見出し画像

ジャニーズ性加害問題と児童相談所

現在、世間を賑わしてるジャニー喜多川氏による、ジュニアと呼ばれる当時、少年であった複数人に性加害を行っていたという件についてですが、ここでは事実関係がどうであったかは論じずに、それと並行して児童福祉の観点から考察してみたいと思います。

ジャニー氏による性加害が事実であったとしたら、これは明確に児童虐待となります。2000年5月12日に施行された「児童虐待防止法」には児童に対する虐待をこう定義されています。

(児童虐待の定義)

第二条 この法律において、「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ。)について行う次に掲げる行為をいう。

一 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。

二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。

三 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。

四 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

厚労省 児童虐待の防止等に関する法律(平成十二年法律第八十二号)

ジャニー氏が行った事はこれの2に該当すると思われます。そしてこうした児童の話を見聞きしたり、行っている事が事実だと認識したのなら

児童福祉法第25条(要保護児童発見者の通告義務) 要保護児童を発見した者は、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。

2007年1月23日に改正された、子ども虐待対応の手引きでは

第3章 通告・相談への対応

1. 通告・相談時に何を確認すべきか
 虐待については、子ども本人や虐待を行っている保護者からの相談と近隣等個人や関係機関等からの文書または口頭による通告のほか、匿名の通告もある。
 通告者が個人の場合には、「虐待でなかったらどうしよう」と通告することを躊躇する気持ちや、「恨まれたり、責任を問われるのではないか」と通告後の事態への危惧感から不安な心理状態で通告してくることが多い。一方で、児童相談所や市町村が、すぐに虐待をやめさせて問題を解決してくれると期待して、通告してくる場合もある。
 いずれの場合であっても、不安や不信感を相手に与えない対応によって、通告・相談の内容を聴取し、確認しなければならない。

(1) 通告の対象となる子ども
 子ども虐待の早期発見を図るためには、広く通告が行われることが望ましい。しかし、従来の児童虐待防止法では、通告の対象は「児童虐待を受けた児童」とされており、基本的には、子どもが虐待を受けているところを通告者が目の前で見た、あるいは子どもの体に虐待によるあざや傷があるのを見たといった児童虐待が行われていることが明白な場合が想定されていた。
 このため平成16年児童虐待防止法改正法により、通告の対象が「児童虐待を受けた児童」から「児童虐待を受けたと思われる児童」に拡大された。これにより虐待の事実が必ずしも明らかでなくても、子どもの福祉に関わる専門家の知見によって児童虐待が疑われる場合はもちろんのこと、一般の人の目から見れば主観的に児童虐待があったと思うであろうという場合であれば、通告義務が生じることとなり、児童虐待の防止に資することが期待される。
 なお、こうした通告については、児童虐待防止法の趣旨に基づくものであれば、それが結果として誤りであったとしても、そのことによって刑事上、民事上の責任を問われることは基本的には想定されないものと考えられる。

子ども虐待対応の手引き

つまり、厚労省としては平成16年(2004年)には児童虐待防止法の改正をして、通告の対象が「児童虐待を受けた児童」から「児童虐待を受けたと思われる児童」に拡大し、一般の人の目から見れば主観的に児童虐待があったと思うであろうという場合であれば、通告義務が生じることとなり、児童虐待の防止に資することを期待していたと。

では、実際に当時の業界ではどうであったのか?X(旧ツイッター)にはこうした発言が出てきています。

https://x.com/maki1202020/status/1700580417412432320?s=20

https://x.com/Yuki_Mats/status/1700781619806920948?s=20

怖いからという保身で通報をしなかったと?

れいわ新選組代表の山本太郎氏は芸能界の中では当たり前の話として取り扱われてきました。と、発言しています。

上沼恵美子氏、山本太郎氏が知っていたという話が噂の範疇なのか、実際に被害にあっていた人物から聞いた話なのかはわかりません。時期も相当前のものなのか、現在被害当事者といわれる人達の話してる時期のものなのかもわかりません。

しかし、このジャニー氏による性加害について文春が報じたのは1999年。当事者の一人が自身が中学生の頃に受けた時が1998年と証言しています。

そして、その前年に当時の厚生省児童家庭局長通知「平成9年(1997年)6月20日児発434号」にて「児童虐待等に関する児童福祉法の適切な運用について」が各都道府県知事、指定都市市長あてに出されています。

これによると「近年、児童や家庭を取り巻く環境の変化等に伴い、児童相談所への虐待相談件数が急増するなど児童虐待が指摘されている。言うまでもなく、児童虐待は人格形成期にある児童の心身に重大な影響を与えるものであって、児童福祉の観点から看過しがたいものであり、迅速かつ適切な手続きによる積極的な対応が求められているところである。」とあります。当時、既に児童虐待は社会問題化していたという事が明らかであり、厚生省は平成(1989年)に入ってから「児童虐待」キャンペーンをメディアを通じて効果的に張っていた事実があります。そしてこの通知から2年後、この434号通知をプロトタイプとし、児童虐待防止法が施行されます。

通知の中には要保護児童発見者の通告義務(法第二五条関係)について、

法第二五条に規定する通告義務は、法第一条に定める児童の健全育成に係る国民の責任に鑑み、保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認める児童の通告義務を全ての国民に負わせることにより、保護を要する児童の速やかな発見とその保護に万全を期することを目的とするものである。したがって、通告義務は広く国民一般に課された義務であるとともに、特に児童福祉に関係の深い職にある者などについてはその履行が強く要請されるものである。以上を踏まえ、国民に広く法第二五条の趣旨を周知するとともに、次に掲げる者など職務上、虐待等を受けている児童を発見しやすい立場にある者に対し、一層の注意を喚起するよう、広報・啓発活動の充実に努められたい。

厚生省児童家庭局長通知「平成9年(1997年)6月20日児発434号」

勿論、こうした通報義務を全ての国民が関心を持って理解していたとは思わないですが、少なくとも当時のこうした状況を踏まえるとメディア関係者は文春記事を見て、自分達が聞いてきた噂が本当ではないのか?と危機感を持っても良かったのではと思います。
それに当時、ジャニーズに入ったきっかけで本人達がよく言っていたのは「お母さんが応募して。」「お姉ちゃんが・・・」「近所のおばさんが・・」というものが多かったと思います。10代の年端もいかない少年達が親や兄弟、姉妹に被害について誰も何も言わなかったのでしょうか。そしてその親から警察や児相に通報も一件もなかったのでしょうか?

当時の厚生省は児童虐待を喫緊の課題として児童虐待防止法制定に強く動いていた時期でありながら、ジャニー喜多川氏による性加害の疑いに目を向けなかった事、当時の児相に一件も通報事案が無かったとしたら、一体どういう事が起きていたのでしょうか?噂はどこまで本当の事であったのでしょう。

ジャニーズ問題から児童虐待防止法と成り立ちの歴史を振り返ってみました。既に加害者とされるジャニー氏は故人であり、文春との民事訴訟は文春側の敗訴で終わっています。民事で有罪という人が少なからずいますが、民事訴訟は犯罪を認定する場ではありません。認定という言葉に騙される事なく、裁判の判決文は読むべきです。現在に至るまで、刑事訴追は一件もされてません。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?