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社会主義とサッカークラブ|リバプールの哲学を築いた"社会主義者"ビル・シャンクリーとは?

最近とても興味深い昔のサッカーの監督を見つけたので、その人物について以下紹介していきたいと思います。

僕なりに彼を紹介すると

昨季CLを制覇し、今季プレミアリーグで首位を独走するリバプールのクラブの哲学の潮流をおよそ50年前に形成した男

です。

ビル・シャンクリーの簡単な経歴

・スコットランド人監督(元サッカー選手)
・1913年に炭鉱が盛んな小さな田舎町で生まれる
・1932年から1949年まで選手としてプレー
・1959年から1974年までリバプールの監督
・「シャンクス」の愛称で知られ、「マージー・メシア」と称えられるリバプールの伝説的監督
(マージー:リバプールの本拠地, メシア:救世主)

「ビル・シャンクリー」の有名なエピソード

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上の写真は1971年のFAカップの決勝戦でアーセナルに破れ、リバプールへ凱旋したときのもの。

とても優勝ではなく準優勝したとは思えないビル・シャンクリーの振る舞いとファンの姿に注目して欲しい。

彼は準優勝の凱旋セレモニーにも関わらず集まった10万人を超えるレッズファンに迎えられ、このような演説をした。

「私がリバプール、アンフィールドに来てからというもの、何度もこのように選手に叩き込んできた。
『君たちはレッズファンのために戦うという名誉な特権を持っている』と。
私の言葉を信じていなかった選手も(この光景を見た)今は私の言葉を信じているだろう。」

演説の間は彼の言葉に耳を傾け静寂に包まれていたレッズファンの群衆も、演説が終わった瞬間に爆発し、シャンクリーの名前を歌い始めた。

(異様とも言えるこの光景は以下のYoutubeからご覧ください)
以下の写真は、1974年FAカップ決勝で優勝した試合の直後ピッチの上に侵入してきたファンがビル・シャンクリーの足元にひざまずいて彼の足にキスを捧げている写真。

まるで神様や教祖に祈りを捧げているような異常なこの光景。

これだけの熱狂と盲信を作り出すことのできるただのサッカークラブの監督が過去や現在、そして将来彼以外に存在し得るのだろうか?

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ビル・シャンクリーの家はレッズファンにとっての巡礼地のような存在となり、彼は訪ねてきたファンに対して最大限の敬意を持って接した。

サインの求めに応じるだけではなく、ファンを家に招いてお茶をしたりまでしたという。

さらにアウェイゲームへの遠征ではお金に困っているファンのために電車のチケットや試合のチケットのお金を払ったりなどした。

ファンから届いた手紙には直筆で返信を書き、何枚もの試合のチケットをファンにプレゼントした。「please」という単語が手紙の中に1010回も出てくるファンからの懇願に対してもチケットを添えて丁寧に返信した。

他にも彼のファンに対してのエピソードは尽きないほどある。
英国首相のハロルド・ウィルソンと仲が良かったことでも知られる。

ラジオでは2人で政治とサッカーについての議論し、シャンクリーは「私たちのサッカーは社会主義によって形成されていた」と述べている。
1974年FAカップ決勝でニューカッスルに勝利し、優勝したあとシャンクリー政権下で2度目の戴冠を果たしたリバプール一行を出迎えたのは、25万を超える群衆だった。

そこでの演説を2つ紹介する。

「あの毛沢東でさえ、こんな赤の強さは見たことがないだろう」

・「今日、私は以前よりもずっと誇らしく感じる。我々はあなたのために戦う。なぜなら、あなたが我々の戦う理由に値するから。(We played for you, because it’s you we play for.) そして、あなた方が我々の給料を支払っているからだ」

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下の写真はリバプールの試合で実際に掲げられたバナーです。

世界史を勉強したことある方なら分かると思いますが、赤旗に赤い星というのは思いっきり社会主義、共産主義のシンボルです。

さらに、その赤旗の上にはカール・マルクス、フリードリヒ・エンゲルス、レーニンなどの歴代社会主義者のレジェンドの顔が掲げられています。

ここで注目して欲しいのは、何とその歴代の社会主義レジェンドの隣に並んでいるのがリバプールの元監督で、ACミランとの劇的なCL決勝を制したことで名高いラファエル・ベニテスと皆さんご存知ユルゲン・クロップであることです。

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リバプールの試合でよく掲げられる「unity is strength(団結は力だ)」バナーには、現在の英国労働党党首ジェレミー・コービンのイメージが描かれている。

「ビル・シャンクリー」の有名な言葉

リバプールは私のためにあり、私はリバプールのためにある。(Liverpool was made for me and I was made for Liverpool.)
私は監督に就任してからこれまでファンがどれだけ重要な存在なのかを常に伝えてきた。
監督はどのようにファンを扱い、どのようにファンを自分の側につけるかを知らないといけない。
監督は自分自身をファンに重ね合わせない(identify)といけない。
なぜなら、クラブは彼らにとって本当に重要な存在であるから。
リバプールはただのサッカークラブではない。教会(institution)だ。
私の使命はファンをクラブという存在に近づけ、クラブの一部であると感じてもらうようにすることだ。
夫を亡くした妻は彼の遺骨をアンフィールドに撒き、事故で亡くなった子供はの遺骨はthe Kop(スタジアムの中でも熱狂的なファンが集まるゴール裏の席)に撒かれた。
ファンは生きている時だけリバプールと共にあるのではない。死んでからもだ。
私は社会主義を信じているが、その社会主義は政治観についてではない。
生き方、人道(humanity)の話だ。
私は、全員が全員のために動き、見返りを全員でシェアして享受することが唯一にして最高の生き方だと信じている。
これが私のサッカーと人生に対するアプローチである。
昨日我々はウェンブリーで試合に負けた。しかし、あなたたちファンは全てを勝ち取った。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

ビル・シャンクリーがいかに興味深い人物であるかを伝えることができていれば幸いです。

クロップ政権でのリバプールのサッカーが体現する「チームへの献身性」、熱狂的なファンが作り出す、荘厳な雰囲気さえ漂うホームスタジアム「アンフィールド」など、サッカーの哲学はクラブの歴史の中で培われてきたものなんだということを改めて実感しました。

試合前に必ず"You'll never walk alone(君は決して一人ではない)" が歌われ愛される理由も少し分かった気がします。

個人的に気になった点としてある

サッカークラブと政治(ファンやサッカークラブの存在する町の政治観や投票先などの社会学チックな感じのやつ)」
宗教としてのサッカークラブ(そもそも宗教の定義から...)」
サッカークラブの哲学(クラブが生まれた背景、クラブを応援する人たちのバックグラウンドや哲学など)」

などの点はまた詳しくnoteで書いていけたらいいなと思います。

最後までお読み頂きありがとうございました。

以下に少し付け足しや参考文献を載せておくので気になった方はご覧ください!

以下の参考文献に載っているビル・シャンクリーのインタビュー動画がめちゃくちゃ面白いので彼のことが気になった方はぜひ!

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その他ビル・シャンクリーのエピソードや名言

「監督としてサッカー選手をトレーニングすることはアートだ。もしそのアートを知らなかったら、うまくいかないだろう。そして、アートとはいつ何をやるべきか知っていることだ」
ビル・シャンクリーはスローインなどのセットプレーを工夫し、相手コーナーキックからのカウンターメソッドを考案したりなどしていた。
☝️
そのまま「クロップかよ!」と突っ込みたくなりますね笑
ビル・シャンクリーは試合前にファンの前で演説し、自分の口から自分の考えを伝えることを好んだという。

マッチプログラムに数行つらつらと何かメッセージやインタビューされた内容を書くのではなく、ファンの前で彼の選んだメンバー選定の理由や前の試合の感想などを実際に演説して語りかけた。

参考文献


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