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「経営に役立つ知財」を目指したい


はじめに

こんにちは、商標登録サービス Toreru の宮崎です。
今日は、知財サービスを行う上で、自分が感じている「経営に役立つ知財を目指したい」についてお話しします。

知財は何のためにあるのか?

知財は何のためにあるのでしょうか?(ここでいう知財は、いわゆる「知財権」を指したいと思います。)
教科書的には、例えば特許の場合は、取得すると技術を独占できて、事業を有利に進められる。商標の場合は、商標権を取得するとそのネーミングやロゴを独占できて模倣がされないようになる。
といった感じでしょうか。

しかし、本当にそうなのか疑問なのです。
特許も商標もその権利を取得することで、その権利範囲は独占することができますが、事業上それが意味があるかはまた別の問題です。

知財は、その効果検証が難しいからこそ、何となくみんな教科書的な合意で進んでいっているように感じます。
そうすると、権利を取ること自体が目的になって、「あれ、これ何のために権利を取るんだっけ?」となりやすいです。

僕は、知財は「経営に役に立つ」ためにあると考えています。
経営に役に立つとは、自社の強みが強化されたり、自社のやりたいことがスムーズにできることによって、売上が上がったり、経費が削減されたりすることです。
そのため、極端な言い方をすると、知財の目的は、独占することでも、広い範囲の権利を取ることではないとも言えます。

どうすれば経営に役立つ知財になるのか

では、どうすれば知財が経営に役立ったといえるのでしょうか。
先ほども書いたように、知財は効果検証が実質できないので、直接数値による証明はやはり難しいかなと思います。

経営に役立つ知財を実践する上で、個人的に考えているのは3つのパターンです。

  • 経営のストーリーに沿った知財

  • 独自性アピールとしての知財

  • 人材教育としての知財

まだ仮説段階ですが、これらを実践すれば経営に役立ったといえると思います。

1. 経営のストーリーに沿った知財

まず1つ目のパターンは、知財は効果検証できないからこそ、経営のストーリに沿うことが重要だという考えです。
これには、下記の3点を抑えることが必要です。

  • 経営目標を知る

  • 組織の強み、弱み、競争環境を知る

  • そこから差別化要素を抽出する

例えば、なぜ、特許を取得するのか?の答えが「新しい発明ができたから」ではなく、経営目標から権利取得までが一本の筋で通っているストーリーがあることが理由となるという考えです。
下記は、一例です。

  1. 経営目標:まず、経営の目標は〇〇(たとえば、業界でトップ5に入ること)です。

  2. 強みを活かす:現在、自社は△△(たとえば、高速配送)に強みがあります。

  3. 差別化:その強みを使って、他社との違いを出すために□□(たとえば、エコフレンドリーな梱包)を導入します。

  4. 参入障壁:しかし、この市場には既に○○(たとえば、多数の競合)がいるため、参入障壁として☆☆(たとえば、高い品質基準)が必要です。

  5. 特許取得:それだけでは足りないので、最終的には□□の特許を取得して、差別化を図ります。

全ての出願でここまで言語化するのは中々難しいと思いますが、理想的には目指していきたい姿です。

1-1. 経営のストーリーに沿った知財では何が変わるのか

従来の知財では「どうやって権利を取得するか?」が大きな関心ごとでした。特許の明細書をどう書くか、商標をどう登録するかといった手続き的な要素が主役でした。しかし、経営のストーリーに沿った知財戦略を採用すると、この視点が大きく変わります。

この新しいアプローチでは、「何を権利化するのか?」が中心になります。これは企業全体の戦略に密接にリンクしており、知財の担当者が自ら率先して何を権利化すべきかを発見できるように動きます。

最大のメリットは、企業全体の戦略をしっかりと理解するための情報共有が進むことです。企業の各部署は、この新しいアプローチによって経営層や他の部門と更に密接に連携できるようになります。情報共有が進むことで、特許事務所の弁理士や知財担当者の位置付けは「手続きのエキスパート」から、「戦略的なパートナー」になると思います。
このように、経営のストーリーに沿った知財を採用することで、企業全体が一体となって知財に取り組む文化が育まれます。それが、結果として企業の競争力を高めることができます。

2.独自性アピールとしての知財

2つ目のパターンは独自性アピールとしての知財です。

この特徴は、特許権や商標権を取得することで誰かに独自性があることをアピールすることが目的です。
例えば、アピールする人は下記の関係者が考えられます。

  • 銀行

  • 補助金の事務局

  • 投資家

  • 一般ユーザー

自社の技術力を客観的に証明するものとして特許は有効です。
例えば、ラグジュアリーカードはリスティング広告に「77の特許」と自社の技術力をアピールしています。コモディティ化しやすい業界では特に有効です。

引用:Luxury Card 広告(https://www.luxurycard.co.jp/)

ここで重要なものは、権利範囲ではなく、知財をきちんとアピールすることです。
このアピール方法として、今後、特許では権利範囲ではなく「発明の名称」が最も大事になってくると予想しています。発明の名称でキャッチーな名称を考えられることで、何倍にもアピールの効果を発揮することができるからです。

人材教育としての知財

最後に、人材教育としての知財の可能性をご紹介します。
これは、特許出願や商標出願の際に、自社の技術やブランドを見直す機会になることを利用します。
特許であれば自社の技術を棚卸しするので、さらに良い技術に発展できないか、また競合他社の技術を調べることによって差別化を強化することはできないかなどを考えます。
意図的に教育の機会とすることで、技術者のレベルアップが図れるのではないかと考えています。

商標であれば、自社のブランド要素をもう一度洗い出し、必要なキャッチコピー、ロゴ、ネーミングは網羅されているかを確認することができます。ブランド要素の最適化を図る良い機会になると思います。

最後に

この記事では、経営に役立つ知財を実践する上で、個人的に考えている3つのパターンをご紹介しました。

  • 経営のストーリーに沿った知財

  • 独自性アピールとしての知財

  • 人材教育としての知財

まだまだ理想論ですが、知財の可能性をとても感じています!最後までお読みいただきありがとうございました!

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