見出し画像

Dear Grower #014 エンリケ・カンブライア(ブラジル)


「ケンタローにメールで報告して!」2015年のカップ・オブ・エクセレンスでサマンバイア農園が14年振りの入賞を果たしたとき、カンブライアさんは日本人の審査員にそう言ったそうだ。カンブライアさんは、丸山珈琲が最も長くお付き合いをしている農園主。また、サマンバイア農園は、丸山珈琲が年間で最も多くの豆を仕入れている農園のひとつだ。入賞したこと自体ももちろんだが、そのことをいち早く知らせたいという彼の気持ちがとてもうれしかった。カンブライアさんとの出会いは17年前、2001年までさかのぼる。場所はブラジルのスペシャルティコーヒー協会がマイアミで行った船上パーティだった。丸山珈琲がスペシャルティコーヒーの世界に本格的に飛び込もうとしていた時期、業界の一流たちが集うパーティで何かをつかもうと意気込んでいた。このときカンブライアさんとはあいさつ程度のコンタクトだったが、約半年後に行われたブラジルのカップ・オブ・エクセレンスでサマンバイア農園が入賞し、その豆を丸山珈琲が落札したことから、いまに続く関係がスタートすることになった。

サマンバイア農園を初めて訪問したのは、翌年の2002年。農園の広大さに驚いたのをよく覚えている。他国では10ヘクタールにも満たない小規模な農園もある中で、サマンバイア農園は600ヘクタール。東京ドームに換算すると約128個分というスケールだ。ブラジルのコーヒー農園は大きい。そのことはもちろん知識としては知っていたが、ブラジル自体が初訪問だったためインパクトは大きかった。驚いたのは農園の広さだけではない。ファームハウスがそれはそれは立派で美しいのだ。サマンバイア農園の歴史は100年以上。リノベーションされているので綺麗なのだが、その歴史を物語るような風格と気品のある佇まいに魅了された。

カンブライアさんは早くにお父さんを亡くし、20代で農園を継いでいた。自分も当時はまだ30代。お互いにまだ若かったこともあって、当初から馬が合った。常に長期的なものの見方をする彼と、コーヒービジネスの行く末について話すのは、昔もいまもとても刺激的で楽しい。そんな彼と、広大な農園のまんなかにポツンと建っている小屋に泊まったことがある。まわりにはコーヒー畑しかない、本当に音ひとつない静かで美しい夜だった。ぐっすりという言葉では足りないくらい、よく眠れた。「この小屋こそ五つ星ホテルだね」と冗談を言い合ったのも、懐かしく愛おしい思い出だ。カンブライアさんとのお付き合いを振り返ると、そこにはまだ若かった自分がいる。スペシャルティコーヒーの世界は、あのころと比べてずいぶんと広がった。これからコーヒーはどこへ行くのか。またカンブライアさんと語り合いたいものだ。もちろん、あの五つ星ホテルで。


国名 ブラジル連邦共和国
地域 ミナス・ジェライス州 スル・デ・ミナス地域 サント・アントニオ・ド・アンパーロ町
生産者 エンリケ・ジアス・カンブライア
標高 1,950 ‒ 1,200 m
農園面積 1,600 ha
品種 イエローブルボン、カチグア、ムンドノーボ、イエローカトゥカイ、サビア、トパジオ
収穫時期 6月~8月
お取引開始年 2001年

引用:Beans Menu 2018.5より



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?