池乃めだかと同じ7月3日生まれの肉子ちゃん(38歳)

いつも語尾に「!」が付く肉子ちゃん。

とにかくダサいセンスの持ち主肉子ちゃん。

空気が読めずに、ずけずけと人のテリトリーに入ってくる肉子ちゃん。

糞男(キクりん談)にすぐ騙される肉子ちゃん。

「事故みたいな」存在の肉子ちゃん。

いつも「全力で」肉子ちゃん。

借り物競争で2回もフライングしたくせに出遅れる肉子ちゃん。

食欲の秋には分かりやすく更に太っている肉子ちゃん。

休みの日は予定が無くてもうずうず嬉しい肉子ちゃん。

誰かが死ぬとたとえ親しくない人でも自動的に悲しい肉子ちゃん。

テレビで言ってることはすぐに信じる肉子ちゃん。

サツマイモを食べるとおならをする肉子ちゃん。

分かりやすく生きている肉子ちゃん。

嘘をつけない肉子ちゃん。

イビキが「すごーい!!すごーーい!!」と言う擬音な肉子ちゃん。


とにかく明るい
とにかく懲りない
そしてとにかく娘のキクりん大好きな肉子ちゃん。
娘に自分と同じ名前をつけたけど漢字はちゃんと意味を持って替えた肉子ちゃん。


読み終わった後に肉子ちゃんを思い出すと暖かな笑いが湧き出ててくる。

そんな肉子ちゃんのいる世界の一部に、ほんの一時でも
入り込めて、読後は心がスッと軽くなった。

なんでもっと早く読まなかったんだろうか。
だけどこれを一回読んだから、またいつでも肉子ちゃんに逢えるぞ!
とまた笑ってしまう。

実際に肉子ちゃんがお母さんだったら、、、、、
うーん。イロイロ面倒だろうなあ。

私はキクりんみたいな、子供だけど「大人」な対応ができるだろうか?

友だちのお母さん、近所にいるおばちゃん、たまに行くお店のなんだか賑やかな店員さんくらいの距離感がいいのだろうか。

そう思わなくもないが

とにかく、なんだか無性に会いたくなる存在なんだろうなあ。
太陽のような、向日葵のような、暑苦しいくらいの、肉子ちゃん。

声をかけてくれて、ありがとうね。


映画にもなってる「漁港の肉子ちゃん」より


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