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【感想】HBOドラマ『サクセッション』シーズン3

HBOの大人気ドラマ『Succession』
エミー賞やゴールデングローブ賞をはじめ賞レースでも連戦連勝。
物語はまだ完結していないが(シーズン4継続が決定済み)名実ともに傑作、そして歴史に刻まれる名作になることはほぼ既定路線である。

ところが、アメリカでの人気の割に日本での知名度はあまり高くない。
まぁ日本は欧米ドラマよりも韓国ドラマの人気が高いしそんなもんじゃない?というのは大前提として、本作に関しては

  1. 配信サービスがコロコロ変わった
    (スターチャンネル→Amazonプライム→U-NEXT)

  2. なぜかタイトルもコロコロ変わった
    (キング・オブ・メディア→サクセッション→メディア王 ~華麗なる一族~)

という特殊な事情も多少は影響しているのではないかと思う。
特にタイトルの件はもったいない。
『ウォッチメン』『ユーフォリア』『ラヴクラフトカントリー』『メア・オブ・イーストタウン』みたいなカタカナ表記も浸透してるわけだから最初から『サクセッション』で良かったよなぁ今となってはw


韓国ドラマは原題が韓国語なわけで英語タイトルをカタカナ表記にしても微妙なケースはあると思うが、原題が英語なら違和感も少ない。
そんなわけで僕は「サクセッション」という呼称・表記を使います。
ただし、現在本作を日本で独占配信中のU-NEXTでは「メディア王 〜華麗なる一族〜」というタイトルなので探す際はご注意をw

本作の舞台は世界的巨大メディア企業を経営するロイ一族。
父かつCEOのローガン・ロイの健康に不安要素が見つかった事をきっかけに彼の亡き後を見据えた後継者争いが始まる。
Succession=継承・相続をめぐる物語。

ストーリーは愛憎ドロドロなのだが、語り口は風刺コメディ&サスペンス。
誰が味方で誰が敵なのか?
誰が裏切り誰が切り捨てられるのか?
シーズン1から一貫して脚本が心底素晴らしい。
やはりドラマは脚本が命だ(映画はそうとも限らないけど)

ちなみにサムネ画像の構図が敵味方のネタバレなのでは?と思う人もいるかもしれないがキーアートは複数パターンある。
用意周到w

出典:https://www.unext.co.jp/ja/press-room/succession-s3-announcement-2022-01-25

この記事のサムネ画像と比べてみると違いが分かるはず。
てかU-NEXTの公式URLもsuccession表記なのかよw

富裕層の生態(?)を描いた作品と聞いて思い出されるのは映画『あのこは貴族』

各所で絶賛されている通りこちらも素晴らしい作品でしたね。

『あのこは貴族』のオープニング、帝国ホテルでの新年会シーン。
あの場での祖母の発言は世間知らずというか時代錯誤というか、あんなんで俺が一生かかっても辿り着けない優雅な暮らしをしてると思うとスクリーンに向かって中指を立てたくなったが、『サクセッション』の登場人物はほぼ全員があの100倍ぐらいヤバい人たちであるw
世界は広い。

とにかく下品で滑稽でシニカルw
当人たちは超真剣に会社を守り次期CEOの座を狙っているにも関わらず、あらゆる言動が笑えて仕方ないw
ストーリー的には

  • 役員会での不信任投票

  • 株主総会での委任状争奪戦

  • 企業買収の交渉

など『半沢直樹』と近いはずなのに爆笑できる喜劇。
プロデューサー(シーズン1初回は監督も兼任)にアダム・マッケイが名を連ねていると言えばテイストは伝わるだろうか?

『ドント・ルック・アップ』も最高だったなぁw
顔芸やギャグのような即物的な笑いではなく、シチュエーションや起きている事の中身で笑わせる、すなわち脚本で笑わせてくれる紛う事なき喜劇。
(あまりこういうこと言いたくないけど日本の作品だとここを勘違いしてるとしか思えないものも少なくないんですよね…)
シーズン2の第5話ではシェイクスピアの詩を引用して堂々たる風刺コメディ宣言。

さらに本作を唯一無二のものにしているのがドキュメンタリー風の撮影。
バシッとキマった構図や画面設計は乏しく、カットの途中で人物の顔に寄ったり逆に引いたりするカメラワークが多用される。
しかもカメラは手持ち風にグラグラ。
時にはピントが合ってないことすらあった。
これにより「重要な映像が撮れそうで慌ててカメラを向けたから撮りながら画角を調整している」というドキュメンタリー感が生まれる。
フィクションのはずのロイ家が実は現実に存在していて彼らの生活を覗き見ているような不思議な体験。
ま、我々庶民は庶民で下世話ということかw
ちなみに普通のドラマでこんな体たらくだったら撮影監督は即クビだろうw

だからこそ時折見られるキマってる撮影が印象に残る。
特に大自然のインサートやヘリ、バイク、自動車、船などでの移動カット(車中ではなく移動してる乗り物の空撮)
特に移動カットはどれもカッコいい。
夜のニューヨークを走る車を空から撮ると何であんなに映えるのか。

そういう意味では個人的に本作と近い位置にある作品って実は『ノマドランド』なのでは?という気がしている。
テーマ的にも映像的にも。

どちらもアメリカ資本主義の話でもあるし。

ドキュメンタリー的という意味では会話劇の撮り方と編集も。
シーズン2の晩餐会、公聴会、船上での議論。
シーズン3の株主総会。
多数の登場人物が一堂に会して喋る喋るw
あそこで台詞が被るのも厭わず複数人が同時に喋ってるのもドキュメンタリーっぽい。
ただし編集のテンポはかなり速いのでそこは逆にフィクションっぽい。
ドキュメンタリーとフィクションの狭間のような不思議な感覚。

シーズン3は衝撃的結末だったシーズン2最終回からシームレスに始まり、お家騒動が本格的に開幕もとい開戦。
真剣に戦えば戦うほど滑稽で笑えてくる極上のコメディ。
さらにシーズン1から最終決戦の場と位置付けられてきた株主総会も遂に開催。
会社を乗っ取られるのか守れるのか、誰が勝者になるのかのクライマックス…かと思いきや何とそこは全9話の折り返し地点である第5話で片付けてしまう。
最終回が株主総会だと思っていたので驚いた。
見事な全体構成。
鍵を握る投資家の役でエイドリアン・ブロディのゲスト出演もサプライズ。
日本ではウェス・アンダーソンの『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』と立て続けに。

第6話以降はGoJoというIT企業をめぐる新たなストーリーが開幕。
『呪術廻戦』然り日米どちらも"gojo"が席巻しているのか。
個人的には京都の五条周辺に好きな店が何軒かあるので、早く旅行が気兼ねなく出来るようになってほしいなぁと願ってます。
すみません、脱線が過ぎました。

オールドメディア巨大企業がIT企業と組んでストリーミングの新サービスの立ち上げ云々ってそれはAT&TとワーナーとHBO、そしてHBO Maxの話なのでは?w
買収された後にワーナーが辿った道を考えると…

シーズン4はどうなる!?

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