Roopt神楽坂DAOの運営手法は不動産投資として再現性があるのか
Roopt神楽坂DAOによって運営されているシェアハウスが、2022年9月のオープンから1年以上経過し、想定以上の売上をあげています。
Roopt神楽坂DAOの支援している株式会社ガイアックスは、Roopt神楽坂DAOの1年間の運用結果を公表しました。
その結果は
家賃収入などの売上は想定の1.7倍
利益率は37%
でした。
Roopt神楽坂DAOによって運営されているシェアハウスは、空き家からリノベーションした木造の一軒家で、DAO導入前は赤字物件だったようです。
このような発表を聞くと、不動産投資で利益が出せていない投資家達は
自分の所有している物件もDAO化すれば利益をあげられるかもしれない
とDAO化を考えているかもしれません。
しかし
DAO化したら赤字の不動産投資が黒字化するかというと、そんな簡単な話ではありません。
DAOを成功させるには
DAOの理解
ブロックチェーンの理解
組織設計
が重要になります。
また、Roopt神楽坂DAOの運営方法が、他の物件でもうまく機能するとも限りません。
なので、この記事では
DAOとは
Roopt神楽坂DAOの仕組み
通常の運営とDAOによる運営の比較
再現性
について記載します
DAOとは
DAOは
Decentralized Autonomous Organizationの略で、ブロックチェーンを用いた自律分散型組織のことです。
DAOは、ビジネスやチャリティーなど、共通の目標を追求するための組織として運用されることが多いです。
DAOを初めて定義したのは、イーサリアムの創設者であるVitalik Buterin(ヴィタリック・ブテリン)で、2014年に発表した論文に登場しました。
DAOは、スマートコントラクトによって決められたルールに従って、ブロックチェーン上で完全に自律的に動作します。
スマートコントラクトとは、契約で定義された前提条件が満たされた場合に、暗号通貨ネットワーク上で取引やイベントを実行するソフトウェアのプログラムです。
このスマートコントラクトがDAOの構成要素となり、多くの役割を果たします。
組織が既存の中央集権的な組織ではなく、DAOを始める理由は色々ありますが、主な理由としては、オンラインコミュニティがガバナンスの問題を解決するためにDAOを採用していることが多いです。
DAOで組織を作るメリットは
世界中の誰でも参加することができる
すべての決定は、コミュニティによって決定される
DAOとのすべての取引は公開される
ことです。
また
DAOを導入したからといって素晴らしい組織になるわけではない
ということも理解しておいてください。
DAOを成功させるためのポイントは、強い目的とコミュニティ
です。
DAOはあくまで自己組織化のためのツールに過ぎません。
DAOで最も求められるのは、組織コミュニケーションや組織運用を抽象化して仕組み化する能力です。
端的にいうと、組織の設計力と運用力です。
では、Roopt神楽坂DAOはどのように組織を設計、運用しているのでしょうか。次はそれを見ていきましょう。
Roopt神楽坂DAOの仕組み
DAOでの組織運用を考える場合は、まず最初に
トークンに持たせる機能
発行するトークンの種類
の設計をする必要があります
Roopt神楽坂DAOでは、「NFT」と「報酬トークン」の二種類を発行しています。
具体的には
シェアハウスを利用する居住者が購入するNFT
居住者が運営に貢献した場合に報酬として得られるトークン
の二種類です。
最初に、Roopt神楽坂DAOのNFTの仕組みを見てみましょう。
240個のNFTをあらかじめ発行
NFTの価格は1個につき30,000円
1トークン(NFT)を購入すると1カ月の賃貸居住か、7泊8日の宿泊滞在のいずれかの権利を得られる
NFTの購入者はDiscordに招待され、物件の管理や運営についての議論に参加する
保有するNFTの数に合わせて、管理や運営の議決権を持つ
上記の仕組みを見ると
DAOの基本に忠実な設計となっていることがわかります。
次に報酬トークンの仕組みを確認します。
家の掃除や内覧対応などの運営業務をした場合に貢献者に発行する
例えば内覧対応をした場合は報酬トークンを4トークン(現金で1000円相当)渡す
報酬トークンは3万円相当貯まると家賃に充当できる
報酬トークンの価格は、Discordによる議論を通して決められています。
報酬トークンが重要なのは、報酬トークンという明確なインセンティブで運営業務を評価することによって、シェアハウス運営の貢献を居住者の善意で終わらせず、組織に持続可能性をもたらすことができるからです。
このようにトークンを発行して貢献者にインセンティブを与えることも、DAOの基本的な運用手法になります。
このようにRoopt神楽坂DAOの仕組みを細かく紐解いていくと
Roopt神楽坂DAOはDAOの基本に忠実な設計で運営されている
ということが言えます
既存の運営とDAOの運営の違い
上記のRoopt神楽坂DAOの仕組みで説明したことからわかるように
不動産運営におけるDAOでは、居住者にインセンティブを与えることで居住者に自発的に運営に参加してもらう
ことが重要になります。
この点が既存の不動産運営と異なります。
Roopt神楽坂DAOでは、計205時間分のシェアハウス運営の仕事を、DAOメンバーが自発的に担ったと発表されています。
不動産投資をしている人には当たり前の常識ですが
不動産投資では物件維持管理のランニングコストが結構かかります。
多くの不動産投資家は、自分の物件を管理してもらうチームを構築し、管理を自動化しています。
不動産投資でDAOを運営することは、物件管理の一部タスクを居住者に担ってもらう仕組みを構築する
ということになります。
こういうことを言うと
「そんなことできるわけがない」
と思う不動産投資家がほとんどでしょうが、Roopt神楽坂DAOではこれを実現しています。
Roopt神楽坂DAOでは、DAOという形態を取ることで、スタッフを雇う管理コストが低減し、維持管理費は半分ほどになったそうです。
このように不動産投資のDAOでは、居住者にインセンティブを与えることで運営管理費を削減し、インセンティブを貰える居住者と不動産投資家にwinwinな環境を作り出す仕組みが重要になります。
再現性
では、Roopt神楽坂DAOのようなDAOを使った不動産運営に再現性はあるのでしょうか。
結論から言うと
再現性はあるがハードルは高い
となります。
とりわけ難易度が高いのは
不動産投資の知識とweb3の両方の知識が必要
居住者にも最低限のDAOの知識が求められる
ことです。
ここまでRoopt神楽坂DAOの説明をしてきましたが
「不動産投資はわかるけど、NFTやトークンやDAOはよくわからない」
「NFTやDAOは分かるけど、不動産投資をしたことがないからイメージが湧かない」
という人も多いのではないでしょうか。
これは当たり前のことで
世の中のほとんどの人は、不動産投資の知識とweb3の知識の両方なんて持ち合わせていません。
また、不動産投資をDAOで運営するには、物件の居住者にも
web3の知識
インセンティブを貰うことで運営に参加する行動力と心構え
という素養が求められます。
このことは、居住者の選択の幅を狭めます。
現代ではインターネットを利用することが当たり前の世の中になってきてはいますが、今もインターネットを使うことができない人はそれなりにいます。
このことから
DAOの運営が可能な要素を満たした物件を扱う
という要件を満たすことは、かなりハードルの高いことだと言わざるをえないでしょう。
まとめ
今回は
Roopt神楽坂DAOの運営手法は不動産投資として再現性があるのか
について記載しました。
まとめると
DAOで不動産投資の運営管理費の削減ができる
不動産投資と居住者の両方にweb3の知識が求められる
Roopt神楽坂DAOの運営手法を真似できる物件は、現状ではほとんどない
ということです。
今回の結論では、「Roopt神楽坂DAOの運営手法は、再現性はあるがハードルが高い」という結果になりましたが、もっと世の中が進化して、web3が当たり前になってくれば、Roopt神楽坂DAOのような不動産管理手法も増えてくるはずです。
web3に限らず、生成AIなどの最新テクノロジーは
とにかく色々試行してみる
ことが重要です。
DAOは、まだ時代が追いついていない新しい管理手法ですが、20年後には当たり前になっている可能性もあります。
少しずつ学習し自分の血肉にしていくことで、きっとあなたの未来に役に立つはずです。
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