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ブロックチェーンによるサプライチェーン変革の未来

CollaboGate in Tokyoでは、各産業課題に対してブロックチェーン技術の可能性をオープンに議論する場を創っています。今回のオープンセッションでは、食のサプライチェーンが抱える課題とブロックチェーンによる変革の未来について議論しました。

セッション内容

まず初めに、キリン研究開発推進部長の石倉さんから『食のサプライチェーンのリアル』として全体感と事例を交えた産業課題の共有が行われました。

原産地からリサイクルまで含めたバリューチェーンの全体構造を共有後、Global Procurement(グローバル調達)・Quality Assurance(品質保証)・Traceablity(追跡可能性)三つのキーワードを軸に食のサプライチェーンの課題について整理していただきました。

氷結 ハロウィンオレンジの事例はとても印象的でした。ストレート果汁(濃縮還元しない100%果汁)を使用していることを売りにしている氷結ブランド。購入した原料をKIRIN内部で再検査したところ、原料に加水されていることを確認し発売中止した事例です。

本事例に限らず、川上にあたる販売元が悪意をもって虚偽の報告をする場合・検査プロセス自体に誤りがある場合・検査基準の共有がされていない場合など、不良の原因特定には様々な要因が織り混ざっていることを確認できると思います。

次に石倉さんから提示されたキーワードを軸にパネルセッションを行いました。

・Global Procurement (グローバル調達)
・Quality Assurance(品質保証)
・Traceability(追跡可能性)

キリン調達部長の原田さん、キリン品質保証部の津田さん、森永の新領域創造事業部の渡辺さんをスピーカーに交え、それぞれの経験と視点で産業課題とブロックチェーンへの期待についてパネルセッションしていただきました(モデレーター:LeapsIn, Inc. CEO 日置)。

印象的だったトピックを整理します。

・Global Procurement(グローバル調達):数千のステークホルダーに対して品質管理をトップダウンに行うことは難しい。悪意を持って虚偽の報告をした場合にこれを精査する方法がない。調達先が分散化するデメリットとして輸入ミネラルウォーターの事例。人体に影響はないが悪臭を発生する菌が混入していた。原産地では認識・問題視されないが、日本の消費者はとても敏感で問題になる。こういったカルチャーのギャップも問題になる。

・Reexamination (再検査):全ての原料や製品に対して、様々な角度で再検査を行うことは現実的に不可能。再検査を行う判断の元になる原料や販売元の品質検査のデータを効率的に活かせないか?毎回異なるエンティティが再検査することなく、品質管理を行うためにはどうすればいいのか?

・原産地証明:原産地証明を行うには社内の複数の部門、複数の商社を経由することが多く、一般的に時間がかかる。もしブロックチェーンで常に原産地証明が取れている状態であればより効率的に商品開発ができるのでは?

・ReCall(リコール):例えば、製造ラインで劣化した油の使用を発見し、その製造ライン経由の製品を回収したいケース。製造ラインとディストリビューション管理は連動していないので、商品がどこに配布されているのかを厳密にトレースすることができない。これは回収コストに加えて、迅速さを失っている。

次にOSA DCによるブロックチェーンを活用したサプライチェーンマネジメントシステムの紹介と、本産業が取り組むべき課題について説明がありました。

OSA DCは、ブロックチェーンとAIを活用したサプライチェーンマネジメントサービスを提供するスタートアップです。OSA DCの戦略リードを担当するMaximilianさんから、OSA DCのソリューションと、最終消費者を含めた新しいサプライチェーンの構築の可能性をプレゼンテーションしていただきました。MaximilianさんはEfficient Consumer Response (ECR) Russiaというサプライチェーンに関するコンソーシアムのExecutive Directorを兼任しています。

最後にキリン 石倉さん、森永製菓 渡辺さん、OSADCのMaximilianさんを交えて、ブロックチェーン技術の産業実装について、参加者のみなさんの質問をもとに議論を行いました(モデレーター:CollaboGate 三井)。

印象的だったトピックを整理します。

・秘匿性:調達先や販売データなど競合に公開できないデータがあり、心理的な不安がある。KIRINさん単体で数千のステークホルダーがいることを考えると、ソリューション側には拡張性と秘匿性を設計できる柔軟さが同時に求められます。

・実装プロセスとコスト:新しいマネジメントツールを導入する際は、メーカーとしての視点に加えて、各チャネルでのステークホルダー視点も考慮しながら進めないといけない。各社のメリットや運用方法について十分に検証していく必要があると思います。

・情報選択と取得方法:どういった情報を、どのように取得し、どのようにブロックチェーンに書き込むのかについて、課題に照らし合わせて考えていかないといけないですね。

・周辺技術との関係:IoTデバイスやRFIDやQRコードなどのデータの出入力IFとブロックチェーンはレイヤーを区別して考えるとよさそうですね。入力される情報の信頼性にはトークンの活用などが期待されます。

『食のサプライチェーンの〇〇という問題を解決するには?』まで課題を具体的に落とし込むと、実装の議論が進んでいく印象を持ちました。原産地証明をスムーズにする、原料の再検査のコストを下げるなど etc...

共催していただいたLeapsIn, In. CEO 日置様、素敵な会場を提供していただいた森永ヴィレッジ様、ケータリングを提供していただいた株式会社SEE THE SUN様、ドリンクを提供していただいたキリン様、ロシアから駆けつけてくれたOSA DCの皆様ありがとうございました。

CollaboGate in Tokyoでは今後も産業課題に対してブロックチェーンのもたらす可能性をみなさんと一緒に議論していきたいと考えています。ご興味のある方はMEETUPもしくはFBページにご登録宜しくお願い致します。


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