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【家業を残す】という考え方

日本では、家族経営の会社が90%を超えるという。
そして、日本の経営者は「家業を残す」という考え方が強い。
今回は、家族経営と家業について書き綴っていく。


家族経営とは?

ここで言う「家族経営」とは、創業者やその家族が会社の資本や経営を握っている状態のことだと定義する。

私の体感的には、日本の国内の殆どの会社が家族経営だ。
上場企業や大手企業以外の会社は、ほぼ家族経営だという感覚を持っている。

どんな気持ちで「家業を残す」のか?

日本国内では、個人の財産を子供に残すことが難しい。
超裕福層といわれる5億円以上の財産を保有する人であっても、それを相続する時にその半分を相続税として支払う必要がある。

そこで考えるのは「家業を残す」ということ。
財産を残すよりも「金を稼ぐ会社」を子供に残した方が安泰だと考える。
仮に相続税を支払った後に残る現金がゼロであっても、会社さえ引き継げば、そこでまた金を稼げる。
2代、3代と続く家族経営の経営者は、そう考えることが多い。

「家業を残す」難しさ

今の時代、家業の残すのは難しい。
家族経営のボリュームゾーンである中小企業でいうと、黒字の会社は3社に1社程度。
多くの会社が赤字の中で、子供に会社を残すこと自体が困難だ。

そもそも、会社の業績が良くないと子供は会社を継ごうとしない。
今、業績が良くても、昔の業績が悪ければ、やはり継ごうとしない。
累積の業績が良い状態にあることが、子供が快く継いでくれる条件だ。

これはマニアックな話だが、一方で「累計の業績が悪いからこそ」子供に次いで欲しいと考える親もいる。

実は、経営者は会社を廃業する時にこそ「清算」を求められる。
累計の業績がマイナスであれば、清算をする時に経営者がマイナス分を補填しなければいけない。
不思議な話に聞こえるかもしれないが、経営者は会社が倒産した時から、個人の借金がはじまるという仕組みなっている。

会社の累計業績がマイナスであっても、会社の運営は続けられる。
いわゆる「ゾンビ企業」というやつだ。
例えば、銀行からの融資で会社に現金さえ残っていれば、倒産はしない。
銀行から追加融資を受けられなくなったり、銀行が融資金の強制回収に入らない限り、会社は生き残るわけだ。

以上の理由により「清算して廃業」ができないから、子供が嫌々ながら会社を継ぐというケースもある。

「家業を引き継ぐ」難しさ

親が家業を残すのが難しい上に、子供が家業を継ぐのもまた難しい。
創業者であれば、自分の特性を生かした仕事を家業とするはずだ。
しかし、その子供が同じ特性を持っているとは限らない。

資格がなければ営業できない家業もある。
特定の能力に秀でていないと利益がでない家業もある。

自分で選んだ従業員ではなく、元々そこで勤めていた従業員と付き合っていかなければならない。
どんな会社でも「新入の次期社長」への反発は必ずある。

創業社長であれば、ゼロから少しずつ身につけてきた知識を一気に身につけなければいけない。
過去に戻って、創業社長と同じ体験をすることはできない。
多くの体験をすっ飛ばして、いきなり規模の大きな組織の運営を求められる。

家業を引き継ぐのは簡単ではない。
会社を創業した社長と同様に、覚悟を決めて臨む必要がある。

ベテラン金持ち一族の「家業の残し方」

数世代に渡って富裕層を維持してきたベテランの金持ちは「家業の残し方」が上手い。
特に「家業を引き継ぐ難しさ」を最大限に緩和させている。
以下に、そのポイントの一部を紹介する。

特殊な能力が必要な事業は避ける

例えば、弁護士、医者、税理士など、ハイレベルな能力が必要な家業は継ぐのが難しい。
一昔前で言えば、ガソリンスタンドが良い例だ。
特殊なスキルは必要なく、誰でも経営を続けられる。

参入障壁の低い事業は避ける

参入障壁が低いと、後から続々と競合が生まれてしまう。
だからといって、特殊な能力を参入障壁の担保とするのは避けたい。
そのため、おおよそは立ち上げコストの高い事業が選ばれる。

ガソリンスタンドの例で考えてみる。
ガソリンスタンドを立ち上げるのは、土地と金がいる。
普通の人が努力して用意できるものではない。

多くの資産家が不動産運用事業へ行きつくのも同じ理由だ。
特に大型マンションやビル。
立ち上げに大きなコストが掛かるものほど、参入する競合は少なくなる。

売上ストック型の事業をつくる

資産家は、毎月、毎年の収益が安定して得られる事業を選ぶ。
不動産収入はもちろん、ガソリンスタンドも、おおよそ収益は安定して得られる。

これもまた一昔前だが、かつて新聞販売事業は、抜群に収益が安定していた。
ダスキンの代理店なんかもそうだ。

今でこそ、サブスク全盛の時代だが、昔から資産家は売上ストック型の事業へ好んで投資してきた。

結局は「不動産神話」へ行き着く

特殊な能力は不要で、参入障壁が高く、売上ストック型の事業とはどんなものなのか?
一昔前は、ガソリンスタンドやガス販売などが強かった。
老舗フランチャイズ事業もまだまだ強い。
保険代理販売事業もしばらくは続きそうだ。
リサイクル・環境ビジネス系に手を出す人も増えてきた。
今後は蓄電池に関わるような新しいビジネスも人気になりそうだ。

しかし、相変わらず、不動産事業は強い。
特殊な能力を必要とせず、参入障壁は高く、売上ストック型の良い例だ。
特に「一等地」や「訳アリの土地」は、休みなく高利益を上げ続ける。
その土地を使いたい人たちで入れ食い状態だ。
まだまだ「不動産神話」が終わる気配はない。



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